ターン前半の深い内傾角を手に入れろ!
レッスン
鋭くスキーが走るターンを武器にトップスキーヤーの仲間入りを果たした奥村駿。その滑りを特徴づけるのは、ターン前半の身体の深い傾きだ。ターン前半に深く傾くことで、どんな滑りが実現するのか? そして、深く傾くためには、どんな運動が必要なのか?その答えを、プルークからひもといていく。
ターン前半の深い内傾角が大きなスキーのたわみと後半の走りにつながる
ターン後半に鋭くスキーが走る滑り。そんな滑りにあこがれている方にめざしてもらいたいのが、ターン前半に深い傾きを作ることです。そうすると、スキーを大きく角づけすることが可能になり、大きく角づけされたスキーは、そのぶん大きくたわむので、ターン中盤のマキシマムに向けて、より大きなスキーのたわみを作っていくことができます。ターン中盤から後半にかけて、そのたわみをタイミング良く解放していくことで、スキーの鋭い走りを生み出すことができるというわけです。
ターン前半に深い傾きを作るためのポイントは、「滑走面に対して垂直に、まっすぐな軸で立つ」ことです。滑走面に対して垂直に立つことで、スキーの面に真上から重さを乗せることが可能になり、より効率的にスキーをたわませることができるからです。
ターン前半に作った軸をうまく利用して滑るためのポイントは、「肩と腰のラインを、つねに斜面と平行に合わせる」ことです。ターン前半は内肩が下がり、中盤では両肩が平行に、そしてターン後半では外肩が下がるように肩のラインを使っていくと、ターン中の身体の傾きをうまくコントロールすることができるようになります。
ターン前半のポジションを作るために
プルークスタンスで前半の1本の軸を作る
ターン後半、外スキーに重さを乗せてターンを仕上げ、その状態から谷スキーの角を切りかえ、谷脚に重さを乗せながら身体を傾けていきます。上体がターンの内側にしっかりと入り、外足と内肩を結ぶまっすぐな軸を作ることがポイントです。中盤以降は外スキーに荷重を移し、ターンを確実に仕上げていきます。
シュテムターンで前半の1本の軸を作る
切りかえで谷脚の支えを利用して外スキーを山側に開き出していきます。このとき、前のターン後半で外傾した上体の姿勢を保ったままシュテム動作を行なうことがポイントです。その結果として、上体が次のターンの内側に残り、ターン前半にまっすぐな身体の軸を深く傾けたポジションを作ることができます。
谷脚切りかえで1本の軸を作る
実践に近いスピードのなかで谷脚で切りかえ、ターン前半の外スキーと上体の位置関係を作っていきます。ターン後半、しっかりとターンを仕上げ、そのときの上体の外向傾を保ったまま、谷脚1本で切りかえ、外スキーを山側に置いていきます。ターン後半の上体の外向傾を崩さずにポジショニングすることがポイントです。
体軸を傾けて滑るために
やじろべえの意識で1本の軸を傾ける
頭から足元までをまっすぐな軸として意識し、その軸を左右に傾けてターンを連続していきます。連続ターンになると、どうしても外スキーに乗りたくなりますが、それは上体の外傾につながるので注意してください。ターン全体をとおしてまっすぐな軸を保ちながら傾き、スピードや斜度によって異なる傾きの量を身体に染み込ませていきます。
ターン前半、内脚1本でターンする
ターン前半は内脚1本で滑り、中盤から後半は両スキーでターンを仕上げていきます。トレーニング4で覚えた軸を傾ける感覚に、ターン後半から次のターン前半の流れのなかで身体の重心を谷側に移動していく動きを加えることができます。的確に身体の軸を傾けながら、つねに谷側を意識して動く感覚を身につけることがポイントです。
外脚1本でターンする
切りかえで外脚から外脚への乗りかえ、外スキー1本で連続ターンしていきます。ポイントになるのは、長い軸をターン全体をとおして保ち続けること。外脚荷重の意識が強くなりすぎると、どうしても外傾してしまいやすいので注意してください。雪面から受ける圧や抵抗とうまくバランスを取りながら、長い軸を保って連続ターンしてください。
ストックを身体の前に持って
胸の前にストックを横に持ち、その傾きをチェックしながら滑ります。ターン前半は内側が下がり、中盤は平行、そして後半では外側が下がるというストックの傾きの変化を、身体の傾きや向きをコントロールすることで作っていきます。ターン前半は長い軸を積極的に傾け、中盤から後半では外脚荷重でしっかりとターンを仕上げることを意識して行なうことがポイントです。
奥村駿(おくむら・しゅん)
1996年2月2日生まれ、京都府出身。小学4年からアルペンレースを始め、中学は北海道にスキー留学。小樽北照高校に進み、インターハイでGS2位、SL4位を記録。全日本ナショナル・ジュニアチームにも在籍し、世界ジュニア選手権など、国内外のレースを転戦。第59回全日本スキー技術選手権大会に初出場し総合15位。前回の第60回大会では総合2位に躍進。今もっとも注目される気鋭のスキーヤー