穴田玖舟「技術選では上位入賞を目指していきたい」
インタビュー
──男子総合18位に入った第60回全日本技術選では、伸び伸びとした滑りで注目を集めていましたね。
穴田 結果こそ18位を記録しましたが、やっぱり手強い大会でした。コブ斜面などは少し前までどうやって滑ったらいいのかさえわからなくてけっこう練習しました。
──その成果は十分に出ていたと思います。ギャラリーも沸いていましたし。穴田選手は現在、日本体育大学の大学院生ですよね。どんな研究をされているのですか。
穴田 自転車のコーナリングに関して効率的な身体の使い方などを研究しています。自分自身XCO MTB (クロスカントリー・マウンテンバイク)の選手でもあり、もっと効率よく走る方法はないのかと疑問をもち、その分野を研究するために日体大に来たんです。
──XCO MTBの選手としてはいつ頃から取り組み始めたのですか。
穴田 父が地元でXCO MTBのチームを作っていて、小さい頃からやっていました。高校生ぐらいから本格的に取り組み始めて、2015年に全日本選手権で3位になり、2018年には世界学生選手権の日本代表に選ばれました。
──トップクラスの選手として活躍されていたんですね! XCO MTBを始めたきっかけは何だったのですか?
穴田 父からアルペンスキーのオフトレーニングにと勧められたことがきっかけです。どちらもバランスのスポーツで、コーナリングの感覚などはスキーのターンにも生かせるだろうと。海外ではXCO MTBはとてもポピュラーなスポーツなんです。日本で言えば野球やサッカーみたいな……いや、それ以上かな。だからXCO MTBのトップ選手はスーパースターです。僕の場合、選手としてのピークは大学生の頃で、当時は1日の6時間くらい自転車に乗っていて、自転車の上で食事を取っていたと言っても大げさじゃないくらいでした。さすがに今はそこまで時間を割けなくなっていますが。
──そうだったんですね。さらにテレマークレースの選手としても日本のトップ選手として活躍されているとか。この春も白馬八方尾根での全日本技術選が終わった翌日から、海外遠征に出発されたと聞きました。
穴田 そうなんです。ワールドカップと世界選手権があったので、ドイツとスイスに行ってきました。技術選が終わってすぐに成田空港に移動し、そのまま飛行機に乗って(笑)
──テレマークレースには穴田選手をそこまで動かすほどの魅力があるってことなんですね。
穴田 もちろんアルペンスキーもエキサイティングなスポーツですが、テレマークレースにはアルペンとは違った〝超人性〟が求められるというか。海外の選手もフィジカルがすごくて。僕の場合はスキーだけではなくXCO MTBもやっていることもあり、筋肉の質を良い状態にキープできるので、そういう部分で勝負していかないと太刀打ちできないんです。アルペンは子供の頃からずっとやってきましたが、それほど目立った成績ではなかったですし、自由な雰囲気があるテレマークスキーのほうが自分にフィットしていたのかもしれません。
──そもそもテレマークスキーとの出合いはどんなことだったんですか。
穴田 最初のきっかけは、父がテレマークスキーをやっていたことです。でも父はすぐに飽きてしまい、そのお下がりを僕が使わせてもらって。それで小学校低学年の頃に、当時テレマークレースのワールドカップで活躍されていた上野英孝さんから大会に出るようすすめられて、そこからですね。興味があればぜひFISのチャンネルなどで見てほしいんですけど、テレマークレースって複合的な要素があって、ポール(ゲート)の途中にジャンプがあったり、それが終わるとランがあったりと、刺激的な競技なんです。
──(映像を見せてもらい)本当だ、まさに超人たちの戦いですね。小さい頃はどうやって練習していたのですか?
穴田 両方やっていましたね。午前中はポールの練習をして……と言っても、いつもスキー場にポールが張ってあるわけではなかったので、林の中などを滑って、午後からはテレマークに履き替えて。ランの練習にクロスカントリーもやっていました。
──そういった経験とトレーニングによって、今の穴田選手の滑りが作られたのでしょうね。これからの活動としてどのようなことを考えているのでしょう。
穴田 技術選では上位入賞を目指していきたいです。昨シーズンは所属するグループロシニョールチームの渡邊渚選手が初優勝してチームとしても勢いが出てきているので、ここで僕がジャンプアップすればもっと良い雰囲気になると思うので。テレマークレースではワールドカップで5位以内に入ること。今は世界的にも高校生世代の選手がどんどん出てきていて僕はもう若手ではないんですが(笑)、まだまだ負けないぞってところをアピールしたいですね!
あなだ・きしゅう●1998年7月16日生まれ、北海道砂川市出身。スキー選手だった両親の影響で少年時代からアルペンスキーなどのさまざまなスポーツを経験。高校ではアルペンレースを続けながらもテレマークレース、XCO MTB(クロスカントリー・マウンテンバイク)で全日本トップクラスの成績を収め、世界を転戦。現在は日本体育大学大学院に在籍し、テレマークレースのワールドカップ5位以内を目標に挑戦を続けている。学連から出場した第60回全日本スキー技術選では男子総合18位を記録