レッドスターレボショック第二世代と新ブーツTR&STRが登場!
ギア・アイテム技術選
アトミック70周年の革新
アルペンスキー・ワールドカップや全日本スキー技術選手権大会で多くの選手たちが使用するアトミックのレッドスタースキー&ブーツ。2025/26シーズンに向けてフルモデルチェンジするレッドスターシリーズの特徴をレポートする。
高速系種目を中心にアルペンスキー・ワールドカップで21個の勝利を積み重ねているアレクサンダー・オーモット・ギルデ、22/23シーズンのスラローム種目別チャンピオンのルーカス・ブラーテン、そして今や女子戦線の絶対的王者と言えるミカエラ・シフリンなど、錚々たるレーサーが愛用するアトミック。そのレーシングモデルであるレッドスタースキー&ブーツが、25/26シーズンに向けて、フルモデルチェンジされて登場する。
テーマカラーは「レッドテンション」
レッドスタースキー&ブーツに共通するトピックは、アトミックのコーポレートカラーである「赤」の使い方が変わること。スキーの場合、トップとテールの赤が、センター部にかけてマゼンタになるようにグラデーションする「レッドテンション」デザインが採用された。ブーツはシェルの色自体を変更。従来の赤がやはり少しマゼンタ寄りの赤に変更されている。
また、スキーではアトミックを象徴するスターマークの位置がセンター寄りに独立し、アトミックのブランドロゴはテールエンドに横に配置された。ブーツでもスターマークの位置がロアシェル下部の中央よりに移動し、より目立つようにデザイン。そしてアトミックロゴは、ブーツの背面にあしらわれた。
こうしたデザインの変更は、創業70周年を迎えたアトミックが、ブランドリフレッシュを図るために行なったもの。今年2月にオーストリアのザールバッハで行なわれたアルペンスキー世界選手権から選手たちが使っているので、すでに目にした方もいるのではないだろうか。
新レボショックとカーボンブースト
「Redster G9 FIS Revoshock」と「Redster S9 FIS」を頂点とするレーシングモデル、レッドスターシリーズのフルモデルチェンジのポイントは大きく3つ。
ひとつはアトミックスキーを象徴するテクノロジーであるレボショックが、第二世代に進化したことだ。大回転用モデルとなるG9シリーズの多くには「レボショック・レースモジュール」という第二世代のレボショックが搭載される。
これまでのG9シリーズに搭載されていたレボショック・モジュールは、銀色のステンレススチールインサートの下部分にだけエストラマーが配置される構造だった。この構造からステンレススチールインサートの形状をやや細めに変更。あわせてエラストマーを配置するエリアをスチール部分を囲うように広げることで、滑走中のスキーに生じる無駄な振動を吸収。レーシングバーンに刻まれた溝や轍からの振動を効果的に抑え、正確かつ速いターンを可能にしているという。
新たに搭載された「レボショック・レースモジュール」
ふたつ目のポイントは、「カーボンブースト」が採用されたこと。ビンディングのヒールピース下からテール側にかけて、カーボン製のプレートを配置することで足元からテール側にかけての強度を増し、スキーのたわみが戻るときのパワーを増大。ターン後半部分から切りかえにかけて、より鋭くスキーを走らせることを可能にしている。このカーボンブーストも大回転用のG9シリーズを中心に採用された新テクノロジーだ。
カーボン製のプレートを配置した「カーボンブースト」
3つ目のポイントは、「Redster G9 RS REVOSHOCK S」と「Redster S9 RS REVOSHOCK S」の2モデルが、新しくレッドスターのラインナップに加えられたことだ。今まで「RS」という名でラインナップされていたマスターズレーサーや技術選選手をおもな対象とするモデルは、「RSM」と改称されてラインナップされている。
レッドスターG9 RSとS9 RSは、ともに新しく設計された「レボショックS」と「カーボンブースト」を搭載。レーシングモデルのレッドスターシリーズにラインナップされ、赤いコスメティックをまとったモデルだが、ゲレンデユースをメインに開発されたという背景を持つ。
これまでアトミックのデモ系スキーの「レッドスターi」シリーズは、フラッグシップとなる「レッドスターS9iプロ」があり、その下に「レッドスターS9i」があるというラインナップ構成だった。だが、技術選の選手が使う「S9iプロ」と一般上級者を対象とする「S9i」との間には性能的に大きな差があり、その間を埋めるモデルの開発を日本サイドは求めていた。
第62回技術選男子総合4位 須川尚樹
そのリクエストに応える形で開発されたのが「レッドスターS9 RS」だ。このスキーのフィーリングを、今年の技術選でベストリザルトの総合4位となった須川尚樹は、こう話す。
「S9 RSは、S9iと同じモールドですが、芯材がレーシングモデルと同じで、アイコンビンディングが搭載されプレートがついて、雪面への食いつきとスキーが進んでいく感覚がちょうどいい。難しすぎないんだけれど、気持ちよく推進力を得られるスキーです」
同じく今年の技術選で総合13位という成績を残した片岡嵩弥も同様のコメントを残した。
「アイコンビンディングが搭載されたS9 RSは、スキー全体がきれいにたわみながら、足元がしっかりしている。テクニカルを目指す方や岩岳の基礎の選手に履いてもらいたいスキーです」
大まわり系のG9 RSは、どうなのか?
「G9 RSはターン導入しやすいし、カーボンブーストの効果で心地よいリバウンドが得られて推進力もある。切りかえもしやすくなっています」(須川)
「レボショックSでエラストマーの部分が広がり、スキーのトップのばたつきがより少なくなりました。そして、よりたわむスキーになったと思います。またテール側にカーボンブーストが入ったことで、テールの張り感が出て、しなったスキーを前に弾いてくれる効果が生まれています」(片岡)
第62回技術選 男子総合13位 片岡嵩弥
新たにTR、STR、TXの3モデルのブーツが登場
25/26シーズンに向けて、レッドスターブーツも全面的なフルモデルチェンジを受けている。
まずブーツの名称を変更。これまでの「レッドスターTI」を「レッドスターTR」、「レッドスターSTI」を「レッドスターSTR」、「レッドスターCS」を「レッドスターTX」と改称している。
TRの開発でテスターを務めたのはワールドカップレーサーのルーカス・ブラーテン。リバーススタートになって掘れたバーンでも、ぶれずに力を発揮できるブーツを作りたいということが、TRの開発スタートの大元になっているという。130以上のフレックスのブーツには、気温の変化に対してシェル硬度の変化が少ないフォーミュラ・プラスチックを採用して、より幅広い環境のなかで安定した性能を発揮するブーツに仕上げている。
新しいTRは動きがとてもなめらかなブーツ
「これまでのTIは、サイドの剛性が強くてエッジグリップがとても出て、スピードに強いブーツでした。スキーの反発を生かして、角づけから角づけにダイレクトにいけるブーツで、グリップは出しやすいけれど、そのぶんリスキーな面もありました。それに対して新しいTRは、動きがとてもなめらかなブーツ。切りかえでスキーの角が移り変わっていくのを敏感に感じられる一足です。そのなめらかさが出たぶんだけ、切りかえ前後のポジションやエッジをかけていく動作がしやすくなっています」(片岡)
STRは、ロアシェルは小変更にとどめ、そこにTRのアッパーシェルを組み合わせるという変更。テスターはおもにワールドカップの女子選手が務め、そのぶんラスト幅も狭く、甲やアッパーシェルの高さも低いという特徴はキープされている。もともとヒンジの位置が低く設計され、動きやすさを特徴とするブーツだったが、TRと同様に130以上のフレックスにフォーミュラ・プラスチックを採用。さらにアッパーシェルを変更することで、より進化した性能を実現している。
「STRはプラスチックの材質が変わって、けっこう剛性が強くなっています。技術選で使っている選手もすでにいて、男子でも130で足元の動きを出せる選手もいるし、女子で新人賞を獲得した選手も110を使っています。今までSTIにはヒンジの位置が低いぶん動きやすい、足元の動きを出しやすいという特徴があったのですが、STRになって動きやすさはそのままに、高速になっても安定する強さがプラスされたと感じています」(片岡)
25/26シーズンに向けて、大きくモデルチェンジしたアトミックのレッドスタースキー&ブーツ。そのポテンシャルを一度体感してみてほしい。