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今の技術のその先へ 解剖ATOMIC 新レッドスター

軽快さも、しなやかさも、優れた安定性も、すべては理想的なターンを実現するため。

そして来季はしっかりとエッジグリップするスキーへ、いっそうの進化を遂げた。常に時代を映し、その先を行く、アトミックの「レッドスター」。

今回は、メーカー主催のプロセミナーで得た情報からその真価を徹底的に探っていく。

REDSTER S9I PRO

技術選のトップ選手が小回り系種目で使用している、ハイエンドモデル。こちらは芯材の変更は行なわれていないが、細部が見直され、いっそうシャープな走りを出せるスキーに

REDSTER S9I
REVOSHOCK S + X12 GW

レボショック・スチールが搭載され、高速安定性に優れたモデル。芯材が「カルバ+ポプラウッドコア」に変更され、しなやかさとグリップ力を併せもつスキーへと進化した

REDSTER S8I
REVOSHOCK C + X12 GW

カーボンのレボショックが搭載されるなど、静かな走りを可能にしつつも扱いやすさを重視したモデル。芯材が「カルバ+ポプラウッドコア」に変更され、グリップ力が増した

レボショック・スチール

REVOSHOCK  STEEL

弾性のある素材「エラストマー」と、「スチールスプリング」の2層構造になったレボショックが、サスペンションのような役割を果たし、滑走中の振動を吸収。静かなターンを可能にしてくれる

リバウンドのエネルギーを加速に

高いスピード域でもスキーが安定

レボショック・カーボン

REVOSHOCK  CARBON

同じく2層構造だが、こちらはスチールではなく、より軽量なカーボン素材が用いられている。振動を吸収することで安定性を確保しつつ、高い操作性を実現。思い通りのスキー操作が可能に

スムーズに動き、機敏に対応

優れた安定性を実現

時代を敏感に捉え 進化するスキー

一見して派手さはないが、それでいて強いインパクトを放つ、黒いトップシート。それはまるで、目には見えない改良が施された自らの〝内なる進化〟を、主張しているかのようだ。

写真は、アトミックの看板機種、レッドスターの「Iシリーズ」。レッドスターといえば、あのミカエラ・シフリンをはじめ、多くのワールドカップレーサーが愛用するモデルとして知られるが、「Iシリーズ」はその中でも日本向けに展開されてきた、基礎系のエキスパートモデル。そのポテンシャルの高さは、男子史上初の技術選4連覇を成し遂げた武田竜をはじめ、トップ選手の華々しい活躍が示す通り。レーシングスキーのテクノロジーを継承しつつ、扱いやすさ、高い操作性を備えた名機として、絶大な支持を集めてきた。

キーテクノロジーである「レボショック」(振動を吸収するシステム)は、来季も踏襲。では何が変わったのか? 変更されたのは、中の芯材だ。従来のウッドコアは軽量な「カルバ」がメインだったが、来季はより剛性の強い「ポプラ」を採用。「カルバとポプラ」という2つの素材を組み合わせることで、持ち味である軽さはそのままに、より強いエッジグリップを可能にするモデルへと、生まれ変わったのである。

この変更が、スキーヤーのパフォーマンスに何をもたらすのか。アトミックデモチームのヘッドコーチ、松沢寿(SAJデモチーム監督)が、プロセミナー(販売店向けのセミナー)でこの点について詳しく解説しているので、紹介していこう。まずは改めて、今の大会や検定で求められる技術について、少し整理しておきたい。

近年の技術選は、ターンの深さやスピードを、スキーのスライドではなく、カービングでコントロールする技術が求められるようになった。大回りと小回りのターンサイズの目安が、スキーのレギュレーションに合わせて示されるようになったのは、その技術を可視化するため。今、この流れは技術選に限らず、検定などにも浸透しつつある。

つまり大切なのは、スキーを極力ずらさずに、推進させながらコントロールできるか、ということ。ずらす場合でも、角づけを緩めて雪をなでるのではなく、あくまで「エッジを立てた状態で雪を動かしてずらす」ことが求められる。要は、「しっかりと角づけを行なった中でのコントロール技術」こそが、最大の焦点となっているのだ。

改めて、芯材の話に戻そう。Ⅰシリーズは、スキーの両サイドが今までよりも硬い素材になり、エッジに強さが加わった。このことで、雪面の早い捉え、強いエッジグリップが可能に。時代にマッチしたカービングのテクニックを手に入れるために、最適なマテリアルへと進化を遂げたのである。

強さが加わることで よりしなやかに

では実際に、乗ったときのフィーリングはどう変わったのか? 試乗したユーザーの声をまとめたテストレポートを、具体的にみていこう。

まず興味深いのは、「しっとり、しなやか」といった感想が多く寄せられていること。芯材が硬くなったのに、乗り味が「しなやか」とは、どういうことなのか? 

一般的に、返りのいいスキーは、運動のタイミングが合えば気持ちよくターンができるが、ともすると反発が大きくなりやすく、特に小回り系ではスキーが暴れる、といった現象にもつながりかねない。これに対して、Iシリーズがしなやかな印象を与えるのは、こういった極端な跳ね上がりが起きにくく、しなったスキーがスムーズにもとの形状に戻り、安定して次のターンへと入っていけることを示している。

一方で、「ターンの仕上がりが縦方向に感じる」との意見もあった。ターンとターンのつなぎはカービングの非常に重要なポイントであり、ターンの終わりから次のターンへ、よりダイレクトに向かっていけたほうが当然、効率がいい。フレックスの軟らかいスキーは、ともすると曲がり過ぎてしまい、ターン後半に切れ上がって次のターンが膨らんでしまうこともある。「仕上がりが縦方向」とは、このような現象に陥ることなく、より直線的に抜け出せることを示している。

なお、こういったフィーリングを生み出している背景に、従来からのテクノロジーが機能していることも強調しておきたい。中の芯材が変わっても、スキーの重量はほぼ変わらぬまま。そして、「レボショック」が搭載されたモデルならではの、振動の少ない、静かな乗り味も、しっかりと引き継がれている。

中でも上位モデルの「S9I レボショックS」は、スチールのレボショックが搭載されており、高速安定性に優れているのが特徴。プライズテストなどを目標とする上級者には、最適なチョイスだ。一方の「S8I レボショックC」は、もう少し操作性に重きをおいたモデルで、カーボンのレボショックが搭載されている。中の構成材にもカーボンが採用され、軽快な乗り味が特徴のセカンドモデルとなっている。

さらに今季は、より軽量化された「X7I レボショックC」が新たに登場。筋力や体力に自信がなくても選べるモデルがラインナップに加わったことで、幅広い層のスキーヤーが、自身の体力やレベルに合わせて、Iシリーズをチョイスできるようになった。

安定性と操作性に、強さをプラスすることで、「静かだけど、速い」スキーへ。時代の要請にしっかりと応えてくれる、待望のマテリアルだ。

軽快さはそのままに……
「前半の捉え」「エッジグリップ」「安定性」が向上

Iシリーズの新ウッドコアシステム
「カルバ+ポプラ ウッドコア」

スキーの両サイドに、カルバよりも剛性の強い、ポプラ素材を採用。レッドスター、Iシリーズの特徴である軽さ、扱いやすさはしっかりと継承しながら、その中でもエッジが雪面にしっかりとグリップする構造へと進化した。このことで、カービングターンにおけるより高い安定性を実現している

静かなのに、鋭い

──求めたのは、ターンの質

なじむからこそ 自由に動ける

スキーは進化を続ける。一方で、その性能をフルに使い、パフォーマンスを存分に引き出すためには、当然ながら、足にフィットするブーツが欠かせない。人の足のかたちは、千差万別。一人ひとりにジャストフィットするスキーブーツを作り出すための、アトミック独自のフィッティングテクノロジー、それが「メモリーフィット」だ。

ブーツの調整というと、一般的には、足を入れてあたりが出たところにフォーカスし、その部分のシェルを出したり、削ったりすることが多い。アトミックの「メモリーフィット」が、そのような調整方法と一線を画すのは、最初からブーツ全体をその人の足のかたちに丸ごと合わせてしまおう、という根本的な発想の違いにある。正味12分、準備する時間を含めても、およそ30分という圧倒的な短時間で、ブーツを完全にその人の足にカスタマイズすることができるのだ。

一部の製品を除くほとんどのアトミックブーツが、このメモリーフィットに対応。今回は、その中でも技術志向のスキーヤーにおすすめの3つのモデルを紹介したい。写真は、いずれもアトミックを象徴する鮮やかなレッドカラーで彩られているが、同じ「赤」でも、それぞれ全く異なる個性を持つ。

まずは、エキスパートスキーヤーにおなじみの「レッドスターSTI」。これは同じレッドスターのレーシングブーツ「TI」に、より操作性を重視したアレンジが加えられたもの。ラスト幅は93㍉と細身の設計で、優れたパワー伝達性が特徴だ。その反応の良さから、技術選でも愛用されている。

同じレッドスターでも、「レッドスターCS」は、ラスト幅が96㍉と、全体にゆとりを持たせた設計。カービングで高速ターンをするのに申し分ない性能を備えつつ、快適性を両立させた、非常にバランスの取れたブーツだ。

そして最後は来季、新たにラインナップされた注目のモデル「ホークス・ウルトラ130 RS GW」。ホークスは、アトミックブーツの中でも世界で最も売れている人気シリーズで、履きやすさ、快適性に優れたオールマウンテンモデル。この新しいホークスが今までと異なるのは、シェルにレッドスターブーツと同じ、粘りのある素材が用いられている点だ。履きやすく快適なオールマウンテンブーツでありながら、やや硬めの設計で、オンピステでのカービングターンも存分に楽しめる。これまでにない自由度の高さを実現した、というわけだ。

よりハードな滑りを可能にするものから、遊び心をくすぐるニューフェイスまで。ブランドカラーを全身にまとった3つの「赤」。に合わせ、最適なチョイスをしてほしい。

正味12分で、ブーツ丸ごとフィット

メモリーフィット

部分的に手を入れるのではなく、ブーツを丸ごと、その人の足に合わせる「メモリーフィット」。この上ないフィット感を短時間で生み出す、アトミック独自のカスタマイズ技術だ

ブーツを温める

予熱した専用のオーブンに、ブーツのシェル(またはインナーブーツも)を入れ、全体を温める

足に合わせる

温まったブーツに足を入れ、バックルを軽く締めた状態で2分間静止。足のかたちにブーツをなじませる

ブーツを冷やす

予熱した専用のオーブンに、ブーツのシェル(またはインナーブーツも)を入れ、全体を温める

オーブンで温めると、シェルの表面温度は60~70℃に。この状態で足を入れて固定することで、ブーツの形状が足のかたちになじんでいく
ブーツが足の形状に馴染んだら、そのままの状態でクーリングパッドを使って冷やし、ブーツ全体が足にフィットする形状に
ブーツが足の形状に馴染んだら、そのままの状態でクーリングパッドを使って冷やし、ブーツ全体が足にフィットする形状に

REDSTER
STI 130

レーシングブーツの性能をしっかりと引き継ぐ、安定性と剛性を備えたモデル。パワー伝達性に優れ、スキーヤーの運動に機敏に反応。高速ターンをアシストしてくれる

REDSTER
CS 130

STIに比べると、足の先や甲の部分にゆとりを持たせた設計で、より快適性を求めるスキーヤーに最適。高速ターンが十分にできる性能を備えた、バランスのいいブーツだ

HAWX ULTRA
130 RS GW

世界的な人気を誇る「ホークス」のニューモデル。快適なオールマウンテンブーツながら、これまでにない剛性を備え、高速ターンをもカバーする自由度の高さを実現した

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下記ボタンからは各モデルの価格やスペックが載っているWEBカタログをチェックできる

写真:石橋謙太郎(studioM)、黒崎雅久 / 文:佐藤あゆ美