スピードブルー躍動
技術選
HEADチームのスーパーファイナル
技術選における一大勢力となっているHEADチーム。幅広い世代にわたって多くの選手を擁し、毎年大会を盛り上げている名門チームだ。今年もその存在感は抜群。とくにトップランカー奥村駿と次世代のスター候補生の躍動が大きな話題となった。鮮やかなスピードブルーのスキーを武器に戦ったスーパーファイナル進出者たちの戦いを振り返る。
王者を追い詰めた奥村駿とニュースターの誕生
技術選シーンでも有数の層の厚さを誇るHEADチーム。経験豊かなベテラン勢をはじめ、実績十分の中堅、将来有望な若手と話題に事欠かないトップチームだ。
今大会、チームは男女合わせて9人の選手をスーパーファイナルに進出させた。しかもそのメンバーは、若手〜中堅にあたる選手たちであり、個々の実力から見ても、表彰台争いに絡む可能性を秘めたトップ選手ばかりだ。
男子総合2位 奥村 駿
昨年、準優勝の奥村駿は、予選から好調をアピールし、決勝では4種目中2種目で首位を記録。また、スーパーファイナルの最終種目「フリーショートターン/リズム変化(急斜面/整地・ナチュラル含む)」では、武田竜と並ぶ282点をマーク。この日に限って言えば、男子総合3位の関原威吹と並んでトップの出来であった。
「速さのなかでもターンの深さを表現できている滑りに点が出ていたので、そのあたりを意識しました。最後の種目は昨年288点を出した種目なので、それを上回れるようがんばります」
そう語っていた奥村は、結果的に男子総合2位を獲得。あと一歩で頂点には立てなかったが、そのターンスピードの速さや鋭く正確なエッジングで、演技のたびにギャラリーをうならせた。昨年に続いての2位という結果は納得のいくものではなかっただろうが、改めて高いポテンシャルを周囲に知らしめたことは間違いない。
男子総合5位 山本柊吾
チームのなかで奥村に次ぐ5位という記録を残したのが、若手筆頭株の山本柊吾。予選を13位で通過した山本は、決勝で7位に順位を上げてスーパーファイナルに臨んだ。圧倒的なスキーの切れと走りを武器にする彼は、「ロングターン/スペースレギュレーション(急斜面/整地・ナチュラル含む)」では、281点で種目別1位をマーク。他の2種目でも3位、4位という安定感を見せ、男子総合5位という記録を残した。とくにスラロームのゲートをイメージして滑ったという「ミドル〜ショートターン/スペースレギュレーション(中急斜面/整地・ナチュラル含む)」では、優れたスピード耐性や巧みなスキーコントロール能力を存分に発揮。圧巻の滑りを見せてくれた。彼の滑りが今後どれだけ進化するのか、楽しみは尽きない。
男子総合6位 山田椋喬
自己最高順位となる男子総合6位に入った山田椋喬は、今回大きくジャンプアップを遂げたひとり。トレーニング環境を変え、雪上に立てる時間を大幅に増やして臨んだ今大会、彼は予選を7位で通過して好調ぶりをアピール。決勝の「フリーロングターン/ウェーブ(中急斜面/整地・ナチュラル含む)」では種目別1位となる会心の滑りを見せた。
「スピードを殺さずにゴールまでつなげていくことを考えて滑りました。コース上の2つ目のウェーブでは飛ぶくらいの気持ちでいったのが良かったと思います」
不整地種目では26位と点数を伸ばせなかったものの、整地種目では抜群の安定感で暫定5位に順位をアップ。スーパーファイナルでは、決勝のようなスーパーランはなかったものの、上位を死守することに成功し、次回への足がかりとした。
鋭いエッジングを武器に戦ったHEADガールズたち
HEAD女子チームからスーパーファイナルに進んだのは3人。上位常連となった野々山颯絵、勝浦由衣に加えて、成長著しい千葉瑠乃が最終日を戦った。
女子総合5位 野々山颯絵
大会初日から絶好調だった野々山颯絵は、予選を3位で通過すると、決勝でも堅実に点数を積み、暫定順位8位でスーパーファイナルに進出。「ミドル〜ショートターン/スペースレギュレーション(中急斜面/整地・ナチュラル含む)」では、種目別首位となる279点をマークする。
「ミドルからショートへの変化で、急激な負荷をもらってしまうとミスするので、シャープななかにもソフトな雪面タッチを心がけました」
最終的に野々山は、順位を3つ上げて女子総合5位。自己最高位となる成績は、本人に大きな自信をもたらしたことだろう。
女子総合11位 勝浦由衣
予選は12位と、やや出遅れた勝浦由衣は、決勝の「フリーロングターン/ウェーブ(中急斜面/整地・ナチュラル含む)」で3位、得意の「ショートターン/モーグル(中急斜面/不整地)」では2位と上位を猛追。決勝を終えた時点で10位となる。
「フリーでは、ウェーブで飛びそうになって少し慌てましたけど、なんとかうまくまとめることができました。予選のフリーは納得がいかない滑りだったので、ここで調子を取り戻せて良かったです」
決勝が終わって、自分がやりたいことは出せたと満足げに語った勝浦だが、スーパーファイナルでは思うようにスコアを伸ばせず、総合11位で大会を終えた。本来の実力を発揮しきれなかった悔しさを糧に、さらなる飛躍を期待したい。
女子総合15位 千葉瑠乃
女子総合15位には、若手の千葉瑠乃が入った。結果的には予選の11位から順位を落としてしまったが、それでも大健闘と言えるだろう。とくに決勝の「ミドルターン/スペース(急斜面/整地・ナチュラル含む)」で271点をマークし、種目別5位を記録したことは大きな収穫だったはず。スーパーファイナルでは緊張のせいか、やや精彩を欠いた感は拭えないが、躍動感のある切れ味鋭い滑りは賞賛に値するものだった。
HEADチームのニュースターたちが描く未来は期待大
奥村駿の準優勝、山本柊吾という逸材の台頭など、今大会の結果はHEADチームに多くの収穫をもたらした。だが、スーパーファイナル進出を果たせなかった選手のなかにも、チームの将来を担う人材は多くいる。今後の彼らが描いていく技術選の未来とはいったいどのようなものなのだろうか。それがどういうものであれ、HEADチームがこれからのスキー技術の進化に深く関わっていくことだけは間違いなさそうだ。