全日本スキー技術選を戦うファクトリーチームの中でも、オガサカチームはその歴史、スケールともに間違いなくトップクラスのチームだ。
また、技術選で勝てるスキーというコンセプトで開発されたTCシリーズは年々進化を遂げ、チームメンバーにとって欠かせない愛機となっている。
今大会、昨年に続いて女子総合2位に輝いた神谷来美をはじめ、チーム全員が白馬のピステに描いたのは未来へのシュプールだった!
「苦手なロングターン系が2種目続くので正直苦しいですけど、その後は得意な小回り系になるので、気持ちを集中させてスパートをかけたいです!」
スーパーファイナル最初の種目を滑り終えた神谷来美は語った。予選を2位、決勝を3位で通過、上位3名が少ないポイント差で熾烈な展開を繰り広げる中、彼女の表情には、若干の緊張感といつもの笑みが同居していた。
技術選デビュー3年目。昨年は女子総合2位という成績を記録し、自分の周りの世界が少しだけ変わったことを実感したという。現在、現役の大学生でもある彼女は、紛れもないスキーアスリートだが、同時にごく平凡な大学生でもある。前年度準優勝者という立場で臨んだ今大会、彼女は決して小さくないプレッシャーを感じていた。
「去年は、とにかくうれしい!のひと言でしたが、今年は、周りの期待もありましたし、良い滑りを見せなくちゃというプレッシャーもありました。だから、気持ちをしっかり持ってすごく耐える部分が多かった大会でした。それに、渡邊渚選手の勢いがすごくて、彼女に勝つのは正直難しいなという計算も働いてしまいました」
1位春原優衣、2位渡邊渚、そして3位神谷来美という順位でスタートしたスーパーファイナル。5位には同じオガサカチームの弓野華緒、11位の赤松かおりも好調さをキープしている。
神谷は最初の「大回り急斜面ハードパック」で、不得意種目とは言いつつも278ポイントをマークして7位。「フリー急斜面ハードパック」でも279ポイントで4位、得意の「小回り・フリー急斜面ハードパック」では283ポイントで2位、そして「小回り急斜面不整地」では284ポイントで種目別ラップを記録した。この時点でトップは春原から渡邊に代わり、神谷は3位。ウイニングマッチへの進出を決めた。2位の春原と神谷のポイント差は、なんと1点だった。
2023年技術選最後の種目は「フリー急斜面ハードパック」。ここで神谷は意地を見せる。285ポイントの種目別1位をマークしたのだ。これにより、2位と3位が入れかわり、神谷は最終成績を女子総合2位とした。
「今大会をひと言で表現したら……、ズバリ『苦しかった』ですね(笑)。でもプレッシャーと戦うことも、今思えば良い経験になったし、チームのメンバー一丸となって大会を戦えたという実感もあります。大会で使うスキーも年々進化していて、それを使いこなすのも楽しみ。自分にしか描けないシュプールを刻むことができたと感じています!」
写真左)女子総合2位の神谷来美と4位の弓野華緒は、ともに北海道出身。大所帯のオガサカチームにあって、フレッシュさ、若さを象徴する2人だ。とはいえ、並みいる強豪を抑えて上位に食い込んだ実力は本物だ
写真右)オガサカテントにて花束を受け取る神谷と、それを祝福する女子総合3位の春原優衣
今大会の春原優衣は、予選から絶好調だった。予選成績は1位春原、2位神谷、3位に弓野と、オガサカチームが独占。決勝でも、春原の首位は変わらず、種目別ラップはないものの、その安定感は抜群だった。
「私のすぐ後には渡邊選手、神谷選手、弓野選手と若い選手の追い上げがありましたが、若い選手が育っているからといって、自分から世代交代なんて言い出してはいけないかなと思っています(笑)。確かに今回は、若い選手の活躍がすごかったけど、青木美和選手や栗山未来選手もしっかり上位に入っていますし、ベテランにはベテランにしかできない滑りもあるので……」
大会前、春原は「自分にしかできない滑りで優勝をとりに行きます!」と力強く語っていた。その言葉通り、気迫あふれる素晴らしい戦いぶりを見せてくれたといっていいだろう。
今大会4日間を通して春原が種目別1位を取ったのはひとつだけ。予選の「大回り急斜面ハードパック」だけだった。それでも大会前半を首位キープできたのは、まさにベテランならではの安定感、そして意地だったのだろう。
技術選という歴史の中で、丸山貴雄の名は特別な意味をもっている。通算5度の優勝、コブ斜面での革新的テクニックなど、スキー界に貢献した彼の業績の重みは計り知れない。
引退を表明して臨んだ今大会、丸山は予選を5位で通過、決勝では6位となりスーパーファイナルに進出、そして最終成績は男子総合6位。これだけ見ると、まさか引退する選手のデータとは思えないほど充実した成績であった。特に「小回り急斜面不整地」で見せた圧巻のパフォーマンスは286ポイントというハイスコアをたたきき出し、ギャラリーを驚愕させた。
「見てくれている人が僕の滑りを見て楽しいと感じてくれるような、そんな演技を心がけました」
スーパーファイナルの「フリー急斜面ハードパック」を滑り終えた時、そう語った丸山。自身が生まれ育った白馬、そしてスキーヤーとして多くの時間を過ごし、また戦いの場でもあった八方尾根のピステに、丸山が刻んだのは多くの人への「感謝のシュプール」だったのかもしれない。
若い選手が描くシュプールとベテラン選手が刻むシュプール、そのどちらも未来へ続くものになるに違いない。
「新しいTCシリーズは素材を徹底的に見直し、フレックスとトーションのバランスを変更、現在の技術選で求められるテクニックに対応できるスキーになっています。
具体的にはターン前半からのたわみ出しが非常に良く、より早いタイミングで雪面を捉えることができます。タイトでシャープなターン弧を描け、減速要素を最小限に抑えることが可能なのです。
また「SB」は、スキー全体の剛性感は向上していますが、テールの反応はややマイルドで、このことが不整地での滑りやすさにつながっています。
今大会では、黒菱の自然コブも使用されましたが、選手からは「いつも以上に攻めたけど、コブに負ける気がしなかった」「スキー全体が凹凸になじむ感覚があった!」など、高い評価を得ることができました。
TCシリーズは技術選対応モデルではありますが、抜群の操作性、荒れたバーンでの滑りやすさから、より多くの上級者に履いてほしいですね」
(オガサカスキー営業部販売促進・選手対策課 三辻秀徳さん)
Made in JAPANの誇りとともに「モノづくり」にこだわってきたオガサカが、技術選アスリートが望む滑りを実現するために開発した TCシリーズは、多くのトッププレイヤーから絶大な信頼を獲得している。
【LENGTH】180 / 183cm
【SIDECUT】106.7-67.0-89.7mm(180cm) 106.5-67.0-89.5mm(183cm)
【RADIUS】23.1 / 24.1m
【WEIGT½】1,038g/m
たわみを引き出しやすく、しかもバーン状況に左右されずにシャープさを味わえるロングターンモデル。
【LENGTH】162 / 167 / 172 / 177cm
【SIDECUT】111.0-67.0-94.0mm
【RADIUS】15.9 / 17.0 / 18.1 / 19.2m
【WEIGT½】1,041g/m
小回りから大回りまで対応。センター幅がやや広いため、悪雪や新雪にも抜群に強いオールラウンドなモデル。
【LENGTH】155 / 160 / 165 / 170cm
【SIDECUT】119.0-65.0-102.0mm
【RADIUS】10.5 / 11.3 / 12.1 / 13.0m
【WEIGT½】976g/m
スキー全体の剛性感が高く、硬く締まったバーンでも安定感あるターンが可能。レーシーなフィーリングも魅力なショートターンモデル。
【LENGTH】170 / 175cm
【SIDECUT】108.0-65.0-91.0mm(170cm) 105.7-65.0-88.7mm(175cm)
【RADIUS】18.0 / 21.0m
【WEIGT½】966g/m
ジュニア技術選(ユース)の大回り用スキー として開発。高速域のリズム変化でも雪面コンタクトが取りやすい。
【LENGTH】135 / 140 / 145 / 150cm
【SIDECUT】114.0-64.0-97.0mm
【RADIUS】8.9 / 9.7 / 10.5 / 11.3m
【WEIGT½】821g/m
写真、文:近藤ヒロシ / 写真:黒崎雅久、渡辺智宏
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