アスリートの足元を支えるBMZの源流と未来
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2001年の創業以来、高機能インソールやシューズなどを通してさまざまなジャンルのアスリートの足元を支え続けているBMZ(ビーエムゼット)。群馬県・みなかみ町の新社屋を訪れ、日常生活でも「足の健康元気」を支える同社の源流と未来を探った。
ケガの功名から始まったスキーブーツチューン
BMZは2001年6月、現在も代表を務める髙橋毅によって創業され、2024年で創業23周年を迎える。高機能インソールのメーカーとしておなじみの同社だが、そのスタートは髙橋によるスキーブーツのチューニングだった。
「私が足に興味を持ったのは地元・群馬県の高校でサッカーをやっているころでした。日本リーグ(Jリーグ以前の日本サッカーの最高峰リーグ)を目指していましたが、高校3年時にケガが続いてその道を諦めざるを得ませんでした。進学もせずバイト生活を送っていた4年目、先輩がやっていたスポーツ店に勤めることになったんです。高校時代のケガも癒え、サンプルのスパイクをいろいろ履きながらサッカーを再開したところ、自分の足に合ったシューズを履くことがパフォーマンスにつながることがわかりました。それがいまにつながっていると思うと、まさにケガの功名ですね」(髙橋)
BMZの機能性インソールは様々なジャンルのアスリートをサポート
地域柄、店にはシーズンになるとスキー用品を買い求めにくる顧客も多かった。髙橋は並行してスキーパトロールをしていたこともあり、スキー板やブーツに加え、当時輸入されていたインソールを販売していた。「サッカーは好きだが勉強は苦手」という髙橋だったが、足のことを知らなければ顧客に対応できないという思いで、本を読んだりセミナーに通ったりして足の勉強をしたという。
「その過程の1995年、アメリカの展示会で出会ったのが、『アスレチック・スキーヤー』という本の著者であるウォレン・ウィズレルとデビッド・エヴラードでした。展示ブースにカンティングの機械があって『日本の若造よ、乗ってみろ』と言われるままにカント計測をしたところかなりのオーバーカント。つまりガニ股だったんです。『そんな足じゃスキーはうまくならない。カントを整えるプレートを作ってやるから、日本に帰ったらこれで滑ってみろ』と言われました」(髙橋)
帰国後、大会スタッフとして、重い荷物を持ちながら急斜面を横滑りしたところ、エッジが引っかかることなく滑り降りてこられたという。感動した髙橋は、彼らの理論を日本に広めようと著書を日本語訳して出版した。
「その本は導入の50ページを骨格のバランスに割いていました。スキー技術からではなく、骨格のバランスを整えないとスキーはうまくも速くも滑れないことから入って、そのためにはまずブーツをチューンしなさいという趣旨です。ここから私のブーツチューン人生が始まりました」(髙橋)
3Dスキャナーで足型を計測する技術選プレーヤーの佐藤栄一
安定性と運動性を両立した「立方骨バランス理論」の誕生
微妙な感覚を要するブーツ加工は、何十年たっても人の手で行なわれる
髙橋の脚・足への探求はそれで終わりではなかった。アスリートや顧客のブーツチューンを行ないながら、さまざまなセミナーに通い最善の理論を求め続けた。その過程で、足の土踏まずのアーチと外側にある立方骨とを支えるインソールを試作し、自らサッカーの試合でテスト。動きやすさを感じたものの、相手との接触もなしに転倒して膝の半月板を損傷してしまった。
「理由を探ったところ、アーチで吸収しきれなかった衝撃は、足首から膝、腰の順で下から上の関節に移動してしまうのです。入院中に、ケガを防ぐには支えて固定するだけではなく、逃げ場が必要になる。私のケガの原因は、内側も外側も固定しすぎて足がうまく動かせなかったからという考察を得ました。そこで立方骨を支えて安定性を持たせつつ、逃げ場を作って運動性を確保するという考えに至りました」(髙橋)
これが現在のBMZの高機能インソールの基となってる「立方骨(キュボイド)バランス理論」だ。この理論で2012年に国内特許を取得。2014年には立方骨に加えて踵骨前部を一括して支持する「CCLP(キュボイド・カルケニアス・レバレッジ・パワー)理論」で国内に加えアメリカ、EPC(ヨーロッパ)、中国、韓国で国際特許を取得している。
こうして生まれたBMZの高機能インソールは、さまざまなジャンルのスポーツで、実に多くのアスリートたちを足元から支えている。ここには書ききれないが、ウインタースポーツではスキーの小野塚彩那、原大智、スノーボードの竹内智香の五輪メダリストをはじめ三木つばき、技術選プレーヤーでは丸山貴雄、佐藤栄一などが使用。サッカー、野球、テニス、ゴルフ、陸上などなど、あらゆるジャンルのスポーツで、国内外のトップアスリートが愛用している。また、トップを目指す世代、スポーツ志向の人々からも多くの支持を集めている。
高橋氏のスキーブーツのチューニングからスタートしたBMZ
成長企業として新しいフェーズへ
最新式の機械が並ぶ
BMZでは、これまで培ってきたノウハウを基に、機能性インソール「アシトレ」シリーズを送り出している。これまでのBMZインソールがスポーツパフォーマンスをより高める目的だったのに対し、「アシトレ」は使用することで足指をより使えるように、さらにふくらはぎの筋肉をトレーニングする設計になっている。2019年に発表されると、健康志向の人々の間で火がつき大ヒット。現在はインソールに加え、シューズ、サンダル、ソックスがラインナップしている。
「結局はスキーブーツのチューニングから出発した職人なんでしょうね。私は売れるか売れないかでものを作っているわけではありません。良いもので売れれば会社は大きくなりますが、悪いものでもうけたらお客さんをだますことになるという考えなんです。BMZの企業としての事業は幅が広がりましたが、足の健康・元気から外れたものは、これからも一切やりません」(髙橋)
2024年の夏には、廃校になっていた中学校に事業所を移転してリノベーション。最新式の機械も積極的に導入してインソールやシューズ作りを行なっている。また、グラウンドや体育館などを含めた敷地全体を「フットパークみなかみ(仮称)」にする計画が進んでいる。
「足を計測したりインソールを作ったり、そのインソールをテストできるジムやグラウンドを整備しているところです。元は中学校ですから足の勉強もできるようにしたいと考えています。また、猿ヶ京のアトリエを旗艦店にして、将来的には都心などにもフットパークが展開できればと考えています」と髙橋が話すように、BMZは足の総合プロデュース企業へ進化する、新しいフェーズを迎えている。
廃中学校をリノベーションした新事業所は、みなかみ町の自然の中
スキーブーツチューンの継承者を育てたい
髙橋は一方で、「30年以上培ってきた、創業の源流のスキーブーツチューンの技術を、スキーが大好きな若者に伝えたい」と考えている。正社員として雇用したうえで冬の間はスキーに専念できる環境が用意されるという。安定した収入を得ながらスキーに関わる技術が身につけられ、自分のスキーに磨きもかけられるという、自分次第で一石を三鳥にも四鳥にもできる。
「スキー好きが条件というのは、チューンしたブーツのテスターも兼ねてほしいからです。私が伝えた技術でブーツをチューンし、それをテストして試行錯誤を繰り返して自分のスキーに役立てる。さらにはその技術でアスリートや顧客の人たちをサポートしていってほしいですね。みなかみは自然に囲まれていても不便は感じません。都心からも近く、関越道の月夜野ICへも15分ほど。沼田市から通っている社員もいます。気になった人は、ぜひ連絡してください」(髙橋)
成長著しい、数々の夢を持ったBMZと一緒に、スキーの将来、自分の夢を実現できるチャンスかもしれない。
足から健康を探求する体験型施設「フットパークみなかみ(仮称)」構想
トップアスリートがBMZを選ぶ理由
竹内智香(スノーボード・アルペン)
私がBMZのインソールを使い続ける理由は、変化するコンディションの中でも足に適応してくれるだけでなく、とてもシンプルな構造だからです。足裏は非常に繊細ですし、足裏だけでなく身体全体にかかる負担は最小限に、反対にパフォーマンスを最大限に引き出してくれるのがBMZです。
三木つばき(スノーボード・アルペン)
ギアを通して足裏で雪面を捉えるアルペン競技では、足裏を100%使うこと、感覚を研ぎ澄ますことがとても重要です。また、足指をしっかり使えることがレースの結果に大きく影響します。BMZのインソールは足指の機能を最大限発揮できる構造になっているので、私の競技活動には欠かせない存在です。
佐藤栄一(技術選プレーヤー)
20年ほど前にBMZのインソールと出合ったときから骨盤が立ってポジションが安定し、指が使えて足の機能が良くなると感じました。以来、インソールも含めてブーツのセッティングをお願いしています。素材を組み合わせたり、医療機関と連携するなどチャレンジングな企業ですし、科学的データと職人の感覚を良い形で融合しています。BMZは、もはや僕よりも僕の足のこと、身体のことを知っているので、全幅の信頼を寄せています。
成長と躍進を支える若手社員の声
本田智也さん(25)
スパイクやスニーカー集めが高じて自分でシューズを作りたいと思い、高校卒業後は靴の学校で4年間勉強しました。BMZはインソールのメーカーでしたが、これからシューズを始めると聞き、念願の靴作りに携われると思い入社しました。事業所も新しくなり、あらゆるジャンルのシューズの企画開発に幅を広げている段階で、会社と一緒に成長していけると感じています。
武田悠人さん(24)
サッカーの経験から足元の大切さは感じていて、スパイクやシューズ作りを通してアスリートのパフォーマンスや一般の方の健康を支えているという自負があります。トップアスリートとも現場サポートを通じて触れ合え、とても良い経験ができるのも魅力のひとつ。また、仕事上の疑問やアイデアなどコミュニケーションを取りやすい雰囲気で、働きやすさを感じています。
ケリー武蔵さん(23)
利根沼田を本拠地とする「ソルジェンテ群馬」というサッカークラブに所属しながらBMZで勤務しています。練習や試合などを考慮していただいた勤務体系のおかげで、サッカーと仕事を両立できて充実した日々を送っています。これもインソールやシューズを通してスポーツと関わるBMZならではだと思います。現在は県リーグ所属ですが、プロを目指してがんばります。
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