弥永奈々 ズレを操るカービングコントロール
レッスン

カービングターンのなかで、いかにズレを操ることができるか。これが、ターンの深さを生み出す、最大のカギになるという。第63回技術選で女子総合2連覇を達成した弥永奈々が、その「深さの理由」をつまびらかにする。
軸で捉えて沈み込む
女子選手のなかでも際立つ、弥永の深く速いターン。それはどのようにして生み出されるのか? ベースとなるターンの組み立てから整理していこう。

まず注目すべきは、谷回りでの“角づけの深さ”だ。切りかえで重心を大きく谷側へと移動させ、身体の軸をしっかりとターン内側へ入れていく。この内傾角こそ、ターンの深さを生み出す源となっている。
さらに注目は、そのあと。長い軸で雪面を捉えたところから、今度は雪面すれすれのところまで、重心を深く沈み込ませていく。このことで角づけをさらに強め、しっかりとスキーをたわませることによって、雪面をえぐるような深いカーブを描いてくるのだ。
この「軸で捉えて、沈み込む」という一連の運動を、本人はどのような意識で行なっているのだろうか? 今回は、3つのキーワードをもとに、その技術を明かしてもらった。
弥永奈々

やながなな●1999年11月12日生まれ、滋賀県草津市出身。幼い頃からスキーに親しみ、小学3年生でアルペンスキーをはじめる。大学時代に、アルペンと並行して技術選にも挑戦し、初出場で18位。その後も着々と順位を伸ばし、出場5回目となる2025年、第62回大会で初優勝を果たすと、第63回大会で2連覇を達成した。現在もレースと技術選という二つの舞台で活躍。SAJナショナルデモンストレーター2期目。
深さを生み出すキーワード_01 脚の伸展
切りかえからターンの前半に、すーっと脚が伸びていく。深さを生み出す一つ目のキーワードは、こ「脚の伸展」だ。難しい谷回りの局面で、深く角を立てることができるのはどうしてなのか?

谷回りからしっかりと角を立て、ターンの深さを出していく。これは私自身が、自分の強みとして普段から意識していることです。私は、この「深い角づけ角」を出していくために、身体全体の軸を使っていく。谷回りからしっかりと内傾角を取ることで、深く角を立てて雪面を捉えるのです。
このときに欠かせないのが「脚の伸展」です。重心を内側へと移動させながら外脚を伸ばしていくことで、長い軸を使って、角づけしたスキーの真上に立つことができます。あとは、重心を沈めていけば、スキーにしっかりと荷重してたわませることができる。谷回りの角づけが深いほど、しっかりとたわみを出せるのでターンが深くなる、というわけです。
Exercise_01 プルークで外脚を押し出す

重心が内脚の上にある状態から、外脚をターン外方向へと押し込んでいく。脚を伸ばしきるのではなく、内旋を使いながら伸ばすことで、しっかりと外スキーを押し込むことができる。たわんだスキーが戻ってくるのを感じてほしい。
Exercise_02 内手を股関節、外手を膝に

パラレルになると、外脚は伸ばすのに対し、内脚は徐々に曲げられていく。この真逆の動きを、手の補助動作を使って確認するエクササイズ。ターン中は外股関節が下がり、内股関節がつり上げられるのを意識しながらトライしてほしい。
深さを生み出すキーワード_02 ももの内旋・外旋
脚の伸展といっても、ただ「伸ばす」だけでは足りない。ここで欠かせないもう一つの動作が、「内旋・外旋」だ。この動作で、弥永が意識しているのは「もも」だという。どう使っていくのか、またそのことで何が変わるのか?

左右の脚をターンの内側へと絞るように使っていく。これが、脚の内旋・外旋です。私はこの動きを、切りかえて次の角づけが始まる、ターンの入り口のところから使う意識を持っています。
写真は、そのターン始動の動きを抜き出したものです。切りかえでスキーがフラットになったところから、次の瞬間にはもう、両脚のももがターンの内側へと絞られているのがわかると思います。脚を伸ばしながら、この「外脚の内旋」「内脚の外旋」を使うことによって、両スキーの角づけが徐々に深くなり、しっかりとスキーを押し込んでいけるのです。
内旋と外旋、どちらも重要ですが、特に難しいのは「内脚の外旋」だと思います。私は、その内脚の外旋を、意識的に使うようにしています。外脚の内旋と同じ分だけ、内脚を外旋させることができれば、両脚のすねが平行にそろってくるので、しっかりと両スキーでコントロールできます。ワイドスタンスの練習(エクササイズ4)は、その内脚のトレーニングにとても有効ですので、X脚になる方などは、ぜひ取り入れていただくといいと思います。
Exercise_03 手と脚の内外旋を連動させる

内手と内脚の外旋、外手と外脚の内旋を連動させてターンするエクササイズ。手と脚が同じ動きをすることで、脚の内旋・外旋を意識しやすくなる。手が下がると、内旋・外旋がうまく使えなくなってしまうので注意しよう。
Exercise_04 ワイドスタンスで内脚を外旋

外脚の内旋、内脚の外旋をワイドスタンスで行なっていく。スタンスが広くなると内脚の外旋が少し難しくなるが、あえて広げることで、内脚を意識的に使う練習になる。両脚のすねが平行になるようにトレーニングしてほしい。
深さを生み出すキーワード_03 カービングでずらす
深いターンの三つ目のキーワードは「ずらし」。しっかりと角を立てながら、そのなかでいかにズレを使えるかどうかで、コントロールの幅が大きく変わってくるのだという。「カービングでずらす」とは、いったいどんなテクニックなのか?

ここまでは、深いターンに必要な重心の移動と脚の動きについて説明してきました。実際のターンでは、弧の深さをコントロールしていく必要がありますが、そこで重要となるのが「ずらし」です。これはスキー全体を横へスライドさせるようなずらし方とは、かなり使い方が異なってきます。トップ側をかませ、テール側を押し込むことで、えぐるようにずらしていく。しっかり角を立てたところから、もう少し縦に削り込んでいくのです。
このことでテールはずれても、トップはカービングしていくので、見た目にはあまりずれているように見えません。ズレのなかでも角は立っているので、そこに重さが乗ることで、スキーはたわみます。テールを動かして少しスキーの方向を変えながら、しっかりとたわみを使っていく。だから純粋なカービングよりも深さを出せるのです。
このズレの量を調整すれば、弧の深さを自在にコントロールできます。逆にスピードを抑えたいときには、スキー全体をずらす動きも使います。このように、カービングターンのなかで、必要に応じてズレを活用できれば、コントロールの幅は大きく広がります。
Exercise_05 ワンターンで停止(内外旋を使って)

直滑降でスタートし、テール側を押し込むことで、切れ上がって停止する。重要なのは、しっかりと脚の内旋・外旋を使って雪を削り込むこと。外スキーだけでなく、内スキーでも雪を削れるよう、内脚の外旋を意識してほしい。