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横から縦への意識改革

レッスン

進むスキーに合わせた運動で力まずに走りや切れを引き出す

ターン後半、つまり山回りはスキーをしっかりとたわませ、徐々に大きくなっていく外力と内力に対応しながらターンを仕上げる部分です。ここで、進むスキーに合わせた運動をすることが、スキーの走りやターン弧の深さに直結すると言ってもいいくらい大切なポイントになります。

具体的には、山回りで身体とスキーを内側に回し込むといった横方向への働きかけではなく、外スキーに足場がある状態で内スキーのトップに身体の向きをセットし、大きくなる遠心力に対抗できるポジションを維持しながら荷重を強くしていくような、縦方向(フォールライン方向)への働きかけを行ないます。身体とスキーが離れるのではなく、近づいていくように。そして山回りで生まれる両スキーの高低差や、大きくなる外力、内力に合わせながらスキーに重さを乗せ続け、切りかえたいところまで移動していくことがポイントです。

縦に力が使えると、スキーを効率よくたわませることができるようになるので、ターンがより深く、速く変わっていきます。自分の力で回すよりも、スキーを主体に考え、性能を引き出すように動くことが、深くて速いターンに近づく一番の近道です。

股関節を意識することでスキーに合わせた運動が可能に

縦方向への働きかけでスキーを効率よく走らせるためには、山回りでスキーに重さを乗せ続けることが求められます。このときに意識するのが、「外スキーにしっかりと体重を預ける」「スキーの高低差に合わせた荷重動作」「スキーと一緒に移動する運動」の3つ。外脚に重さが乗った状態で、スキーの高低差に合わせて股関節を支点に内脚をたたむような荷重と、スキーの進行方向に身体の向きを合わせていく縦方向への運動により、深さや走りを引き出すことが可能になります。

そして、いずれのポイントにも共通するのが、股関節を意識すること。外スキーに重さを乗せるのも、内脚をたたむのも、そこからターンを仕上げるのも、股関節を意識しながら行なうことが大切です。

次のページから、縦方向に力を使うための3つのポイントが身につくトレーニングを紹介します。股関節をよく動かし、力まずにターンが深く、速くなる感覚をつかんでください。

Training_01:外スキーにしっかりと体重を預ける

縦方向への働きかけは、外スキーに土台があることで可能になります。両スキーの高低差に合わせた荷重動作や、進行方向への運動に向けた最初のステップとなる、外スキーに体重を預ける感覚をここで磨きましょう。

①外スキーに重さを乗せる感覚をプルークで確認

上体は垂直を保ち、腰から下の重さを足首に乗せるイメージでプルークターンをします。落下する力を活用しながら、脚を内旋させてエッジングを強くしましょう。

②片脚ジャンプでスキーに重さを乗せる

足首の上に腰がある状態を保ち、角づけが緩まない位置に重さを乗せます。腰が内側や外側にずれないよう、スキーの面に対して垂直に荷重することがポイントです。

③内手を外スキー側の膝にタッチ

腕だけを伸ばすのではなく、水平に保った肩から下がるように、内手を外膝にタッチします。内側の肩と、外側の股関節を近づけるようにバランスを取りましょう。

④内スキーを外スキーのトップにクロス

内スキーをクロスさせる練習です。スキーを回す意識が強いとクロスが解けてしまうので、内スキーと内肩をターン外側から離さないように心がけましょう。

⑤外手でストックを引きずりながら内手で外膝をタッチ

ターン外側の緊張と、内側の肩を近づける意識を連動させて、スキーに体重を預ける感覚を養います。これができると、内倒しにくい滑りに変わります。

Training_02:スキーの高低差に合わせた荷重動作

次は外スキーの土台を活用しながら、スキーの高低差に合わせて荷重を強くする練習です。股関節を意識しながら沈み込み、エッジングを強くすることでターンが切れ上がる感覚をつかみましょう。

①ストックでこぎながら斜行する

こぐときが荷重、腕を前に出すときが切りかえにあたります。スキーに体重を乗せて移動できるポジションにいると、ターンが切れ上がるのを感じられるはずです。

②ストックは空こぎ、足元の操作だけで斜行

スキーの軌道に合わせて移動するためのポジションや荷重動作を確認します。体重をスキーに預け、変化する斜度に対して角づけが緩まないような微調整が大切です。

③斜行しながら身体の動きだけでターンを仕上げる

トレーニング①と②のおさらいです。ターン外側の緊張や内側の動き、ターン中の変化する斜度やスキーの高低差に合わせた角づけ、荷重を確認します。

④ストックを空こぎしながら斜行するイメージで連続ターンを行なう

斜行で練習したことを、連続ターンで確認します。フォールラインに向かって荷重を行ない、角づけが強くなることでカーブが描かれる感覚を養いましょう。

Training_03:スキーと一緒に移動する運動

外スキーに体重を預けながら荷重する感覚がつかめたら、スキーに身体がついていくように移動する運動を洗練させましょう。ここまでの練習に加え、縦方向への力の使い方により重点を置いたトレーニングを紹介します。

①股関節を深く曲げて外スキー側のブーツをタッチ

肩の水平を意識し、股関節を深く曲げながらブーツを触るのがポイントです。切りかえで山側の肩が上がらないように、斜面の傾きに沿って重心を落としましょう。

②外手をトップに沿って伸ばし、行きたい方向に身体を誘導する

トップに沿ってまっすぐ腕を伸ばすことで、スキーと一緒に身体を移動させる練習です。縦方向への運動が増すので、外力を使って推進する感覚が得られるはずです。

石田俊介=解説

いしだしゅんすけ●1979年9月18日生まれ、北海道・富良野市出身。アルペン競技経験を経て、基礎スキーヤーに転向。2016年の第53回全日本技術選で男子総合15位、2021年の第58回大会で総合14位を記録するなど、上位選手として活躍している。元SAJナショナルデモンストレーター。パノラマスノーアカデミー校長

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