名門ブリザード、復権への胎動
ギア・アイテム
Make a comeback to first group
スキー大国・オーストリアの名門ブランドが復権に向けて動きを加速させている。妥協のない安定感。クラフトマンシップが詰まった品質は世界が認めるところ。ラインナップを拡充して迎える来季の動向から目が離せない。国内市場における主力シリーズは、代名詞とも言えるファイヤーバード。満を持して投入される上位3機種をクローズアップする。

歴史に名を刻む名レーサーたちの足元を支えたブリザード
1945年、オーストリアのミッタージルという村で、創業者のアントン・トニ・アルンシュタイナーが自身の木工工房で最初のスキーを製作。1953年、スキー界に旋風を巻き起こすという思いから「BLIZZARD(ブリザード)」という名称を正式に登録したスキー大国の名門ブランドは、振動吸収性に優れたメタルを組み込んだスキーでアルペンレース界を席巻してきた。

インカレ入賞の実績を持つプロスキー教師、伊藤匠の足元もブリザード
古くは「皇帝(カイザー)」と呼ばれたフランツ・クラマー(オーストリア)、ワールドカップで5回の総合優勝を記録したマーク・ジラルデリ(ルクセンブルク)が愛用。1999年にベイル(アメリカ)で開催された世界選手権では、女子ダウンヒルで表彰台を独占し、世界にその名を知らしめた。また、2014年のソチ冬季オリンピックでは、マリオ・マット(オーストリア)が優勝候補のマルセル・ヒルシャー(オーストリア)を抑え、五輪のアルペン競技では史上最年長(34歳)で金メダルを獲得。歴史に名を刻んだ名レーサーたちの足元には、ブリザードがあった。
技術的には、温度変化による伸縮率が異なる2種類の金属を合わせ、雪温の変化に対して最適なベンド形状を作り出すシステム『サーモ(Thermo)』を1980年から投入。これにより、ワールドカップのダウンヒルで一時代を築くこととなる。また、80年代後半には、ビンディング下に振動吸収機能を見た目にもわかる形で搭載。ワールドカップ通算16勝を挙げたペトラ・クロンベルガー(オーストリア)の躍進を支えた。

往年の名デモ、山田誠司もブリザードを愛用するひとり
レースシーンでの実績からすると近年、日本の国内市場では鳴りをひそめている感のある同ブランドだが、創業から80年がたった今も、ミッタージルでさらなる進化をめざして開発を進めている。ジャンルを問わず、職人たちがエントリーからエキスパートモデルまで一貫して「妥協のない安定感」という信念で1台1台スキーを製造。最近はフリーライド界で目覚ましい成果を残し、欧米を中心にふたたび脚光を浴びている。
1モデル1サイズごとにフレックスを最適化する職人魂
26/27シーズン、国内市場で展開される主要なカテゴリーは、レース、オンピステ、オールマウンテン、フリーライドの4つ。レース16機種、オンピステ28機種、オールマウンテン7機種、フリーライド17機種がラインナップされている。

密度の異なる木材をブレンドして配置することでフレックスを最適化
すべてのスキーに共通しているのは、カテゴリーに応じてフレックスを最適化し、特別に設計されたウッドコアでつくられていることだ。これはトゥルーブレンド・ウッドコア・テクノロジーと呼ばれ、異なる密度を持つ木材をセレクトし、それらをブレンドして配置する独自の技術。1モデル1サイズごとにソフトフレックスゾーン・ミドルフレックスゾーン・ハードフレックスゾーンと場所によって軟らかさを変えることでフレックスを最適化し、スムーズでバランスの良いフィーリングを実現するウッドコアを形成している。

特別に設計されたウッドコアを囲む構造もカテゴリーに応じて設計
また、ウッドコアを囲む構造も、それぞれのカテゴリーに特化。レースタイプのスキーでは、3枚のチタナル(メタル)をファイバーグラスやラバーと組み合わせて芯材をサポートすることで、最適なフレックスバランスを維持しつつ、振動吸収力や安定感を向上させている。

精密なフィッシュボーン構造を採用したWC仕様のランニングベースを搭載
求めるターンサイズに応じて選べるフラッグシップ3機種

そんなブリザードが、ここ数年注力してきたのが、ゲレンデで使えるレーシングスキーだ。このカテゴリーをレースタイプと位置づけ、高速域でもターン性能の高いスキーの開発に取り組んできた。そのフラッグシップとなるのが、ファイヤーバードのレースタイプ。ロング、ミドル、ショートとターンサイズに応じてLT、MT、SRCの3機種がそれぞれラインナップされている。
LTは、滑走距離の長いゲレンデを爽快に滑ってもらいたいというのがコンセプト。MTには、これまでよりも少し長いスキーで楽に滑走してほしいという願いが込められているという。ショートターンに特化した高機能マシンを求めるならば、SRCが好適。いずれもFISカテゴリーのレーシングモデルよりもしなやかに仕上がっているので、快適な滑走が楽しめるだろう。スピード滑走のなかで、切れと安定感を求めるのであれば、ファイヤーバードのレースタイプは有力な選択肢となりそうだ。
往年の名デモと新進気鋭の若手注目株が来季注目の3機種を乗り比べ!

山田 今日は得意なターンサイズが違う3モデルを乗り比べたわけだけど、素直にどんな印象を持った?
伊藤 FISモデルではないので、踏んでも戻ってこないだろうと思って乗ったら、軽くて扱いやすいのに、すべてのスキーにしっかり張りがあって滑りやすかったです。誠司さんは?
山田 どのスキーも、想像していたよりもしなやかで、ソフトな印象。雪が良かったこともあるけれど、とても楽に滑れて楽しかった。
伊藤 3台のなかで、一番好みだったのはLT。自分はスピードに乗ったロングターンが得意なのですが、とにかくブレない。押したときにしっかり食い込むし、跳ね返りもちゃんとある。ずらしてもちゃんと反応してくれて、なんでもできる一台だと思いました。
山田 LTは、スピードが上がってもエッジがしっかりかんでまわってくるから、すごく楽だよね。イメージよりもトップが入ってくるので、解放するだけでスキーが走ってくれる。メタルの重さや扱いづらさはまったく感じなかったな。
MTはオールマイティで、いろいろなシチュエーションを楽しめる(山田)

伊藤 MTはどうでした?
山田 ショートも含めて、オールラウンドに滑りたい人は、MTがいいと思う。一番オールマイティで、一台でいろいろなシチュエーションを楽しめる。ゆったりめの弧も気持ちよく描けるし、ターンが小さくなってもスキーがしっかり動いてくれるので滑りやすい。なんでもできる一台だね。
伊藤 MTは、カラーリングがカッコイイですよね(笑)。滑走性能もミドルターンはもちろん、今風のカービングショートもしやすい。普段履いているSLスキーに近い感触がありました。
SRCは軽くてよくまわるから、一日中履いていられる(伊藤)

山田 SRCは?
伊藤 一般スキーヤーに広くおすすめしたい一台ですね。まず軽い。それなのに張りもしっかりあって、返りもある。軽くて、よくまわるから、一日中履いていられますよね。レジャースキーに最適だと思います。
山田 それほどスピードを出さずにカービングを楽しみたい人に最適だよね。僕らは高速域で滑るから、もう少し長くて、Rも緩くて、エッジがかんだときにまわってくるスキーのほうが楽しめるけど、スピードをそこまで求めないならば、とても楽に滑れるグッドスキー。初〜中級の人がカービングの操作や感覚を身につけていくのに適していると思う。プライズテスト合格や技術選出場をめざすならば、MTのほうが個人的にはおすすめ。
伊藤 それぞれ個性がちゃんとあるので、技術レベルや目的に応じてセレクトすれば、楽しみがグンと広がりそうですね。