自在なコントロールを手に入れる足場のつくり方
レッスン
ターンは前半で決まる!目指すのは「次の外」
「ターン前半から圧をかけてスキーをたわませる」というと、何かすごく高度な話に聞こえるかもしれません。今回は、その難しいイメージを、根本から変えていきたい。やるべきことを一つひとつ分解していけば、「これなら簡単だね!」と、きっと感じてもらえると思うからです。
そもそも僕自身、あまりパワーを使って滑るタイプではなく、「楽に滑るにはどうしたらいいんだろう……」ということを常に考えてきました。それには、スキーにもともと備わっている性能を、できるだけ使えたほうがいい。身体に負荷をかけたり、筋力をたくさん使ったりすることなく、いかにスキーをたわませ、効率よくターンできるか──そこを追求していくと、結局は「前半から早く捉えてスキーに働きかける」ということに、行き着くのです。
後半だけで何かをしようとすると、どうしても反発が大きくなって、ミスも出やすくなります。でも前半から足場をつくってしっかり乗り込むことができれば、ターンの始めから終わりまで、常に外力を感じながら滑ることができる。コントロールできない時間がどんどん減って、滑りが安定し、ミスも減ってくるのです。
この「足場」を、より早くつくるためには、どうすればいいのか。そのカギとなる「切りかえの動き」について、詳しく解説していきましょう。
尾﨑隼士
おざきはやと●1995年8月24日生まれ、青森県弘前市出身。幼い頃からアルペンスキーに打ち込み、大学時代から基礎スキーの大会でも活躍。卒業後は働きながら技術選に挑戦し、3年目でナショナルデモンストレーターの認定を受けた。2024年の第61回大会では、これまでの総合22位という記録を大きく塗りかえ、男子総合4位へと躍進。現在はプロスキーヤーとして活躍し、レッスンにも精力的に取り組む。
足場づくりのカギは、切りかえでの重心移動
ターン中は、スキーヤーには常に外力がかかってきます。外に引っ張られる力に対してバランスを取っていくためには、外脚でしっかりと雪面を捉える必要がある。その「足場」を、より早くつくるためにカギとなるのが、ターンに入る前の、「切りかえの動作」です。外脚でターンを仕上げ、そこから切りかえで、次のターンの外脚へと重心を移動する。こうして次の外脚の足場がしっかりできたところから、ターンに入っていきます。この一連の動作を「正しい順序で行なう」ということが、ここでの最大のポイントです。
あえて「順序」を強調するのは、そこが曖昧になってしまうことが、足場をつくれない一番の要因になっていると感じるからです。まだ前のターンの外脚に重心が残ったまま、次のターンに入ろうとして、身体から倒すように内側に入ったり、スキーを無理に動かそうとしたり……。まだ足場ができていないうちにターンを始めてしまうことで、外スキーと身体が離れてしまう。これだと、「足場をつくる」という感覚はなかなかつかめないと思います。
ここで紹介している片脚ターンは、その「順序」を身体で覚えるのに有効なトレーニングです。僕自身がこれまでで一番、取り組んできた練習でもあります。緩い斜面を選んで、スピードは出さずに、あくまで低速で行なっていきましょう。一定のスピードで、正確にできるようになれば、かなりいい感触が出てくると思います!
足場をつくる低速トレーニング4選
正確な運動をつくり上げていくためには、低速でのトレーニングが有効。一見、大げさな動きのようにも見えても、そこに感覚をつかむための大事な要素が隠されています。4つのトレーニングで、滑りの土台をしっかり組み立てていきましょう。
EXERCISE_01 ストックを肩の後ろに
束ねたストックを肩の後ろに持ち、しっかりと外傾を取った状態から切りかえ動作を行なっていきます。外肩を下げた姿勢をキープすると、外脚にしっかりと圧がたまるので、その外脚で重心を持ち上げてポジションを戻す、という動作を意識しやすくなります。内肩が下がらないように注意しましょう。
EXERCISE_02 ストックを骨盤に
束ねたストックを骨盤に当て、しっかりと外傾を取った状態から切りかえ動作を行なっていきます。EXERCISE_01と目的は同じですが、支点が下がることで、脚の運動をより意識しやすくなります。乗ってきた外脚でニュートラルに戻したら、ストックを次の外脚側に傾け、重さをかけてからターンに入っていきましょう。
EXERCISE_03 シュテムターン
切りかえで外脚から外脚へ、重心を移動して足場をつくる動作を、シュテム動作を使って確認します。重要なのは、開き出した外スキーに重さをかけ、足場ができてからターンに入っていくこと。この順序を的確に行ない、外脚でしっかりとバランスが取れれば、内スキーの同調がスムーズになるでしょう。
EXERCISE_04 おさるさん
切りかえで重心移動を行ない、足場をつくってターンに入っていく動きを、全身を使って行ないます。あくまで足元からの運動が中心になりますが、この下半身の動きに上半身が連動することで、動作がよりスムーズになります。「足場ができたら、ターンに入る」という順序をしっかり意識して行なってください。