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TEAM BG8流 スキー育成論

インタビュー

“型破り”が成長を加速させるBG8

常識にとらわれない練習法で多くのトップ選手を育ててきたスキーチーム「TEAM BG8(ビージーエイト)」。独創的な指導の裏には「理にかなうこと」を徹底的に突き詰める、穴田弘喜隊長の姿勢があった。

あなだひろき○1959年生まれ、北海道砂川市出身。 自身も技術選選手として活動したのち、スキーチームTEAM BG8を設立。常識にとらわれない斬新なアイディアと探究心をベースとした指導で注目を浴びる。昨シーズンSAJナショナルデモンストレーターの初認定を受けた穴田玖舟の実父

上達のためならなんでも取り入れる自由な発想

──TEAM BG8のチーム名の由来を教えてください。

技術選に出場する選手の練習環境を整えるためにチームを作りました。そのとき男性4人、女性4人でスタートしたので「BOY and GIRL 8」でBG8です。今から29年前の話ですね。今では子ども21名、大人10名のチームに成長し、選手たちからは「隊長」と呼ばれています。

──チーム設立後、穴田さんご自身はスキーメーカーの仕事で東京へ行かれたそうですが、北海道へ戻ってきたときにはどのような形で携わりたいと考えたのでしょうか。

38歳のときに北海道に戻ってきて、やるなら技術の指導だけでなく、スキー板、ブーツ、すべてのことに精通していないとダメだと感じました。また、チームには子どもが必要と考え、ジュニア育成にも力を入れました。元SAJデモンストレーターの小森彩未や谷藤遥はうちの出身で、彼女たちは大人に交じってガンガン滑って練習していましたね。

──なぜ子どもの育成が必要と感じたのでしょうか。

大人だけではチームとしての将来がないと感じたんです。レーシングを基本に練習して全国中学、インターハイを狙いつつも、技術選に出場できる高校3年生を基準に逆算して、小学生から技術選に向けたメニューを組み立てていきました。(穴田)玖舟もそのなかのひとりで、彼は当時から単純な練習を嫌ったりこだわりの強いプレーヤーでしたが、小学校3年生のときに取り組んだテレマークが見事にハマり、みるみる上達しました。

──なぜテレマークだったのでしょうか。

アルペンは左右の2軸のためポジションは揺らぎますが、テレマークは正しいポジションでなければ滑ることができません。つまり、テレマークには絶対的にキープすべきポジションがあるんです。それがスキー上達には不可欠だと感じたからですね。また、体軸でターンするスノーボードのエッジを右左に切りかえる動作も重要だと思い、スノーボードも練習に取り入れました。

──テレマークにスノーボードと、練習方法が独特ですね。

練習で大事にしているのは、物事の道理です。例えば、ターンをする際、 横移動の平らな所から斜面下に滑り降りる際に急になり、また平らになる。その過程でどのような動きをすることが、一番理にかなっているのか。それを追求することが大切だと考えています。最終的に求める運動を行なうためには何が必要なのかを考え、ワールドカップのビデオを見ながら答えを探していると、自ずと最低限必要なことが見えてきてきます。そこで初めて仮説を立て、運動を再現するための練習内容を組み立てます。

──練習ではポールをメインに取り入れているとお聞きしましたが、技術選に向けた練習としてどういったメリットがあるのでしょうか。

我々のチームが理想とするのは、車で例えるならばレーシングカーのような鋭いターンです。ポール練習を行なうことで、そのターンが身につくと考えています。タイヤがスキーなら、サスペンションは選手の足。速いスピードの次元のなかでもしっかりと力をスキーに伝えるために、オフのトレーニングも重要となります。

──スキーの指導だけでなく、所属選手のスキーやブーツのチューンナップも行なっているそうですね。

まず、選手それぞれのレベルや滑走スタイルを把握することからはじめ、それぞれの目的に合ったエッジ調整を行なっています。また、ブーツはフィット感が悪いと、スキーに正確な力を伝えることができません。そのため、一人ひとりの足の形に合わせて、インナーブーツの成型やシェル出し、インソールの作成など、さまざまな調整を行なっています。

考えさせる練習がメイン。選手それぞれが考え、試行錯誤を繰り返す

オフトレも本気! やるからにはマウンテンバイクでも頂点を目指す

マウンテンバイクで非凡な才能を発揮し、プロライダーとなった選手も多い

──オフトレは一般的な陸上トレーニングではなく、全員マウンテンバイクですね。

以前、マウンテンバイクの大会を見に行ったとき、全身運動になりそうだなと感じ、ピンときました。そしたら即行動です。何台か中古のマウンテンバイクを買い集めて、子供らに与えて大会に出場させました。現在では自宅の裏山を自分で切り開いてマウンテンバイク専用コースを作り、毎週全道から選手が練習に訪れています。チームの中にはスキーよりもマウンテンバイクがおもしろくなってしまい、プロになった子もいます。

──スキーのどういった部分にマウンテンバイクでの運動はつながるのでしょうか。

技術的な側面としては、スノーボード同様、体幹を意識した軸の捉え方を養える点です。アルペンスキーはどうしても左右の軸に意識が集中しがちですが、マウンテンバイクのように、身体全体でバランスを取り、重心を移動させる感覚を養うことは、スキーのパフォーマンス向上につながると考えています。

あとは、体力的な側面です。スキーは下半身に負荷がかかりやすいスポーツですが、マウンテンバイクは全身の筋肉をバランスよく使うため、スキーに必要な体力を総合的に向上させられます。ロードバイクも検討したのですが、舗装路を走るため安全面で不安がありました。その点、マウンテンバイクは専用のコースやオフロードを走るので、子供たちも安心して練習に取り組めます。

考えるからこそうまくなる。点数のためじゃなく、フルカービングで滑るために

練習のベースはポール

──TEAM BG8の雪上練習には正解がないと伺いました。

練習では選手同士で、私が言ったことを考えながら、リフトに乗って自分の動画を見て研究しています。そして、それぞれの頭でまとめて滑って試す。その繰り返しです。例えば、スキーを急激に傾ける練習をする場合、転倒するギリギリの限界値を見つけることが大事なんです。小さな動きを繰り返しても意味はない。まずは限界値を超えて転ぶくらいまでやる。そこから調整するほうが簡単なんです。

──指導を通じて選手の心を強くすることも心がけているようですね。

今でいう、昭和的なやり方ですね(笑)。基本、選手にしてみれば意味がわからない理不尽な練習が多いと思います。加えて、ここは厳しくしなくてはと感じれば、さらに追い込みます。追い込まれているときはきついと思いますが、そこを超えるとみんな滑りが変わります。技術を教えるというよりも、自分の力を引き出す精神力を鍛えているイメージですね。

──毎シーズン所属選手一人ひとりが目標を揚げ、達成するための課題を穴田隊長が設定されているのでしょうか。

チーム全員の滑りの映像をシーズン終わりや夏に見て、思いついたことをメモしています。それをシーズン中に見返して、選手それぞれに対して課題を設定します。365日、頭の中は常にスキーのことでいっぱいです。しかし、(技術選の)点数のためにと思ったことは一度もありません。目的は斜面のなかで思いっきりターンすることなんです。失敗してもやっぱりフルカービングで滑ったほうがかっこいいじゃないですか。

──チームの代表選手である玖舟君の活躍はめざましいですね。

雑で乱暴できわどい、他の選手にはない滑りが逆にいいですね。器用なんだけど、今は滑りがまとまってないので点数がばらけるし、失敗も多い。彼のテレマークの実績から言うと、(技術選は)簡単なはずなんですよね。それを考えたら、まだまだ見ていておもしろいスキーヤーにはなると思います。

──チームでは他にも魅力的な選手がたくさん育っているようですね。 先シーズン、TEAM BG8から12人の選手が技術選に出場し、うち9人が決勝に進出しました。働きながら、あるいは学生で時間がないなかでもみんな一生懸命練習に取り組んでいます。その他にも印象に残っている選手と言えば、以前香川県からTEAM BG8に来ていた中学生です。最初はなかなか結果が出なかったのですが、人一倍練習熱心でメキメキと上達していきました。とにかくスキーに対する情熱がすごかったですね。香川県は雪が少ないので、限られた時間のなかでいかに効率的に練習するかを常に考えていました。積極的に先輩たちにもアドバイスを求めて、最終的には全日本ジュニアスキー技術選に出場するまでに成長しました。

自主的に考え、挑戦する気持ち! スキーを通じて成長を見守りたい

常に選手と正面から向き合う姿勢に信頼を寄せる選手は多い

──チーム運営の大変な点はどんなところでしょうか。

うちはどこよりも低料金でやっている自負はありますが、それでもスキーに打ち込むにはお金がかかります。どうしても家庭の経済的な負担は大きくなってしまいますので、そこを最小限に抑えるためにいろいろな仕事を掛け持ちして、運営資金を工面しています。自分もいつまでできるかわからないですし、毎年「もう厳しいね」とスタッフと話をしていますが、うちでうまくなりたいと思ってくれる子どもがいる限り、やめられないですね。

──選手を育成する上で大事にしていることはどんなことでしょうか。

自主性と挑戦することです。練習内容について、私から指示を出すことはほとんどありません。正解を押しつけるのではなく、練習後に選手同士で話し合って、ああでもないこうでもないと議論を戦わせるようにしています。そのほうが身になるからです。あとは、常に限界に挑戦してもらいます。これ以上やったら転倒してしまうところまで追い込んでから、どうすればうまくいくのか考える。そうすることで、限界を突破する力を養っています。

──今後のチームの目標を教えてください。

全SAJナショナルデモンストレーターのうち、TEAM BG8所属選手、出身選手が半分ぐらいを占めればいいですね。難しい目標ではありますが、目標を高く持たないと成長はないと思っています。北海道のスキー場はインバウンドに押されて、地元の人たちが楽しめる環境が少なくなってきています。世代を問わず、スキーが大好きな人たちが気軽にスキーを楽しめるような、スキーが上達できるような環境を提供していきたいと思っています。また、スキーを通じて、子供たちが人間として成長できるようなチームを目指していきたいです。

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