スキー情報総合サイト スキーネット:SKINET

スピードブルー編隊の本気!Go! HEAD Young Guns

第61回全日本スキー技術選手権大会

テクニックの変革が著しい現代の技術選において、確かな結果を出し続けるHEAD Teamのヤングガンたち。

ひとつでも上を目指して進もうとする若い力、スキーヤーとしての自分を高めようとする探究心。

それらがひとつの流れとなってチームの個性となる。

HEAD Teamの2024技術選ストーリー。

近年の技術選を語る上で欠かせない存在、それは10代、20代前半といった若い力の台頭だ。たんに競技出身かそうでないかなどではなく、それぞれが現在の用具性能をフルに引き出し、かつては考えられなかったほど鋭いスキーの切れや走りを引っ提げて、技術選シーンを盛り上げている。そしてこれは多くのファクトリーチームに共通する傾向ではあるが、なかでもヘッドチームは、そんな「ヤングガンズ」と称される若手たちが中心となって流れを作っているチームだ。

これは、「全国規模で有望な若い芽を見出し、全日本参加レベルではない頃から適切な練習環境を提供することで選手のモチベーションを高め、そのポテンシャルを最大限に引き出す」という考えがもたらした結果だろう。

そして総合8位の山田椋喬。予選では大きな失敗もあったが、見事にメンタルをコントロールして、決勝の「大回り 中急斜面 整地(ナチュラル含む)」では種目別1位と大回りマスターの面目躍如、さらにスーパーファイナルの「小回り (リズム変化) 急斜面 整地(ナチュラル含む)」では285点で2位を記録、小回り系でも高いポテンシャルを見せつけた。

さて、そんなヘッドチームは今回の技術選でも素晴らしい戦績を残してくれた。それらを語る上でまず欠かせないのが、優勝候補の一角と目されていた奥村駿だ。

予選から好調の彼は4種目中2種目でラップを記録、首位の武田竜にわずか2点差の2位につけ、決勝を迎える。

「大回りでは少しミスもありましたが点数も出たし、やっていることは合っていると思うので、ここからですね」

落ち着いてしかも淡々と語る奥村だったが、その表情からは「優勝を狙う」という強い意志が感じられた。

決勝では3種目ラップの武田竜に18点差と、少々出遅れた感があったものの滑りの勢いはまったく変わらず、「中回り (マテリアル規制) 急斜面 整地(ナチュラル含む)」では、持ち味の深い内傾を生かして280点で1位をマークした。

そしてスーパーファイナル。奥村は不整地種目で25位と伸び悩むが、「小回り (リズム変化) 急斜面 整地(ナチュラル含む)」で288点、「フリー 急斜面 整地(ナチュラル含む)」で285点と、ミラクルスコアの2連発! 

「深めのターンと、得意のショートターンの組み合わせを、見せ場を考えながら構成しました」

全日程を終えての順位は3323点で2位。トップの武田竜とは25点差であった。これを大きいと見るか小さいと見るか……? 少なくとも奥村本人には「大きな差」とはうつっていないのではないだろうか。なぜなら、予選から最終部までトップの武田に常にプレッシャーを与えることができるポジションをキープし、しかも武田を抑えて種目別ラップをマークした種目が3つもあったのである。

まだまだ発展途上にして、この存在感。チームのエースとして、今後の進化が楽しみだ。

奥村同様にトップ争いにプレッシャーをかけ続け総合4位をマークしたのが尾﨑隼士。突出した爆発力というよりはオールラウンダー的な点の取り方で自己最高位をものにした。

同じチームのライバルである野々山颯絵と勝浦由衣。野々山颯絵が競技出身であるのに対し、勝浦由衣はジュニア技術選出身と、異なるバックボーンを持つ2人だが、スーパーファイナルの不整地種目では、同点で1位を分け合った

女子では、けがから復帰した野々山颯絵が総合7位に入った。しかも決勝とスーパーファイナルそれぞれの不整地種目でラップをマーク! その他の種目でも安定して点を重ねる戦いぶりを見せてくれた。決勝「小回り 中急斜面 不整地」のゴール後に

「最初はどんな点が出たのか分からなくて……。281点ってわかった時は信じられなかった」

と語った彼女だが、そのひそかな自信が翌日にもう一度ミラクルスコアをもたらした。「小回り 中急斜面 不整地」で280点の1位! スーパーファイナルの種目順位だけ見れば、3位、1位、2位、9位というほぼスキのない得点累積能力を発揮してくれたと言える。

ところで、このスーパーファイナルの「小回り 中急斜面 不整地」で同点1位となったのが、同じヘッドチームの勝浦由衣だった。予選から特別大きな失敗があったわけではなかったが、

「予選での滑りは、失敗というよりも攻めきれてなかったという感じだったので、決勝のコブを滑り終えた時は、うまく攻めることができたって、ほっとしました」

と本人が言う通り、ここ一番の爆発力が見えなかったのは事実かもしれない。

しかし、それでも全種目満遍なく加点できるオールラウンダーとしての資質を彼女に感じたファンや関係者は多かったに違いないし、スピードブルー編隊における野々山颯絵とのツートップ飛行を期待せずにはいられない。

なお今回、ヘッドチームからスーパーファイナルに進出した選手は男女合わせて8名。ここまでで紹介した奥村駿、尾﨑隼士、野々山颯絵、山田椋喬、勝浦由衣のほかに、辻村友寿(総合18位)、長沼將馬(総合22位)、成田伊織(総合28位)といった選手たちだ。

ヘッドチームに限らないが、近年のファクトリーチームは、競技経験者もそうでない選手も、同じ土俵に立って対等の戦いをしている。レギュレーション傾向から見れば、競技出身者がまだ有利かも知れないが、そんな事情を吹き飛ばせるほどの選手もどんどん出てきている。それは、彼らフレッシュなスキーヤーによって、まったく新しいターンテクニックが日々生まれていることの証しなのではないだろうか。

スーパーファイナル進出者を囲んで。彼らが牽引役となり、また新たな競合選手を輩出する。そんな層の厚さが、スピードブルー編隊の魅力だ。 マテリアルの性能と己の技術をマッチさせ、スキーテクニックの開拓者となり得るメンバーたちがここにいる!
チームのレジェンド山田卓也選手から祝福を受ける。この偉大な先輩からも多くのことを学んできたに違いない

男子総合

奥村 駿

圧倒的なパフォーマンス、説得力とスター性。これだけの褒め言葉を並べたてられても彼は動じまい。技術の開拓者としての意思の強さが彼にはある。最終獲得点数3,323点

若くしてテクニック開拓者の風格!

男子総合

尾﨑隼士

どんな種目でも高いパフォーマンスを発揮できるオールラウンダーに成長。その強みがどれだけ重要なものかを、この順位が証明している。最終獲得点数3,308点

オールラウンダーとしての高い完成度

女子総合

野々山颯絵

ポーカーファイスの彼女だが、心の奥に秘めた闘志は常に燃えている。今大会では、不整地種目でのパフォーマンスが彼女のハイライトだった。最終獲得点数3,283点

物静かな中に燃えたぎる闘志

男子総合

山田椋喬

大回りでの圧倒的なポテンシャルが持ち味であったが、今回は小回り系種目でも進化を発揮し新たな存在感を見せつけることに成功した。最終獲得点数3,301点

ショート系種目でも新境地をアピール

女子総合

勝浦由衣

本人にしてみれば、とても納得できる順位ではないはず。元来のスキー操作の正確さに、さらなるスピードと切れをプラスして、上を狙ってほしい。最終獲得点数3,256点

隙のない戦いぶりは成長の証

男子総合

辻村友寿

シャープさや力強さに加え安定感も折り紙つきの辻村。あとはトップを取れる絶対的得意種目の確立と爆発力があれば、一気にジャンプアップ! 最終獲得点数3,276点

若さみなぎるフルアタック感が魅力

男子総合

長沼將馬

経験値の豊富さとスキー操作の正確性はピカイチ。今回はいくつかの失敗があったが、それでもポテンシャルはトップクラスであることに間違いない。最終獲得点数3,267点

高い完成度の滑りでチームを牽引

男子総合

成田伊織

シャープかつ重みのある滑りで雪面を切り裂く成田。競技のテクニックを技術選にうまくアジャストできれば、一気に上位に入ってくるはずだ。最終獲得点数3,255点

ここ一番の爆発力はまだまだ未知数

文:近藤ヒロシ/ 写真:黒崎雅久、鈴木馨二(White Depot)、近藤ヒロシ