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オガサカの意気込みが感じられる渾身の一台『KS-AP』

ギア・アイテム

マルチラディウスでカービング性能を追求

猪又一之選手が技術選で優勝した1996年、先進のカービングスキーとして輝かしいデビューを飾ったケオッズ。今季は原点に立ち返り、カービング性能にこだわって開発されたのがKS-APだ。APとは「Advance Pro」のこと。「スキーヤーをさらに進化させるスキー」との意味が込められている。オガサカの技術の粋を集めて開発されたKS-APとは、いったいどんなスキーなのだろうか。

第61回技術選男子総合15位の唐沢航希と女子総合8位の神谷来美。ともにオガサカの未来を担う若手エースだ。この日はKS-APとKS-ADで、整地、コブなど多彩なコースを滑り、インプレッションした

4つのRを採用したマルチラディウス

上級者向けのケオッズシリーズは、2タイプのモデルを、毎年交互にモデルチェンジしているが、今季はKS-ESがモデルチェンジして、KS-APに生まれ変わった。

それではいったい何が変わったのか。ポイントはカービング性能だ。デビューした当時の原点に立ち返り、今一度カービングターンにこだわって開発。最大の特徴が、KS-APのために考案された「マルチ アーク ジョインテッド カーブ」。これはサイドカーブに4つのRからなる複合カーブを採用したもので、4つのRを採用したのは非常に珍しい。

この「マルチ アーク ジョインテッド カーブ」は、ターンを4つのフェーズに分解し、適切な位置に適切なラディウスの円弧を配置することによって、方向付け、グリップ、推進力をコントロールしたターンが可能な設計となっており、カービング性能を最大に引き出すことができる。

スキーの3サイズも大きく変更されている。前モデルのKS-ESが、116-69-98・5㎜でR=15m(165㎝)だったのが、KS-APは119-67-103㎜でR=13m(165㎝)となり、トップとテールを太くセンターを絞った形状には前モデルの面影はまったくない。幅広でスクエアなハンマーヘッドは、エッジの接雪長を長くするためのもの。テールの接雪点をセンター寄りに移動させた「ダイナミックテール」は、ずらしと、切れを両立させる効果がある。これらにより、カービング性能と操作性を高いレベルで融合している。

実際に乗ったフィーリングはどうなのか、唐沢選手に聞いてみた。

「カービングがしやすいのはもちろんですが、ずらしやすいのも特徴。スキー自体はすごく操作性がよく、動かしやすい。スキーの角度や踏む圧のさじ加減で、ターン弧の調整が自在にできます。また、板がすごくたわむのですが、ターン前半のトップの捉えから後半のテールまで雪との接地面を感じられました」(唐沢)

スキーの厚みを従来モデルよりも薄くし、構成材料の見直しをしている。ソフトなフレックスにより高い操作性を導き出し、ハードトーションでエッジが逃げないようにカービング性能が考慮されている。

カービングがしやすく、ずらしやすい。スキーの角度や踏む圧のさじ加減で、ターン弧の調整が自在にできるスキーです

大きめのテールのRがターン後半でのスムーズな操作性を実現

今季のオガサカのラインナップのなかで、マルチ アーク ジョインテッド カーブを採用しているモデルがもうひとつある。それは技術選対応モデルのTC-Sだ。ラディウスはKS-APが13m(165㎝)でTC-Sが12・9m(165㎝)とほぼ同じ。果たして乗り味は同じなのか。乗り比べた感じを唐沢選手と神谷選手に聞いた。

「TC-Sは、板が走ってシャープにターンに入れるのに対して、KS-APはシャープに入ることもできますがターンを自分でコントロールして入ることもできます」(唐沢)

「KS-APを履いた後にTC-Sを履くと、反応が良すぎてスキーが自分の身体の下にグッと入ってきて、それを自分で抑え込まないといけない。スキーの走りを見せたいから技術選では必要なことなのですが、KS-APは良い意味であまり入ってこない。スキーを抑え込む筋力が要らないので楽なんです」(神谷)

実は、KS-APとTC-Sは、テール部分のカーブに違いがある。設定されたテールのRがKS-APは大きく、TC-Sは小さい。これにより、KS-APはほどよく切れ上がりコントロール性が高いのに対し、TC-Sはターンが鋭く切れ上がり、推進力を得ることができる。この違いにより、KS-APは小回りだけでなく大回りの安定性を生み出してくれる。

KS-APは良い意味で身体の下にあまり入ってこない。スキーを抑え込む筋力がいらないので楽です

KS-APが対象とするのはエッジをしっかり扱える人

操作性が非常に高くオールラウンドな性能が特徴のKS-AP。TC-Sよりも格下だと思われがちだが、対象となるレベルは、テクニカル、クラウン、準指導員、指導員クラスと、非競技系のモデルの中では最上級クラスとなっている。

「テクニカル、クラウンでは、カービングが求められます。指導員、準指導員検定では、基礎課程でプルークボーゲンや横滑りもあるので、カービングもずらしもできるKS-APはまさにピッタリ。指導員検定で求められるずらしは、しっかりエッジがかかった状態でトップが中に入ってかかとが出るずらし。これが1級レベルだと、かかとが外に出てしまうズレ。だからKS-APはエッジをしっかり扱える人向きで、1級レベルには、セカンドモデルのKS-ADが最適です。軽い力でもたわませやすく扱いやすい。KS-APはスキーの走りを引き出せる滑りができる人向きです」(唐沢)

セカンドモデルのKS-ADは、非常に汎用性が高く、対象レベルも幅広い。

「めちゃくちゃ楽しいですよ。体重を乗せるだけで曲がってくれて楽にターンができます」(唐沢)

ターンを楽しみたいエキスパートにも乗ってほしいスキーだ。

一般スキーヤーはFM585がオススメ

滑走スピードが上がると足元が不安定になってしまうので、プレートが必要になるが、オガサカではSR585とFM585の2種類のプレートがある。どちらもポリアミド樹脂製で、SR585が高さ12.5㎜、FM585が高さ12㎜となっている。SR585は、たわませるには強い力が必要で、脚力が強く、体重の重いスキーヤー向き。FM585のほうがしなやかで、たわませやすい。

「SR585は、反発力が大きくなるので、レーサーや板の走りを求めるスキーヤー向き。一般的に一日中滑ってターンを楽しむにはオーバースペックかなと思います。FM585はフレックスが出しやすく自分の思い通りのターン弧が作りやすい」(唐沢)

「私は、TC-SにFM585を載せているのですが、2年前の試乗レポートで、ケオッズにSR585を載せたモデルを履いて、ケオッズのほうが硬いとコメントしてカットされました(笑)」(神谷)

それほど載せるプレートでスキーの性格が大きく変わってしまうので、プレート選びは重要。できれば試乗して自分に合うプレートを確かめてほしい。

唐沢航希

からさわこうき●1998年生まれ。長野県東御市出身。大学までアルペン競技に打ち込み、4年時に学連枠で技術選に参戦。22年大会総合17位、23年大会総合24位、24年大会15位と3年連続スーパーファイナル進出した注目の若手ホープ

神谷来美

かみやくるみ●2002年生まれ。北海道札幌市出身。4歳からスキーを始め、小学2年生からチームコンプに所属し、ジュニア技術選で活躍。2021年第58回技術選初出場でスーパーファイナルに進出し総合12位。第59回大会2位、第60回大会2位。第61回は学業と両立しつつ8位になるも、今後の活躍が楽しみなトップスキーヤーだ

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