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世界に誇るクラシック草レース「八方リーゼン」がアツい!!

スキー場イベント

世界に誇るクラシックレースが、日本にもある。その名は「八方リーゼン」。白馬八方尾根の名物コースを独占し、一気に滑り降りることができるのは、選手だけの特権だ。さあ、すべてのスキーヤーよ、八方リーゼンをめざせ!

アルペンスキーの世界には、「クラシックレース」と呼ばれる特別な競技会がある。アールベルグ・カンダハー大会、ラウバーホルン大会、ハーネンカム大会、この3つが「三大クラシック」と称され、一目も二目も置かれているのは、ワールドカップに興味のある人ならおそらくご存じのはず。だが、この日本にもクラシックレースはある! しかも出られる! ウェンゲンやキッツビューエルのダウンヒルを滑るのは全人類のごく一部だが、誰でも出場できるクラシックレースが、日本にあるのだ。

その大会とは、白馬八方尾根リーゼンスラローム大会、通称八方リーゼン。白馬八方尾根を代表するリーゼンスラロームコースを舞台に、1947年の第1回以降、一度も中止されることなく開催され続けてきた。そして、来たる2026年2月月、記念すべき第80回大会を迎えようとしている。

八方リーゼンの何がすごいのかといえば、まずはこの歴史。そしてコースの長さだ。参考として三大クラシックレースと並べてみたが、いずれも遜色ない(下表参照)。しかもこちらはターン数の多いジャイアントスラロームであり、誰でも出場できる草レース こんな大会は世界中で唯一無二だろう。

世界に負けないコースで、誰でも出られるレースを

これほどのスケールの大会が、終戦からわずか1年半後に開催されたというのだから、驚くほかない。今に続く偉大な大会は、どのようにして創られたのか。大会公式ウェブサイトで歴史解説を読むことができるのに加え、白馬八方尾根の「白馬・山とスキーの総合資料館」内「福岡孝行記念室」に貴重な資料が集められている。

福岡孝行さんは、日本におけるスキー研究の第一人者。そして、八方リーゼンの生みの親だ。疎開先であった白馬村でリーゼンスラロームコースを切り開いてレースを行なうという構想を描き、戦後すぐに実行に移した。

資料館の丸山勝美さんによると、「世界に負けないコースを創る、という福岡先生の強い思いがありました。地権者を説得して木を伐採し、できあがったコースにリーゼンスラロームと命名したのも先生。そして、誰でも出られるレースにするというのも先生の考えでした」

当時はまだリフトもない時代。参加者は早朝からスキーをかついで山を登り、現在よりも標高の高かったスタート地点をめざした。そして全長4500mの大回転! 当時の選手の体力と精神力の、なんとすごいことか!「参加者は、多い年で2000人にもなりました。地元の宿の人たちもお客さんを応援して盛り上がって、お祭りのようになりましたね」

白馬村はもちろん、大町市や小谷村まで巻き込み、今でいう白馬バレー全体で守り続けている八方リーゼン。その歩みは白馬のスキーそのものであり、日本スキー史のど真ん中といっても過言ではない。

「本当のスキーを教えてもらった」

丸山貞治さん

八方リーゼンは、出場する選手と地元の人たちが一緒になって作り上げ、盛り上げ続けてきた大会。その双方を知る丸山貞治さんに話をうかがった。

男子6部で2連勝を飾るなど、八方リーゼンで華々しい成績を残してきた貞治さんだが、それ以前に八方で宿を営み、スキー学校にも勤務してきた。だからこそ八方リーゼンとの関係性は複雑で、とても深い。

「高校生の頃から出ています。そのあとスキー学校に入ってからは、ずっと裏方。いきなり庶務をやれと言われて、リーゼン大会の募集から何から全部やっていました。前走をやったりもしましたが、ちゃんと選手として出たのは、スキー学校を辞めて役員を引退した50代から。最初は怖くてしょうがなくて、風を受けやすいウエアを着て出ました。今はもう大丈夫。60代後半ぐらいからは、レース用のワンピースを着るようになりました」

長大なリーゼンスラロームコースを滑りきることの大変さ、難しさについて、貞治さんはこう語る。

「不思議なもので、自分がどれだけ疲れているか、滑っている間はわからないんですよね。ゴールした瞬間、脚に震えがくる。勝負どころはコース終盤の『ウスバの壁』。みんなヨレヨレになるところです。このリーゼン大会、リーゼンコースがスキーを教えてくれました。もうじき74歳になりますが、まだまだ出るつもりです。それだけの価値がある大会。だって、本当のスキーが味わえるんですから」

コース全景

「仲間と一緒に100回大会をめざす」

太谷敏也さんと福島のり子さん

2010年バンクーバー・オリンピックにスキークロス日本代表として出場を果たした福島のり子さんも、八方リーゼンに魅了されたスキーヤーの一人だ。

「小学校の頃に初めて見たとき、先輩たちが滑っているスピード感がものすごくて、自分は絶対に出たくなかったんです。その後も前走は務めましたが、まさかこんなおばさんになってから選手として出るとは思ってもいませんでしたね」

のり子さんは、白馬高校時代の仲間と数年前にチームを結成。当時のウエアを着て、八方リーゼンに出場するようになった。現在、女子2部で4連勝中だ。

一方、元ナショナルデモンストレーターで現在はジュニア指導などに携わる太谷敏也さんは、意外なことに出場経験がないという。「ジュニアで滑っている頃から出てみたいという気持ちはあったんですけれど、いつも前走になってしまって。選手として出られるのはいつだろうなと思っているうちに、スクールやコーチが仕事になって大会役員になり、今もまだタイミングが来ない(笑)。でもいつか、おじいちゃんになったら絶対に出たいと思っています」

年齢を重ねることで、八方リーゼンに出場する意味や価値がわかるようになった、というのが二人に共通する気持ちだ。だからこそ、この大会を大切にしていきたいという。

「リーゼンコースを独り占めして滑れるのが、最大のおすすめポイント。旗門の間で2ターンぐらいする人もいますし、かなり自由なのもいいですね。仲間と一緒に、とりあえず100回大会をめざして出続けたいと思います」(のり子)

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「みんなで受け継いできた歴史あるレース。これだけの長さのコースをセパレートして運営する大変さはありますが、続けていくことが八方にとっても日本のスキーにとっても大切だと感じています」(敏也)

八方リーゼンに関わる人たちに共通するのは、その熱量! 毎年この大会を目標に体力づくりをし、滑り込みをする選手。そんな参加者の情熱に応え、全力で大会を作り、支える地元八方の人たち。選手も裏方も、とにかく猛烈に熱い!

それでいて、気楽にマイペースで滑ってよいという、懐の深さも併せ持つ。どうですか、出てみたくなってきたでしょう!?

ただし、リーゼンスラロームコースは決して甘くないので、準備と覚悟はお忘れなく!

参加希望者は公式サイトをチェック!

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