ダイナミックさを生む切りかえ
レッスン
ターン全体をとおして外脚に乗れている。カービングターンに必要なエッジングもある程度できている。それなのに、いまひとつダイナミックさに欠けている。もう少し動きを出してターンにメリハリをつけたい。一般上級レベルの人をレッスンしていると、そんな悩みをよく耳にします。では、どうすれば単調な滑りから脱却し、躍動感あふれる滑りに近づけるのでしょうか。
その答えは、ずばり切りかえの意識と運動を変えること。ターン後半から次のターン前半までの流れを改善すると、滑りにメリハリがついて、ターン全体がダイナミックになってきます。ワンランク上の滑りを手に入れるために、いま一度切りかえを見直してみましょう。
くの字姿勢でターンを仕上げ、エッジの解放と連動して重心移動。エッジングしてから荷重を強めていく。
滑りにダイナミックさを生む切りかえの第一のポイントは、ターンをしっかり仕上げることです。まだ山側のエッジが食い込んでいる状態で次の前半をつくろうとすると、重心が山側に残ってしまい、スキーと上体が離れてダイレクトにターンに入れません。滑りが単調に見える人の多くは、このパターンに陥っています。ターン後半はくの字姿勢をとり、しっかりターンを仕上げましょう。
ターンを仕上げて切りかえていくときは、エッジを切りかえる動きと連動して重心を移動させます。スキーの面が切りかわっていくのに合わせて重心も下に落ちていくイメージです。また、エッジを切りかえるときは、足元から返す意識を持つと、エッジが切りかわっていく感覚を得やすく、次の内脚のアウトエッジが使いやすくなります。
エッジが切りかわったら、まずエッジをかけて、そこから遠心力に合わせて外脚の荷重を強めていきます。エッジング→荷重という順番が肝です。
エッジを解放する動きと合わせて重心を落としていく動き、そして外脚荷重のタイミングが合うと、スキーの性能をフルに引き出せるようになり、滑りに躍動感が生まれてダイナミックになってきます。
解説=森田昂也
1997年1月22日生まれ。石川県小松市出身。大学までアルペン競技に打ち込み、高校3年時には国体少年クラスで準優勝。大学卒業後は会社員となり、レジャースキーを楽しむ。技術選プレーヤーの妻・優香に触発され、第59回技術選に初出場して男子総合27位。第60回大会ではスーパーファイナルの小回り・フリーでラップを奪い、男子総合16位に躍進。SAJデモンストレーター2期目。GALA湯沢スキースクール所属
切りかえ改善12ステップ
STEP.01 ターン仕上げのポジション確認
最初に、ターンを仕上げるのに必要なくの字姿勢を確認しましょう。斜面に対して横向きに立ち、外脚を持ち上げて谷側に開き出してドンと下ろします。そして、重心位置を変えないように内脚を引き寄せたら、足首と膝、股関節を曲げて少し内側に入れてくの字姿勢をとります。重心が山側に残ってしまうと、外脚に重さが乗らないためスキーの反発をもらうことができず、上体が外側に向きすぎてしまうと、エッジングが弱まってしまうので注意が必要です。また、膝を内側に入れてエッジングを強めると、外力を受けたときにケガのリスクが高まるので気をつけましょう。
STEP.02 ストックを身体の前で横に抱えて斜滑降
止まった状態でターン仕上げのポジションを確認できたら、そのポジションを維持して斜滑降を行なってみましょう。ターン後半のポジションを実際の滑走の中でキープする練習です。スキーのトップ方向にポジションをセットして滑り始めるとスキーが切れ上がっていくので、その動きに合わせてポジションをキープします。スキーが切れ上がっていくときに外向を強めてしまうと、スキーのテールがずれて横滑りに近づいてしまうので要注意。切れ上がるスキーの動きに合わせてポジションの維持に努めてください。
STEP.03 横滑り→エッジングの連続
エッジングで受ける反発を使って重心を落としていく感覚を養うバリエーションです。横滑り→エッジングを繰り返します。エッジングするときは、STEP.01のポジションをつくることを意識してください。そして、そこから反発を使ってエッジを切りかえ、その動きに合わせて重心を谷側へ移動させていきます。反発をうまく利用するには、スキーの面を斜面に対してフラットにすると解放されるイメージを持つといいでしょう。谷脚の膝を返す動きを意識すると、うまくいきます。重心だけを落とそうとすると、エッジを返す動きとタイミングが合いません。エッジを解放することによって重心も一緒に落ちていく感覚を磨いてください。
STEP.04 斜滑降でエッジング→解放の連続
STEP.01〜03で覚えたことを、斜滑降のなかで行なってみましょう。落下方向をターンに近づけることで、ターン後半のポジショニング、反発を使ってエッジを切りかえながら重心を移動させていく感覚を磨いていきます。ポイントは、実際のターンの切りかえをイメージしながら行なうこと。重心は斜面下方向ではなく、スキーの進行方向へ移動させましょう。
切りかえ改善12ステップ
STEP.05 ストックを身体の前で縦に持ってプルークの連続ターン
ここからはターン要素を加えていきます。ストックを身体の前で縦に持ち、プルークの連続ターンを行なってみましょう。連続ターンになるので、エッジングを解放しながら重心を移動させるときは、方向も意識してください。ターンの軌道をイメージして、1歩、2歩先の方向に重心を移動させていくイメージを持つといいでしょう。よくあるミスは、ターンを仕上げたあと、山側に重心を運んでしまうこと。そうなると、ターンをつなぐことはできてもメリハリの利いた動きにならないので、エッジを切りかえながらターン方向へ重心を移動させる方向を強く意識してください。
STEP.06 横滑り→エッジングを左右交互に連続
STEP.03を発展させたバリエーションです。横滑りからエッジングしたら、スキーのエッジを切りかえながら重心移動。これを左右交互に連続して行ないます。方向転換はあっても弧を描くターンにはならないので、重心移動は斜面下方向を意識しましょう。向きを変えるときは、谷脚の膝を返す動きがポイント。エッジを切りかえるイメージで膝を返すと、スムーズに方向を変えられます。
STEP.07 ストックを持ちかえてターンを連続
さらにターン要素を追加していきます。ストックを持ちかえてターンを連続させることで、重心の移動量を増やすことが目的です。ストックを持ちかえるときは、落ちていくストックをつかまえるイメージで。ただ持ちかえるだけでは、重心を大きく動かせません。エッジングを解放する足元も動きも意識できればベストですが、まずは上半身の動きを伴う大きな重心移動を体得しましょう。
STEP.08 外脚の滑走ラインを上げないように内脚をリフト
エッジングと重心移動、外脚荷重の3つのタイミングを合わせるためのバリエーション。シュテムターンのように滑走ラインを上げてしまうと重心が山側に残ってしまうので、ターンを仕上げたときに重心をダイレクトに谷側へ移動させていくことがポイントです。外脚の滑走ラインを上げないように注意してください。外脚一本でターンを仕上げたら、リフトしていた内脚のインエッジで雪面をとらえ、ダイレクトに次のターンに入りましょう。
切りかえ改善12ステップ
STEP.09 低速のカービングターン
これまで取り組んできたことを低速のパラレルターンのなかで実践していきます。重心移動を強く意識してしまうと、エッジの切りかえと外脚荷重のタイミングが合わなくなるので要注意。低速域の滑走に適した重心の移動量を意識してください。ワンランク上の滑りをめざすのであれば、滑走スピードに適した重心移動を身につけることが必要です。NGのように早く次の外脚に乗ろうとすると、ターンを仕上げられず、重心移動とエッジの切りかえがマッチしないため、結果として内脚荷重になってしまうので注意しましょう。
STEP.10 身体の前でストックを縦に持ってカービングターン
ここからは、滑走スピードを上げていきます。身体の前でストックを縦に持って、カービングターンをしてみましょう。スピードが高まるぶん、重心の移動量を大きくするのがポイントです。スキーの動きに遅れずついていく感覚を磨いてください。また、移動させる方向も意識しましょう。ターンのラインをイメージして、2〜3歩先へ動かしていくと、エッジがスムーズに切りかわり、ダイレクトに次のターンに入れるようになります。
STEP.11 ストックを身体の前で平行に抱えてカービングターン
ストックを身体の前で平行に抱えてカービングターンを行ないます。今度は足元の動きも意識し、くの字姿勢をとってターンを仕上げたら、エッジを切りかえる動きと連動して重心を積極的に移動させ、次の外脚に荷重。この流れの順番とタイミングを確認してください。エッジが切りかわっていないのに重心を移動させるのは厳禁。足元を返してエッジを切りかえる動きに集中して取り組んでみてください。
STEP.12 中速のカービングターン
これまで練習してきたことを総動員して、中速のカービングターンをしてみましょう。ターンを仕上げたら、スキーの反発を使ってエッジを解放しながら重心移動。次の外脚がかかったら、遠心力に合わせて荷重を強めていきます。エッジの切りかえ、重心移動、外脚荷重の3つのタイミングが合えば、中速域の滑走でもスキーが十分に仕事をしてくれて、滑りに躍動感が出てくるはずです。気持ちに余裕のあるスピードで、それぞれの動作をしっかりイメージして、ていねいに行ないましょう。