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躍動。HEAD YOUNG GUNS

第60回全日本スキー技術選

ピステに弾けた若い力。
ヘッドデモチームの戦い

第60回全日本スキー技術選において、HEADデモチームはスーパーファイナルに8人(男子6人、女子2人)を送り込み、
一大勢力としての強さををアピールした。

特に目立ったのが奥村駿を筆頭に若い力たちが弾けるような躍動を見せてくれたことだった。

また女子もベテランの2名が隙のない戦いぶりで、見事に上位入賞を果たした。

そんなHEADデモチームの活躍に迫る。

HEADデモチームのスーパーファイナリストたち。今年はYOUNG GUNSを中心に層の厚いメンバーで4日間を戦い抜いた。 若い力と、ベテランの経験値、そのどちらもチームの大きな武器となる!

年、初出場で記録した男子総合15位から、大きく飛躍して準優勝の栄誉に輝いた奥村駿。元気で若々しく、とことんまで技術を追求する熱心さ……。それらはまさに今のヘッドデモチームが持つパワーを象徴するキャラクターだ。

今大会、奥村は予選を1位で通過。しかも「フリー中急斜面ハードパック」と「小回り急斜面ハードパック」の2つで種目別トップ! 本来、彼のポテンシャルが生かされるはずであった「大回り急斜面ハードパック」で9位と、本人にしてみれば不本意な順位を記録してなお、この好スタートだったのだから、ファンのみならず関係者の間でも期待は高まっていた。

「予選をトップで通過できたからといって、変な緊張感につながることはありませんでした。2位には武田竜選手が控えていましたし、得意の整地種目で自分の滑りをしっかり表現することを一番に考えていました」

その言葉通り、奥村は決勝でも思い切りの良い滑りを見せ、「フリーマテリアル規制総合ナチュラル」でラップ、「小回り急斜面ナチュラル」で2位を記録する。しかし「大回り急斜面ハードパック」で10位、「小回り急斜面不整地」では47位と振るわず、ポイントを大きく加算することはできなかった。

参戦2年目の奥村 駿。アルペン競技のテクニックをフルに駆使したスタイルながら、不整地種目でも非凡なセンスを見せる。今大会では予選をトップで通過し、最終日まで優勝争いを繰り広げた

結局決勝の順位は、武田竜と入れかわり2位に。それでもポイント差でみれば、武田竜の2218ポイントに対し、奥村は2215ポイント。最終日はスーパーファイナル4種目に加えてウイニングマッチ(上位3名)と、計5種目が行なわれるため、十分に逆転優勝も狙える状況だった。

 最初の「大回り急斜面ハードパック」で281ポイント(5位)となった奥村は、続く「フリー急斜面ハードパック」で279ポイント、「小回り・フリー急斜面ハードパック」では282ポイントをマークするも、「小回り急斜面不整地」では280ポイントの15位となり、合計ポイントでトップの武田竜に14ポイントのアドバンテージを与えてしまった。ウイニングマッチでは288ポイントの高スコアを叩き出すも、逆転はかなわず2位で大会を終えた。

「多くの方に支えられて、ここまでこれました。でも、この結果には満足していません。自分の可能性を信じ、さらに高みへ進んでいきたいです!」

山田椋喬は、昨年の20位から13位にジャンプアップ、尾﨑隼士は21位、辻村友寿は24位に食い込む活躍を見せた。

また、チームのベテラン兼子稔が、男子総合19位をマークして存在感を見せた。スーパーファイナルの1種目目、転倒し負傷してしまった長沼將馬の直後に滑走し、ゴールすると、「將馬とは、ずっと一緒に頑張ってきて今年は期待していたことを考えると本当に辛いです……」と涙をこらえて語っていたのが印象的だった。

同じくベテランの山田卓也は、決勝の「小回り急斜面不整地」で種目別6位をマークし、しっかりと底力を発揮してくれたこともチームにとって頼もしい追い風となったに違いない。

女子チームでは、川端佑沙が8位、渋谷潤子が9位とそろってひと桁入賞。川端佑沙は全日程を通じて種目ごとのばらつきが少ない安定した戦いぶりを見せてくれた。渋谷潤子は、得意の不整地種目で予選から好調ぶりをキープ、スーパーファイナルの「小回り急斜面不整地」ではギャラリーを沸かせる圧巻の滑りを披露し、種目別2位をマークした。

昨年、女子総合8位だった勝浦由衣は19位、昨年25位だった撫養いづみは29位と、ともにスーパーファイナルへの進出こそかなわなかったが、若々しく迷いのない滑りで、会場を沸かせた。

多くのメンバーの活躍によって幕を閉じたヘッドデモチームの全日本スキー技術選だが、そこから得られた収穫はとてつもなく大きかったと言えるだろう。デビュー2年目にして武田竜と優勝争いを演じた奥村駿を筆頭に、ヘッドデモチームには力みなぎるフレッシュな若手がそろっている。アルペン競技をベースにもつ選手や、ジュニア技術選から上がってきた選手など、そのタイプもさまざまだ。彼らは「HEAD YOUNG GUNS」として、今後のスキーシーンを牽引してくれるに違いない。

第60回全日本スキー技術選において、HEADチームは スーパーファイナルに8人(男子6人、女子2人)を送り込んだ。決勝を17位で通過した長沼將馬はスーパーファイナルの一種目目で負傷し、惜しくも途中棄権したが、残った7人は、彼の思いを胸に、持てる力のすべてを出し切って戦った!

奥村 駿

競技で培った深いターン弧と後半の走り、特に整地種目では脚部のストロークを長く使えるのが奥村駿の持ち味だ。月山プロスキースクールでレッスン活動にも携わっており、不整地種目でも強さを発揮できる。HEAD YOUNG GUNSの中心的存在として、さらなる飛躍が期待される

山田椋喬

奧村俊とともにHEAD YOUNG GUNSの中核を担う山田椋喬。生真面目な性格ゆえか、なかなか自分を出し切れず悩んだ時期もあったが、一昨年の36位、昨年の20位、そして今年は男子総合13位と順調に成績を伸ばしている

兼子 稔

突出した種目はなくても、総合的ポイントではきっちりと上位につけている巧みな試合運びはベテランならでは。彼の本領からすれば男子総合19位はまだまだ限界点ではない。HEAD YOUNG GUNSへも大きな刺激を与えたはずだ

尾﨑隼士

「良い滑りをすれば順位はついてくる!そのためにはまず自分が納得する演技を積み重ねること」と語っていた尾﨑隼士。「小回り・フリー急斜面ハードパック」では281ptのハイスコアをマークした。雪質変化への順応性が高いのも彼の長所だ

辻村友寿

スーパーファイナルの「小回り急斜面不整地」では、283ptというスコアで種目別6位を記録。予選、決勝では種目ごとのスコアのばらつきに苦しんだものの、決勝の「フリーマテリアル規制急斜面ナチュラル」では280ptで種目別3位となるなど、ここ一番の爆発力もある

川端佑沙

全ての種目で高ポイントを出せる抜群の安定感とシャープな切れと走り。昨年記録した自己最高順位4位には及ばなかったが、川端佑沙はまだまだ進化を止めていない。来シーズンはまた優勝争いに絡んできてほしい

渋谷潤子

昨年に続き、不整地種目での素晴らしいパフォーマンスは健在。常に攻める姿勢の滑りを表現し、HEAD YOUNG GUNSに刺激を与えている存在だ。女子総合9位という成績は、昨年の順位を更新しているが、まだまだ上位を狙える選手のはずだ

写真:黒崎雅久、渡辺智宏、近藤ヒロシ /文:近藤ヒロシ