勝つために生まれたスキー、レッドスター「iシリーズ」の真価
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シフリンが、ブラーテンが、大舞台で快挙を成し遂げ、その性能の高さは実証済み。勝つために生まれたレーシングスキー「レッドスター」。そのテクノロジーは広く一般モデルにまで引き継がれているという。この静かな乗り心地、爽快な走りは、どのように生み出されるのか? レッドスター「iシリーズ」に秘められた、テクノロジーに迫る!
ワールドカップで勝つために生み出されたレッドスター
オリンピックイヤーの今季は、アトミックにとって、たび重なる“快挙”に沸いたシーズンだった。女王、ミカエラ・シフリンがSLで悲願の金メダルを獲得。男子では、一度は引退したルーカス・ブラーテンがGSで金メダルに輝き、見事な復活劇を見せた。さらにワールドカップでは、同じくシフリンが前人未到の110勝を達成。そして女子の実力者、ソフィア・ゴッジャもスーパーGで初の種目別優勝を果たした。
まさに、偉業に次ぐ偉業。その極限のパフォーマンスを支えたものは、何だったのか? 今回は、トップアスリートの数々の勝利に貢献してきた名機「レッドスター」の最新テクノロジーを掘り下げていこう。

レッドスターとともに技術選のトップシーンで活躍する片岡嵩弥
レッドスターとは、ひとことで言うなら、「ワールドカップで勝つために生み出されたスキー」。その開発には、ブラーテンを筆頭に、多くのワールドカップレーサーが深く関わってきた。そこに注ぎ込まれているのは、過酷なレースでコンマ1秒を制するためのテクノロジー。ハードな条件でも安定し、しなやかにたわみ、強い力で押し出されるように加速していく──このレース由来のテクノロジーが、レーシングモデルだけではなく、ゲレンデを滑る一般ユーザーに向けたモデルにまで、しっかりと落とし込まれているのだ。
そこで今回は、日本オリジナルの「iシリーズ」に注目。そのエキスパートモデル「S9iレボショックS」に搭載された3つのテクノロジーから、性能をつまびらかにしていこう。
3つのテクノロジーできれいにしなる、鋭く走る

まず、レッドスターといえば、非常に安定性の高い“静かな乗り味”が最大の特徴だ。それを可能にしているのが、トップシートに搭載された、キーテクノロジー「レボショック」。エラストマーというゴム状のシートに、スチール製のプレートが埋め込まれたもので、見た目にもインパクトのあるこのテクノロジーが、滑走中に生じる振動を吸収してくれるのだという。ナショナルデモンストレーターの片岡嵩弥は、自らが感じているレボショックの効果を、次のように話す。
「今のスキーはトップがしなりやすく、ターンの始動がしやすいという特徴がありますが、そこにはトップがバタつきやすいという側面もセットでついてくる。レボショックは、そこをしっかり押さえてくれるので、スキーの挙動が安定しやすい。とてもスムーズで、クリーンなターンを可能にしてくれるスキーだと思います」
レースでは、この安定こそがタイムに直結する。では、ゲレンデを滑る一般ユーザーにとって、どんなメリットがあるのか?
「日本のゲレンデがワールドカップのようなアイスバーンになることはまずありませんが、逆に僕が一番、感じているのは、荒れたバーンでの安定性が非常に高いこと。スピード域が上がれば、ちょっとした起伏でも受ける衝撃は大きくなりますが、そこを気にせずに踏み込んでいけるのは、とても心強いと思う。僕らのような選手だけではなく、大会や検定に挑戦する一般ユーザーにとっても、これは大きな強みになるのではないでしょうか」

レッドスターの真価は、これだけにとどまらない。新しく搭載された「I12 GW」ビンディングプレートは、特殊なビスの留め方を採用し、前後方向に可動する仕組みになっている。軟らかいゴム素材が埋め込まれている、中央の「フレックスラバーゾーン」との相乗効果で、スキーと一体になってしなやかにたわみ、トップからテールまでしっかりと雪面を捉えてくれるという。

さらに、そのたわんだスキーからの反発をしっかりと走りにつなげてくれるのが、かかと付近に搭載された「カーボンブースト」。最も圧がたまる部分に、カーボン素材を使って剛性を持たせることで、強い力で一気に弾くような推進力が生まれるという。「しっかりたわんだスキーが、ものすごいスピードで戻ろうとする。このトランポリンのようなアクションを使うことで、次のターンに向けてのポジションの入れ替えを素早く行なうことができます」と片岡。この前へ前へと推進していく動きは、大会でも検定でも、重要な要素。このテクノロジーが、大きな助けになることは間違いない。

寒くても、暖かくてもフレックスとパフォーマンスを維持
ブーツに搭載された、新たなテクノロジーにも注目したい。ここで紹介するのは、スキーと同様、トップレーサーの意見を取り入れて設計されたレーシングブーツ「TR」と、より細身に設計された「STR」。生まれ変わったのは、シェルに採用されているプラスチック素材。これまで以上に温度変化に強い「フォーミュラ・プラスチック」が採用されている。
コンマ1秒を争うレースの世界では、気温によってブーツのフレックスが変化してしまうと、そのパフォーマンスに大きな影響が生じる。もともとレッドスターのブーツには、他社と比べても温度変化に強い樹脂素材が用いられてきたが、この新素材はその性能をさらに上回るものだという。

特に最近では、温暖化により気温が上がることが多く、プラスチックがより軟らかくなりやすい状況にある。その中でもフレックスを維持できれば、スキーヤーは自信をもって普段通りのパフォーマンスを発揮できるだろう。それはレースに限らず、高速域でのパフォーマンスが求められる大会などの場で、強い味方になってくれるはずだ。
