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第61回 全日本スキー技術選 予選1日目 2024.3.7 REPORT

ベテラン勢の安定感とチャレンジングな若手の健闘がしのぎを削った予選初日。
男子は武田竜、女子は春原優衣が首位発進!

第61回を迎えた全日本スキー技術選手権大会は、久々となる北海道ステージで開催された。会場となった「ルスツリゾート」は高緯度地域ならではの気候条件により、3月とは思えないハイシーズン並のコンディションで選手たちを迎えてくれた。

予選初日の種目は「小回り 中急斜面 不整地」と「大回り 急斜面 整地(ナチュラル含む)」の2種目で、前者がジャイアントコース、後者がエリートコースにて行なわれた。雪が降りしきる中、時折日差しが覗いたりと、やや目まぐるしい変化があったものの冬らしい天気。冷えこみも終日キープされたため、適度に締まった粉雪がコース上を覆い、最高のバーン状況での戦いが繰り広げられた。

「小回り 中急斜面 不整地」は、エリートコースの左側にコブのラインが複数作られたが、今回のコブは人工とは言え、いわゆる「ラインコブ」というよりは、むしろ自然コブに近いプロフィールのコースに感じられた。選手が選べるラインも6~7ラインはあったようで、どのコースを選ぶかによって演出や狙いも明確に変わってくる「戦略性の高い」バーンに仕上がっていた。しかも低い気温により表面が硬く締まり、見た目以上の難易度となっていたようだ。

男子でこの種目トップとなる276ptをマークしたのは原田侑駿(学連)。あえてギャップの深いラインを選択し、力強くも正確な雪面コンタクトを表現してギャラリーを沸かせた。続く2位は274ptをマークした石水克友(岐阜県)、273ptの武田竜(北海道)が3位で続く。元モーグル選手でありワールドカップなどへの出場経験をもつ桑原竜司(福島県)は抜群の落下耐性とダイナミックな運動をアピールして272ptの4位。同点で日本を代表するテレマーカーでもある若手の穴田玖舟 (北海道)や、須川尚樹(北海道)、徳竹剛(長野県)、 星和弘(新潟県)、大山楽人(東京都)らが並ぶという接戦となった。

男子「小回り 中急斜面 不整地」種目1位/原田侑駿(学連)
男子「小回り 中急斜面 不整地」種目3位/武田 竜(北海道)
男子「小回り 中急斜面 不整地」種目4位/桑原竜司(福島県)
男子「小回り 中急斜面 不整地」種目4位/穴田玖舟 (北海道)

女子はベテラン勢の健闘と若手の台頭ぶりが印象的だった。種目トップに立ったのは、圧巻のパフォーマンスで275ptをマークした元モーグル選手の中山有紗(愛知県)だが、同点首位で切れ味鋭いターンを見せた栗山未来(新潟県)、3位には274ptの春原優衣(長野県)が喰らいつく。4位には大場朱莉(宮城県)野々山颯絵(東京都)渋谷潤子(石川県)、岡樹香(北海道)、千葉瑠乃(北海道)、道心絢 (北海道)、渡邊岬(新潟県)らが続き、男子に負けない激戦の様相を呈した。

女子「小回り 中急斜面 不整地」種目1位/栗山未来(新潟県)
女子「小回り 中急斜面 不整地」種目3位/春原優衣(長野県)

ジャイアントコースで行なわれた「大回り 急斜面 整地(ナチュラル含む)」も、終日の冷え込みによって雪面が締まり、スキーのリバウンドを得やすいグッドコンディション。そんなバーン状況をフルに生かしてトップとなったのが川上勇貴(群馬県)と奥村駿(京都府)の2人で、ともに圧巻のスピード感とスキーの走りを見せつけて277ptを叩き出した。3位には森田昂也(東京都)、佐藤栄一 (新潟県)が275ptで並び、274ptの武田竜(北海道)、半田翼(長野県)、長沼將馬 (秋田県)らが僅差で追う展開となった。

男子「大回り 急斜面 整地」種目1位/川上勇貴(群馬県)
男子「大回り 急斜面 整地」種目1位/奥村 駿(京都府)
男子「大回り 急斜面 整地」種目3位/森田昂也(東京都)
男子「大回り 急斜面 整地」種目3位/佐藤栄一 (新潟県)

女子は「小回り中急斜面不整地」で72位と振るわなかった弓野華緒(北海道)が274ptで首位。同じく「小回り中急斜面不整地」63位の渡邊渚 (新潟県)と春原優衣(長野県)、大場朱莉(宮城県)が273ptで同点2位。続いて西村紗英(長野県)が272ptで5位につけ、1点差の271ptで野々山颯絵(東京都)、弥永奈々(滋賀県)が並んだ。

女子「大回り 急斜面 整地」種目1位/弓野華緒(北海道)
女子「大回り 急斜面 整地」種目2位/渡邊 渚 (新潟県)
女子「大回り 急斜面 整地」種目5位/西村紗英(長野県)
女子「大回り 急斜面 整地」種目6位/野々山颯絵(東京都)

予選1日目で総合首位に輝いたのは、男子が武田竜(北海道)、女子が春原優衣(長野県)。女子では、ディフェンディングチャンピオンの渡邊渚(新潟県)は39位という結果に甘んじたが、まだ初日であり、ここからの巻き返しに期待がかかる。また、けがから復活した野々山颯絵(東京都)の好調ぶりを見せており楽しみだ。男子は総合5連覇を狙う武田竜の背後に、川上勇貴(群馬県)が2位、穴田玖舟(北海道)が3位で迫っている。若さという怖いもの知らずの武器を持っているだけに、絶対王者の武田といえどプレッシャーを感じるかもしれない。

明日は予選2日目。ダイナミックコースでの「フリー 中急斜面 整地」と、ジャイアントコースでの「小回り 急斜面 整地」の2種目が開催される予定だ。

写真:黒崎雅久、鈴木馨二(White Depot)/ 文:近藤ヒロシ