重心移動と荷重の組み合わせでターンを自在に操ろう!
レッスン
ゲレンデを自由に滑るためには 技術の幅を広げることが大事!

スキーは、自分が今現在持っているスキルで楽しむことがもっとも大切。でも、ワンパターンの滑りでは、ゲレンデのさまざまなシチュエーションを楽しむには限界があり、いろいろなターン技術を状況に応じて使い分けられるように技術の幅を広げておくことが重要です。
技術の幅を広げるとき、多くのスキーヤーの課題となるのが、重心移動と荷重の組み合わせです。よくあるのが、重心を上下・前後に大きく、ゆっくり動かしているのに、ターン始動を急いでしまうケース。まだスキーの面が切りかわっていないのにエッジングに入ろうとするため、スキーを振って方向づけをし、荷重がターン後半に集中してしまう人がとても多いです。やりたいことと実際にやっていることがかみ合わなければ、思うような上達は望めません。雪面を早くとらえたいなら、重心も早く動かす。センターポジションの維持しながら重心を移動させ、そこからどうスキーを操作するのか。それによってターンの質が変わってくることを、頭に入れておきましょう。
志鷹慎吾

したかしんご●1962年5月、富山県生まれ、長野県白馬村育ち。中学時代から競技スキーに打ち込み、全中、国体、インターハイなどで活躍。大学卒業後の1985年にオーストリアへ渡り、ブンデス・スポーツハイムに所属。オーストリア国家検定スキー教師およびオーストリア国家検定冬山スキーガイドの資格を取得する。オーストリア代表、さらに日本代表としてインタースキーに参加するという稀有な経験をもつ。帰国後は技術選に参戦。1994年に総合7位を記録するとともに、デモ選で1位を獲得。現在は、志鷹慎吾焼額山スノースクールで指導にあたるかたわら、長野県山ノ内町町会議員も務める
ターンの質によって重心移動の方向・量・時間は変化する
ターンの質と外力の大きさに応じて3方向をアレンジ
重心を動かす方向は、上下、前後、左右の3つがあります。上下・前後方向への動きは連動し、頭の位置をビンディングのトゥピースの上にキープして動く意識が大切です。左右方向への動きは、腰を左右にスライドさせる動きがベースとなります。
どの方向にどれだけ動かすのかは、カービング要素を強くするのか、制動要素を強めるのか、ターンの質によって変わります。そしてターンの質は、ターン前半で雪面をとらえるスキー操作でコントロールします。
制動要素の強いターン

上下・前後方向への動きが大きく、左右方向への動きは少ない
滑走性の良いターン

上下・前後方向への割合が減少し、左右方向への動きがアップ
カービング要素の強いターン

上下・前後方向への動きを最小限に抑え、左右の動きがメイン
時間のとり方でターンサイズを調整
重心移動は、時間のとり方によってターンサイズもコントロールすることができます。たとえば、ターン後半でエッジングを緩めるタイミングを遅くして、時間をかけて重心を移動させていけば、斜面横方向への移動が長くなるので、身体の動きを大きく使ってゆったりと次のターンに入っていくことが可能です。逆に上下・前後の動きを抑え、左右に短い時間で動けば、ターン弧は小さいものになります。このように、重心を動かす時間をコントロールすることで、さまざまなサイズのターンを描けることを覚えると、滑りの幅が広がってくると思います。
上下道を意識すると時間が長くなる

・大きなターン弧
・スピードコントロール重視
左右を意識すると時間が短くなる

・小さなターン弧
・ターン前半からのコントロールが容易
荷重を始める地点の使い分けがポイント
荷重は、カービング要素を求めるのか、しっかりスピードをコントロールして滑るのか、めざす滑りによってスキーに働きかける地点が変わってきます。切りかえ直後、フォールラインにからむ地点、その中間に分けて説明しましょう。
切りかえ直後に働きかけると、エッジングコントロールの時間が長くなるのでターンをコントールしやすく、切れもズレも自在に調整しやすくなります。一方、フォールラインにからむ地点になると、落下していく力を止める形になるので、スピードを落としやすくなります。エッジングの質という点では低いものになるわけですが、たとえば急斜面のアイスバーンを安全に降りたいときなどに有効な方法です。中間については、両者の性格を備えた汎用性の高いパターンだと思ってください。
制動要素の強いターン

フォールラインにからむ地点では、落下していく力を止める形になるので、スピードのコントロールが容易になる
滑走性の良いターン

中間地点は、ターンコントロール性が高く、状況や滑走スピードの対応幅も広い
カービング要素の強いターン

切りかえ直後は、エッジングコントロールの時間が長くなり、切れもズレも自在に調整しやすくなる
3つの方向性の滑りを自在に操ろう
制動要素の強いロングターン

制動要素が強いターンで滑るときは、重心移動は上下・前後方向への動きを意識し、荷重地点は中間〜フォールライン方向というのが、ベーシックな組み合わせになります。また、ターン前半のスキー操作は、トップを支点に動かすものがベースとなり、状況に応じてブーツを中心に動かすものに寄せるのがスタンダードな考え方です。
写真を見てください。上下・前後に大きく動き、時間を使って切りかえを行なった結果、荷重地点がフォールライン付近になり、ゆったりとしたリズムのターンになっているのがわかると思います。このような滑り方は、力の使い方に強弱があり、ずっと筋力を使うこともないので、楽に滑れるところがメリット。雪面から受ける圧の強弱も、ある程度はあっても、弱の部分が長くなるので、快適にロングクルージングを楽しみたいときなどに活用してみましょう。
滑走性の良いロングターン

滑走性の良いターンで滑りたい場合は、上下・前後方向への重心移動を少し抑え、左右方向への動きを意識します。荷重地点は、中間が目安。ターン前半のスキー操作は、ブーツを中心に動かすものをベースに、カービング要素の強いものに寄せていきます。
写真は、荷重地点を中間よりも切りかえ直後寄りに設定し、ブーツを中心に動かすスキー操作でターンをコントロールしている滑りです。ターン前半から雪面をとらえるために、上下・前後の動きをやや抑えて切りかえているのがわかると思います。多少のズレを伴いながらターンを描いていくので、エッジングやスピードのコントロールがしやすく、急斜面でも円い弧を描ける汎用性の高い滑りと言えます。左右方向への重心移動を早くし、切りかえ直後から加重していけば、スピードが上がってもコントロールを失うことはないでしょう。
カービング要素の強いロングターン

カービング要素の強いターンで滑るときは、重心は上下・前後方向への動きを極力抑え、左右方向にすばやく移動させます。荷重地点は切りかえ直後で、テールを支点に角を立てるスキー操作で雪面をとらえる組み合わせがベーシックなパターンです。
これにプラスして意識してほしいのは、外傾がある状態で重心位置を次のターン内側へ移動させること。ストレート内傾になると、バランスを失いやすいことに加えて、ターン後半で重心が内側に残って次の動作に時間がかかってしまうので注意してください。スピードが上がって外力が強まると、焦って上半身から動いてしまいがちなので、雪面に近い足元からの動きを意識しましょう。
写真は、切りかえ直後から加重し、推進力を引き出しているロングターンです。スピードがそれほどないため、上下動を少し使ってアクティブに動き、外力を求めていますが、重心移動の意識は左右方向のみ。スピードが高まって上下動を抑えれば、より躍動感のある滑りになってきます。