スキー情報総合サイト スキーネット:SKINET

栗山未来のSquat & Touch
大胆かつ繊細な滑りのベース

2018年の全日本スキー技術選で見事女子総合2連覇を達成した栗山未来。
その滑りのベースとなっているのが、スクワットポジションと繊細な雪面タッチだ。
コブの滑りから引き出された2つのポイントが、ダイナミックな彼女の滑りを支えている。
ここでは、未来流のターンの基を、解説を加えながら詳しく紹介していこう。

栗山未来=解説

くりやまみく●1985年11月9日生まれ。富山県出身。2014年の技術選で女子総合6位を記録。この年、SAJナショナルデモンストレーター初認定。2015年の技術選では、切れ味鋭いターンで大回り種目別1位を獲得した。2016年の技術選でも総合6位と安定した実力を発揮し、2017年、2018年と連覇を達成。GALA湯沢スキースクール所属

Prologueスクワット&タッチ

私の滑りのベースは、ターン弧が変化しても変わりません。1つは、スクワットの動き。そしてもう1つは雪面タッチです。
コブから受ける衝撃や、ターン後半の外力に対応するためには、脚の曲げ伸ばしを行なうスクワットの動きが重要になります。
また、すべての衝撃や重さを、常に力で押さえつけようとすると、疲れるだけでなく、粗い滑りになってしまいます。外力をすべて受け止めるのではなく、どこか力を逃すような、いなす感覚の雪面タッチが大切です。
ここでは、そんな私がこだわっている滑りの感覚を皆さんにお伝えしたいと思います。

Event1 ベースとなるコブの滑り

私にとって、コブの滑りがすべてのベースです。コブの中でのスクワットのポジションに内傾角をプラスして動きのタイミングを変えれば、ショートからミドルへ、ミドルからロングへとターン弧を変化させていくことができます。
コブの中では、身体全体で十分なストロークがとれないと、スムーズに滑ることができません。基本的にターン前半でズレを使いながら、きれいにスキーをピボットさせて滑りたいので、切りかえから捉えにかけて、全身を思い切り伸ばし、足とスキーを好きなところにもっていけるように意識しています。
また、切りかえの部分では、上体と下肢が大きくひねられるのではなく、上体と膝がほぼ正対した姿勢が理想です。こうすることで、コブから衝撃を受けても比較的スムーズに次の動きに入っていけるからです。

スクワットポジション

コブからの衝撃を受け止めるときに意識するのが、スクワットポジションです。スクワットの動きで、しっかりと雪面からの圧を受け止め、それを次のターンへとつなげていきます。ただ単に脚を曲げて対応しているように見えますが、私は、コブからの衝撃を重さと捉え、その重さに対抗するためのポジションだと考えています。この感覚は、ショートターンやロングターンのターン後半でも同じです。コブと同様にスクワットポジションをとり、遠心力などの外力に対抗しています。

雪面タッチ

スクワットポジションと同様に大切なのが、雪面タッチです。雪面からの衝撃をすべて受け止めてしまうと、柔らかい滑りにはなりません。コブの衝撃を押さえ込むのではなく、うまくいなす感覚が大切です。この感覚は、器械体操の着地の感覚に似ています。宙返りなどの演技を終え、高いところから着地するとき、その衝撃を身体全体で受け止め、脚を大きく曲げずにスッと着地する、あの感覚です。膝や足首を緩めすぎることなく力を受け止めることで、その力は逃げずに次のターンにつながっていきます。

身体の曲げ伸ばし

スクワットの動きや、いなしの感覚を引き出すためには、身体全体を思い切り伸ばす必要があります。雪面にタッチするときは、顎を引いてつま先まで伸ばし、そしてスクワットポジションでは、体育座りをイメージしています。コブの中でのこの極端な伸び縮みの感覚が私の滑りを支えています。この動きはタイミングも重要です。雪面からの圧に対して感覚を研ぎすまし、それに対応するように動きます。このタイミングがずれてしまうと、滑り全体がギクシャクしたものになってしまいます。

Training横滑りの連続

スクワットポジションと雪面タッチの確認

コブのベースの動きが全部入ったトレーニングです。全身で曲げ伸ばしの動きを表現し、その動きの中で、脚部でスキーを回旋させています。切りかえでは、腰高のポジションがポイントです。そこから横滑りの体勢に入り、雪面を捉えながらスクワットポジションへと移行していきます。スクワットポジションでは、膝の位置をキープしたまま、お尻の位置がしっかり後ろに動く意識をもって脚を曲げていきます。ここで膝が前に出てしまうと、コブ斜面で前につんのめってしまうので注意が必要です。

写真:黒崎雅久 / 撮影協力:志賀高原 熊の湯スキー場、熊の湯温泉 熊の湯ホテル / 制作協力:揚力株式会社