楽しくなければスキーじゃない。背伸びしたマテリアルで足が痛くなってしまったり、無駄な力を使って疲れてしまうのでは楽しくないし、何より上達なんて望めない。スキーヤーの「うまくなりたいココロ」を応援してくれ、さらにエキスパートも満足させる高性能が備わっていれば最高だ。そんなマテリアルに出会ったとき、雪の上はもっと愉快な場所になる!
ブーツ選びの第一段階は何だろう? 滑走技術に合っているか、自分の足にフィットしているか? 趣味の道具だからデザインだって大切な要素。レーシングモデルやデモのトップモデルは確かにかっこいいし、パフォーマンスだって申し分ない。しかしそれが自分にマッチしているかどうかは別問題だ。
実際、インストラクターやそれに相当するようなエキスパートでも、通常のゲレンデ使用では、一般スポーツモデルのほうが快適だし向いている、というケースは少なくない。元SIAデモンストレーターで同協会のデモ選で優勝経験も持つ谷藤昌司プロは語る。
「近年のスポーツタイプは、普段最上位モデルを使用している私たちから見ても驚くような高性能を備えていますから、一般的なゲレンデでは十分すぎるほどのパフォーマンスを発揮できます。とくにブーツは快適性が重要で、足が多少冷たくても我慢するなんてナンセンスだし、疲れずに長時間楽しく滑れるのが一番だと思うのです。軽くて、何本滑ってもストレスを感じないブーツがあれば練習するのも楽しくなりますし。優れたマテリアルは上達を助けてくれる、そんな時代になっているとも言えますね」
ブーツには、滑り手が思った動きをロスなくスキーに伝えてくれる伝達性やアイスバーンでのグリップ力など高い次元での性能も重要だが、現在のスポーツタイプはそういった条件を十分満たしているとの谷藤プロの見方だ。
今シーズン、ダルベロが世に問うオンピステスポーツシリーズのブーツ、DSシリーズは、まさにそんなキャラクターを備えたモデル。同社のレーシングモデル「DRS」で実証されている「センター バランス スタンス」や「ドライブ&コントロール」といったダルベロが誇るスキーロジックはそのままに、歩行時の快適性を高める「グリップウォーク」、脱ぎ履きしやすい「イージー ステップ イン アウト」によってコンフォートな側面も持たせている。さらに注目すべきは、特徴的な外観でも分かる2つの新テクノロジーで完全武装されていることだ。
「バイインジェクション・パワーゲージ」は、左右非対称の硬いケージ部分がシェルのゆがみを抑制、力強いグリップとロスのないパワー伝達を実現。しかもシェルのPU素材を薄く軽量にできるため、理想的なフレックスと足入れの良さまでも手に入れた機能だ。シェル下部の立体的な造形が目を引く「3Dグリップテクスチャー」は、温度変化によるブーツ足裏のシェルのゆがみを抑えてパワー伝達性とエッジグリップを向上させる。
スキーヤー思いの先進テクノロジーで上達をバックアップしてくれる、まさにそんなブーツの登場だ。
フォルクルのエンジニアリングは、スキーにおける物作りの原点を「滑る疾走感でスキーヤーを至福の場所に誘う。それはレースシーンか、パウダーやキッカーかもしれない」と考えているようだ。確かに、滑り出した瞬間に日常のストレスから解放される、これこそスキーの魅力の一端だろう。
フォルクルが日本限定で展開し、多くのフォロワーを獲得した「ジャパンセレクション・プラチナムシリーズ」は、基礎スキーシーンのニーズを研究し尽くした名作として名高い。このラインナップが発展し生まれたのが「レースタイガー デモ」だ。誇り高きフォルクルの「レースタイガー」という名を冠し、レーシングスキーのエッセンスを十分に取り入れながらも、一般スキーヤーが性能を引き出して楽しめるシリーズだ。そして、この魅力的なシリーズの中でも特に注目したいのが、「SX」、「SC」というオールラウンド性能を突き詰めた2機種。
さて、オールラウンドスキーという言葉には、いろいろな意味が含まれている。「斜面状況を選ばない」、「滑走スピードを問わない」、また「ターンサイズを問わない」という側面もあるだろう。さらには「ある程度の技術レベルを許容する」という性格があってもいいはず。実際フォルクルでは「バーサティリティー(万能で使いやすく、どんな要求にも応える)」という言い方をしており、「プラチナムシリーズ」のオールラウンドモデルもロッカー形状の導入、「UVO」の採用などで性能を高めてきたのは知っての通りだ。
ところで、オールラウンド性能を左右する要素の1つとして「乗り心地」がある。きれいなバーンなら滑りやすいが荒れたところだと、とたんにゴツゴツした感触になってしまうスキーでは、本当のオールラウンダーとは呼べない。「乗り心地」とは、「1つの構造やテクノロジーで決まるのではなく、形状を含めすべての要素の融合から生まれるもの」というのがフォルクルの考えであり、その象徴がレースタイガーデモで採用された「ロッカー+3Dグラス+UVO 3D+新サイドカット+ビンディング」から生まれる総合的機能。これによって、いつでもスキーヤーが快適と感じる乗り心地が得られ、同時に「滑りやすい=上達しやすい」という性格付けがなされているのだ。
SXに採用された「3Dグラス」は、ワンターンの中でも、求められる理想的なフレックスやトーションが変化することに着目したもので、サイドに配置されたグラスファイバーの上部への張り出しを、トップ、センター、テールで変え、フレックスとトーションのバランスにメリハリを持たせた構造。ロッカースキーの設計思想がいかんなく発揮され、たわみをコントロールしやすいという性能を実現した。
このシリーズについて谷藤プロは、
「とにかく滑りやすいので、新たなターン技術を覚えたいときにもいろいろな動きを試せます。それに実際のレッスンで『次は小回りをやるからスキーを替えてください』なんてことはありませんから、一台でなんでもできるのは強みです。SXやSCは、デモ選でも使えるくらいの性能を持っていますから、かなり上達したとしても頼れる相棒でいてくれますよ」
その中で面白いのは、SXとSCがともに優れたオールラウンド性能を備えている点は共通しつつ、個性が微妙に異なることだ。SXは滑り手のイメージする動きを繊細に、マニュアル感覚で味わえる本格派好みのスキーで、ターンサイズを問わず、切れもズレも楽しめる。それに対してSCは軽量で、オートマチックにスキーが動いてくれる感覚を楽しめる一台。ある程度どんなレベルのスキーヤーでも気持ちよくカービングの疾走感を味わえる。どちらも高級車のようにラグジュアリーな乗り心地だが、乗り手の好みやスタイルによって選ぶことが可能だ。
スキーは本来楽しく愉快なもの。なのにうまくなりたい気持ちが先行して雪上に立つたびにストイックになってしまっては本末転倒だろう。上達したい気持ちに寄り添うスキー「レースタイガー デモ」の登場は、滑る楽しさを再発見できるチャンスとなりそうだ。
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