深くシャープなターンを描く3つのポイント
レッスン

ターンの深さも、抜けの速さも、スキーの性能によって起きている現象に過ぎない。スキーヤーに求められるのは、その反応を引き出すスキーへの働きかけを、いかに的確に行なっていくか。すべてはそこにかかっている、と山田椋喬は言う。ここでは、若手きっての理論派が、深くシャープなターンを描く3つのポイントを伝授する。
山田椋喬=解説

やまだきょうすけ●1997年7月8日生まれ、青森県大鰐町出身。小学生の頃からアルペンスキーに打ち込み、全国大会優勝など数々の戦績を残す。2019年、大学3年生のときにアルペンと並行して技術選にも挑戦。学連からの初出場で男子総合22位に食い込み、一躍注目を集めた。2024年の第61回大会では、男子総合8位と初のトップテン入り。身体の仕組みから技術を徹底分析する理論派スキーヤー。
POINT.1 センターポジションの維持
肩の位置を指標にすれば、常にセンターをキープできる!

「曲がる」「走る」というスキーの性能を引き出す大前提となるのが、ポジションです。スキーに力が伝わる場所に、しっかりと立てるかどうか。センターポジションを取るために重要なポイントを、僕なりに整理してみました。
まず、目安としてほしいのが「肩の位置」です。自分の肩が、ビンディングのトゥピースの真上にくるようにします。ポジションの高さが変わっても、この肩とトゥピースの位置関係は、必ずキープする。そうすると、ターン中に内傾が深くなったり、斜度が変化したりしても、常に斜面に垂直に立つことができます。
ただし、背中が丸まったり、すねの前傾が緩んだりすると、この位置はキープできません。特に背骨は、身体の中心を貫く「柱」のような骨なので、ここが丸まってしまうと、力が逃げてしまいます。背骨はたくさんの骨が連なってできているので、それこそ頭を下に向けただけでも簡単に曲がってしまう。そうかといって無理に背中を反ろうとすると、腰を痛めてしまいます。
そうならないよう、まずは目線をしっかり前に向け、腹式呼吸で大きく息を吸い込んでみましょう。背中がまっすぐになって、姿勢がよくなります。この状態で、肩の位置を目安に前傾姿勢を取ると、いい位置に立てる。人によっては、もしかしたら少し前寄りに感じるかもしれませんが、その位置がセンターポジションです。
EXERCISE_01:センターポジションで斜滑降

ストックの先をトゥピース、グリップを肩の位置に合わせ、斜滑降を行なっていこう。前述したポイントを意識し、ポジションをキープできるようトレーニングしてほしい。いつでも雪面と力のやり取りができるポジションが、すべてのベースになる。
POINT.2 フォールラインを意識
目線・身体を時計の4時・5時の方向へ!

自分からスキーを回そうとしなくても、フォールラインを意識してスキーにしっかり乗り込むことができれば、スキーは曲がってくれます。それにはターン前半から重心を落としていく必要があるのですが、ここで重要なのが重心を落とす方向です。
ただやみくもに落としてしまい、スキーと身体が離れてしまうと、乗り込むタイミングが遅くなってしまいます。大切なのは、「自分が通るライン」をイメージし、そのラインを目がけて落としていくことです。その方向は、ターンサイズによっても変わってきますが、目安としてはターンマキシマムからターンの終わりにかけて、時計でいうと、おおよそ「4時・5時」のあたりです。そこに目線と胸の向きを合わせ、重心を落としていくと、先行する身体にスキーがついてくるようなかたちで、スキーに乗り込むことができます。
これができると、スキーが真下を向いたタイミング(ターンマキシマム)でしっかりとスキーをたわませることができるので、落下を利用でき、ターンスピードが上がります。そこからターン後半は、たわんで戻ってきたスキーの推進力を引き出していけば、スキーはどんどん加速していきます。
EXERCISE_02:ストックを骨盤にあててプルークボーゲン

プルークスタンスでフォールラインを意識しながら連続ターンを行なっていく。ポイントは、骨盤にあてたストックを常に真下に向け、身体が回らないようにすること。ターン前半からフォールラインに向かって重心を落とし、しっかりと外スキーに乗り込んでいこう。
EXERCISE_03:ストックを下に向けてサイドスリップ

フォールラインを意識してサイドスリップ(横滑り)を行なっていく。重要なのは、身体の正面で束ねて持ったストックを、真下に向けたままキープすること。自分でスキーを回そうとするのでなく、あくまで重心を落とすことでトップの向きが変わるのを確認してほしい。
POINT.3 内側の股関節を使う
内股関節をたたむことで、骨盤が斜面と平行に!

重心を落とすときにもう一つ、重要なのが、「股関節を使う」ことです。股関節を使わないまま重心を落としてしまうと、どうしても骨盤や肩が内側に傾いてしまい、外スキーを踏めなくなるからです。そうならないよう、内側の股関節をしっかりとたたみながらターンに入っていく。このことで、骨盤を水平に保ったまま重心を落とすことができ、スキーと重心が離れることなく、しっかりとスキーに乗ることができます。
EXERCISE_04:ワイドスタンスで内股関節をたたむ

ワイドスタンスでターン中に内股関節をたたむエクササイズ。このことで骨盤や肩が斜面と水平になり、深い内傾姿勢を取ることができる。外スキーをしっかりと外に出し、抵抗を捉えていこう。しっかりとスキーをたわませることができれば、深いターンが描けるはずだ。
EXERCISE_05:内スキーをリフトして連続ターン

内スキーをリフトして連続ターンを行なっていく。外脚1本でしっかりとバランスを取るには、ここまで解説してきたセンターポジションと、フォールラインの意識が欠かせない。正しい動作ができていれば、低速でもスキーは反応してくれる。しっかりチェックしてほしい。