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自在なバランスを引き出す体幹ローリング

レッスン

持って生まれたバネとボディバランスを生かし、エネルギッシュな滑りを見せる山野井全。いったいどんなイメージで、何を意識してトレーニングを行なっているのか。「スキーヤー自身の回旋」によってスキーに回転力を与えていくという独自のテクニック論に迫る!

ターンの全体像から4つのポイントを抽出

(1)ターン後半の強い足場

特徴的な部分の一つが、ターン後半の深いエッジング。的確な角づけと、荷重によってスキーが強くグリップすることで、安定した強い足場が生まれます。彼の滑りのポイントの一つでもあり、ターン後半に安定した足場を作れることで、思い切って次のターンに向けてアクションを取ることが可能になります。

(2)ターン後半からの早い仕かけ

ターン後半で強い足場が作れたら、その足場を利用して早い段階から次のターンの準備を行なっていきます。スムーズに次のターンをつなげていくためには、的確なポジションと角づけの入れかえが必要ですが、山野井選手は体幹部の回旋をうまく使うことで、脚の回旋動作を引き出し、次のターンに向けた角づけを行なっているのが特徴です。

(3)ターン始動での優れたスキーバランス

最大の特徴と言えるのが、このターン前半でのバランスの良さ。落下力が強くかかる場面でも、次のターン方向に的確に重心移動をしながら、角づけされたスキーが強くグリップするまで、バランスよく待つことができています。ターン始動で作った身体の外側の軸をターン中も一定に保てているのがその証拠。

(4)強い外力に合わせた低い姿勢と内傾角

ターン中は遠心力や滑走スピードに合わせて、内傾を強めたり、重心を低くしたりする必要があります。山野井選手はこのポジション調整能力が非常に優れていて、常に変化する外力に応じて、スキーと身体の距離をうまく保ちながら、姿勢を柔軟に取ることができています。ここにも抜群のバランス感覚が現れているといえます。

身体とスキーを離さない感覚をつかむベースアップ・トレーニング

体幹ローリング

ブーツの状態で体幹部の動きを確認します。特に、腹部を回旋させることで、脚が一緒に回る=回旋することを確認します。ここでのポイントは、回旋を行なった後も、スキーと身体の距離が保たれている、こと。体幹部の回旋によって、股関節の回旋が導かれ、結果的に足元の角度ができる、という一連の流れを確認しましょう。

外足フラットプルーク

プルークスタンスで、次の外スキーにしっかり重心移動することが目標の練習です。スタンスも広げすぎず、身体の中に収まる幅でやってみましょう。外スキーがフラットになるくらいしっかり重心移動させながら、体幹ローリングを行ない、外スキーと重心の距離が近い状態でもスキーの向きが変わっていく感覚をつかむことが目標です。

外足フラットシュテム

シュテムの中で、開き出した外スキーに重心移動することと、ターン後半に向けて安定した足場を作ることが目標です。外スキーと身体は近いまま、の意識は変わらず持ちましょう。重心移動が完了したら、外脚のバランスを変えずに内脚をそろえていきます。はじめはターン後半から、徐々にそろえるタイミングを早めて行なってみましょう。

ターン始動の浮遊感を手に入れるステップアップ・トレーニング

ストックを引きずりながらターン

ストックを写真のように構え、ストックの先端を常に雪面に引きずりながらターンを行います。ここでの目標は、ストックを雪面に引きずることのできる脚の長さを保った状態でターンに入る感覚を養うことです。低い姿勢でも、シュテムのように次の外スキーにしっかり重心移動させながら、ターンに入るバランスを磨きましょう。

グリュニゲンターン(低速)

切りかえからターン前半にかけて外スキーを引き上げて滑ってみましょう。ここでの狙いはスキーの回転を引き出すバランスを磨くことです。身体の軸をまっすぐ保ち、体幹ローリングを使えればスキーはスムーズに回転してくれます。足をついたら、すぐに次のターンに向けて動き出しましょう。緩斜面から取り組んでみましょう。

ジャンプターン

ターン後半にタメを作って、切りかえで大きくジャンプしてみましょう。陸上でも高くジャンプするためには、脚のタメが重要です。それを作れるターン後半の姿勢と、しっかりジャンプのできるポジションの確認が狙いです。特にジャンプの際は、スキーのテールが上がるように飛んでみましょう。これも緩斜面で行なってみましょう。

フレームアウトターン

ストックを逆さに持ち、身体の前に構えて枠を作ります。切りかえから、ターン始動でこの枠を追い越すように重心移動して、ターン外方向へ身体を移動させていきます。ターン後半にジャンプターンをしたときのような足場がないと、外側への大きな重心移動ができません。切りかえ前後の重心移動をここで確認しましょう。

さまざまなターンや道具でバランスを養うバージョンアップ・トレーニング

小回り(カービング)

ショートターンだからといって、特別な動きはなく、今回お伝えしてきた運動をきちんと行なう意識で滑ります。ショートターンこそ、外スキーに対しフラットに立てるバランスまでしっかり重心移動して、スキーが回転しやすい状況を作ってあげましょう。スキーが回転し始めれば、あとはターン後半の斜滑降の距離の調節です。長くすればサイズは大きくなりますし、短くすればテンポの良い小回りになる、というイメージです。

大回り(ファットスキー)

滑りを整えるためにファットスキーでの滑走も行なっています。ファットスキーは、ラディウスが20m前後のものが多く、スキー自体も軽く、ねじれやすいです。ですので、傾くだけ、エッジをかませるだけではスキーの反応が弱く、自在なターンコントロールはかないません。カービングのしにくいファットスキーでは、スキーと身体の距離や、ターン始動の重心移動ができているかの確認も行なうことができ、スキーの反応を感じる良い練習になります。

コブ(ファットスキー)

コブの中でも、体幹ローリングがポイントです。意識としては、ストックをつくのに合わせてローリング、ストックをついたらすぐ次のローリングに移ります。ここで重要なのは、整地と同様、ターン後半の足場。この足場があることで、次のアクションを素早く取ることができます。ここではファットスキーで滑っていますが、幅の広いスキーの場合、通常よりも大きく左右に移動しなければ外スキーに重心移動することができません。このようにして、足場作りの練習をすることもあります。

山野井全(やまのい・ぜん)

1996年11月24日生まれ、北海道森町出身。ジュニア時代からアルペンスキーとジュニア技術選の両方に取り組みスキー技術を磨く。大学時代には、全国学生岩岳スキー大会で前人未到の4連覇を達成。同時に全日本技術選にも出場し最高位は58・59回大会の総合6位。昨シーズン、VECTOR GLIDE(ヴェクターグライド)にマテリアルチェンジし、技術選の選手としてはもちろん、契約ライダーとしてスキーの開発にも携わるなど幅広く活躍中

技術監修:片岡嵩弥(かたおか・たかや)

1996年12月24日生まれ、北海道小樽市出身。スキー教師だった両親の影響で幼少よりスキーに親しみ、高校までジュニア技術選に出場。大学進学を機にアルペン競技にも取り組む。卒業後は全日本技術選に挑戦しながらプロスキーヤーとして活動。最高位は59回大会の総合10位。SAJナショナルデモンストレーター2期、朝里スキースクール所属

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