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サロモンが継承するジュニア育成への想い

イベントその他

レーシングにデモとジュニア育成に力を注ぐサロモン。世界レベルのスキーヤー、スノースポーツに携わる人材を輩出し続ける根底にある想いとはどんなものなのか。春の野沢温泉で行なわれたレーシングキャンプを取材した。

絶好のコンディションの下、楽しく充実した2日間

恒例となっているジュニアを対象としたサロモンのレーシングキャンプ。今春は富良野スキー場と安比高原スキー場の2会場でも開催され、野沢温泉スキー場が締めくくりとなった。「SALOMON」のビブをつけた参加者が目指すのは、スキー場最上部のやまびこエリア。今回はそのうちのBコースを貸し切るという、なんともぜいたくなキャンプになった。美しく整えられたバーンにはゲートが2セット設けられ、スタッフやゲストコーチたちによってさらに完璧なコンディションに仕上げられた。ここで2日間、ジュニアレーサーたちが今シーズンの仕上げ、来シーズンに向けての課題に取り組む。

ハイシーズン並みの雪が残った野沢温泉スキー場

今回のキャンプには、元ワールドカップ選手で現在は女子ナショナルチームでコーチを務める蓮見小奈津と石川晴菜を招聘。加えて現役ワールドカップレーサーの若月隼太、野沢温泉出身でスキークロスナショナルチームの笹岡蒼空もゲストとして参加した。各日の募集上限は40名。レーシングキャンプとしては少人数だが、これは春のバーンコンディションやトレーニング効率、目的意識の共有など、キャンプのクオリティを優先するサロモンの姿勢の表れだ。

ゲストコーチ陣(左から石川晴菜、蓮見小奈津、若月隼太、笹岡蒼空)

現役2人によるデモ滑走を皮切りに、小学生組と中・高生組に分かれてトレーニングがスタート。ゴール地点では各コーチのアドバイスを熱心に聞いたり質問攻めにしたり、ジュニアたちも今回のキャンプを貴重な機会と受け止めていた。

お待ちかねの昼食はコースの下にある休憩所で、スキー場によるケータリングサービス。ここにもサロモンの取り組みが表れている。一般的にやまびこエリアで昼食をとろうとすると、ゴンドラ山頂駅まで滑り降りる必要がある。これに食事の時間を加えると往復1時間以上はかかるだろう。この時間の無駄を省き、弁当ではなく温かい食事でエネルギーを補給し、休憩をしっかりとることが午後のトレーニングにとっては重要という考え方だ。

初日はGSゲートでのトレーニング

GSゲートによる雪上トレーニングのあとは、若月や蓮見、石川が実際に行なっているメニューでのコンディショントレーニング。若月はジュニアたちに交じってメニューをこなし、身をもって現役ワールドカップレーサーの身体能力を披露していた。2日目はSLゲートでのトレーニングが行なわれ、ゲストコーチからの励ましの言葉で締めくくられた。豊富な積雪と好天の下、参加者全員がスキーの楽しさや自然とのふれ合いを満喫できたようだ。

若月や蓮見らが実際に行なっているメニューでコントレ

育成を主眼とするサロモンチームのプログラム

参加者が見つめる中、現役ワールドカップ選手の滑りを披露する若月

富良野、安比高原、そして野沢温泉で開催されたレーシングキャンプは、サロモンチームプログラム(STP)というサポート体制の一環として行なわれた。STPではプログラム登録選手を対象に、雪上キャンプ(オープンの場合もあり)に加えてオフシーズンの陸上トレーニング、チューンナップセミナーなど、年間を通してさまざまなイベントを開催してジュニアの育成にあたっている。少なくとも30年前、あるいは40年前から続いているサロモンのサポート体制を、さらに発展させたのがSTPだ。

経験豊富な原田彦コーチは中・高生組を熱血コーチング

プログラムの大きなミッションは、スキーを人間形成につなげ、次世代のスキーヤーを育てること。ここで言うスキーヤーとは成績を出せる「選手」だけではない。速くなる、上手になるなどの目的意識を持てることに加えて、仲間とのコミュニケーション能力を養える、自然の営みに触れられるなど、スキーはさまざまな経験ができるスポーツだ。それを魅力と感じるスキー大好き人間を育てる。そして「サロモンファン」「サロモンファミリー」を広げ、選手という一線を退いてもスノースポーツを愛し続け、何らかの形で携わり貢献できる人材を育てること。その環境を作ることがメーカーとしてやるべきことだと考えている。このような思考や活動をサポートの柱にすることは、結果的にサロモンというブランドの魅力にもつながっている。

ハキハキと元気なジュニアが多かった今回のキャンプ

サロモンのこの考え方、やり方は「強化」ではなく「育成」と言うべきものなのだろう。そのモデルケースが、サロモンジュニアで育ち、アルペンナショナルチームからトリノオリンピックにも出場した吉岡大輔だ。吉岡は技術選でも優勝3回と頂点を極め、引退後は技術選のジャッジやスキースクールでの指導を行ない、講師としてキャンプにも参加してきた。

その吉岡は技術選初優勝の際のエピソードを、今でも鮮明に覚えているという。「僕が7点リードで迎えた最終の不整地種目でのこと。相手はコブの名手の丸山貴雄さんでした。スタートに向かおうとする僕に、サロモンのコーチが『7点じゃ足りないかもしれない。少なくとも15点は差をつけておきたかったね』って言うんです。普通なら『お前ならイケる』だと思うんですが……。でもその言葉のおかげで逃げ切れたと思っています」。

これがほかの選手だったらまた違った声がけをしただろうが、ジュニア時代から育ててきた吉岡の繊細かつ負けず嫌いな性格を知った上で、彼の「なにくそっ」を引き出したのだった。技術面だけではないサロモンのサポート体制が表れているエピソードだ。

自由な発想と個性を尊重するサロモンならではの文化

リアエントリーのレーシングブーツ、モノコック構造のスキーなど、さまざまなイノベーションをもたらしたサロモン。その物づくりに対する自由な発想は、育成の場でも発揮されている。

サロモンジュニアで育ってきた蓮見と石川

野沢温泉のキャンプでコーチを務めた蓮見は「今回のキャンプのコーチングは、『こうしなくてはいけない』ことはなく、それぞれの個性を伸ばすことを大切にしながら自由にやらせてもらいました。私もそうやって育てられてきましたから」と話す。同じく石川は、「良い意味で放任主義なところがサロモンにはあると思います。ジュニア時代から型にはめられる感覚はなくて、自分なりに工夫して何かを見つけてきました。それをサロモンが応援してくれたという感じです」と言う。サロモンでは、主体性を重んじ自由な考え方を許容することがずっと以前から文化になっていたことがわかる。

SLでも何本も滑りを披露した若月

また、小学生時代から自身もサロモンキャンプに参加していた若月は、今ではジュニアたちに憧れられる存在に成長。「キャンプではいろいろなものを感じさせてもらったので、今度は僕が何かを伝えられればと思っています。技術的なことよりも気持ちの面で、勝負の楽しさや成長していくことの喜びを、頭ではなく感覚的に養ってほしいですね。学校では教えてくれないこともスポーツでは学べるので、スキーをとおして感じたこと、学んだことを最終的にはスキー以外でも生かしていってほしいと思います」と、後輩たちへの思いを語ってくれた。

レーシングから始まった育成への思いはデモへと広がり、すでに花開いている。さらにはジャンルを問わず、その根を伸ばし続けていくことだろう。

スノースポーツに携わり続けるファミリーの創出を見つめ続ける

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