オガサカチームの快走はマテリアルの進化とともに
ギア・アイテム技術選

技術選をターゲットに、設計からテストまでのすべてのプロセスが日本人の手によって行なわれたオガサカのTCシリーズ。今大会も、多くのアスリートがこのスキーを武器に素晴らしい滑りを見せてくれた。技術選という熾烈な戦いにおいて、そのポテンシャルを存分に発揮したTCシリーズの真価は多くの選手に勇気と自信を与えてくれたようだ。
オガサカチームの快走はスキーへの信頼から生まれた

神谷来美(女子総合5位)
スキーは、マテリアルの良し悪しが強く影響するスポーツだ。いかに優れた滑り手であっても、マッチングが悪いスキーでは、十分なパフォーマンスは発揮できない。技術選のような過酷な戦いの中では、なおさらだろう。
「今大会では、ショート系とミドル系の種目で、とても良いフィーリングを感じました。得られる反発やターン後半の抜けなど、自分の感覚にすごく合っていましたし、何の不安も感じなかったです。私は小さい頃からずっとオガサカのスキーを使ってきましたが、私たちのような若い選手の声にもしっかりと耳を傾けてくれますし、毎シーズン、相性の良い1本を届けてくれます。だから、マテリアルには完全に満足していたのに5位という成績で終わったことは、正直悔しいです。優勝を目指して取り組んできましたし、自分のベストリザルトを更新することはイコール優勝ですから。入賞は素直に喜びたい反面、また意欲が湧いてきていますね(神谷来美)」

ジュニア技術選出身で幼少からオガサカスキーでテクニックを磨いてきた神谷にとっては、マテリアルへの不安など無縁のことなのだろう。
「日本製のスキーを使っているという安心感は間違いなく感じています。今回のように雪質が目まぐるしく変化する4日間では、どんな雪質にも対応できるスキーがないと戦えません。TCは、レーシーな性格を持っているのにソフトな雪質でも滑りやすい。扱いやすくて、しかも強いスキーという印象を持っています」
雪質が刻々と変わるなかでもマテリアルを信じ切れた

唐沢航希(男子総合8位)
自己最高となる男子総合8位に入賞した唐沢航希も、マテリアルへの信頼感を語っている。
「予選ではなかなか調子が上がらなかったのですが、決勝で徐々に点数も出始めて、それなりに手応えを感じることができました。技術選は4日間の長い戦いですから、一定の雪質が維持されるとは限りません。今大会も日々のコンディション変化が激しく、それに自分をアジャストしていくのは簡単な作業ではありませんでした」
神谷と同じく、目まぐるしい雪質を口にした唐沢だが、彼もまたマテリアルへの不安はまったくなかったという。
「スーパーファイナルのミドル~ショートは、自分の良さを出せた種目として強く記憶に残っています。この種目では、ショート系スキーで、ラディウスよりも大きなカーブを描くミドルターンを高速で滑らなくてはならないのですが、振動やバタつきなども出さずにうまく処理できたと感じています。ショートターンへチェンジした後も動きをまったりとさせずに機敏なスキー操作を表現できました。自分の良さを出せた種目として覚えています」

予選では調子が上がらなかったという唐沢だが、決勝では自分の滑りを存分にアピールできたようだ。マテリアルとのマッチングに不安がなかったことで、自分が表現したいテクニックをしっかり見せることができたということなのだろう。
「今回使ったTCは、フレックスはしなやかなまま、トーションがかなり強くなっているので、ハードバーンでもしっかりした乗り味を感じられました。また軟らかい雪であっても反応が良く、もたつくようなことはありませんでした。僕はTCの開発にあたって、きれいなたわみが出ること、ターン後半の抜けと走りが確実に感じられることをリクエストしていましたが、新しいTCはその要求に合致した仕上がりで、フレックスとトーションのバランスを突き詰めた結果だと思っています。また新開発のSREDプレートも、たわみ出しに貢献していて、しなやかなフレックスの良さを最大限に生かせていると思います」
フレックスとトーションのバランスが選手の力を引き出す

齋藤圭哉(男子総合14位)
技術選プレーヤーが絶大な信頼を寄せるスキーTCの開発で、司令塔として関わった河合茂博(オガサカスキー技術部部長)氏は次のように語る。
「オガサカのスキーは基本的に日本人の手で日本人の意見を聞いて作られています。しかもTCは、最初から技術選という舞台を想定して設計されたスキーです。近年の技術選では、よりレーシング寄りのターン技術が求められていて、ただ円くきれいな弧を描くだけでは高い評価は得られず、時には攻撃的に縦に落としていくような技術が必要になっています。TCはデビュー当時から、その扱いやすさやターン弧の描きやすさで評価されてきましたが、技術選のジャッジ観点を徹底的にアナライズして、ここ数年は、強くしかも扱いやすいスキーに仕上げてきました。技術選はアルペン競技と違って、不整地も滑らなくてはいけませんし、ただハードなスキーにすればいいというわけではありません。スキーヤーが自在に扱えるしなやかさと、ハードバーンでのしっかりした乗り味、これが両立していないと、技術選は戦えないのです。そんななかで、神谷選手と唐沢選手、齋藤選手、そしてチームの全選手が素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。新しいTCは、サイドカーブの設計は前モデルと同じなのですが、フレックスとトーションのバランスを見直したり、新開発のSREDプレートによってたわみの出方を向上させたりといったブラッシュアップを図りました。言いかえれば、TCの設計思想がある程度熟成の域に達していることの証明でもあり、根本的な設計は変えずに済んでいます。これは多くの選手たちからの声を、フィードバックして開発に反映させてきた結果です」

感謝できるスキーと出会えたことは自分の財産

徳竹剛(男子総合28位)
長きにわたってオガサカチームのトップ選手として活躍し、時にムードメーカーとしてチームを盛り上げてきた徳竹剛。技術選出場通算22回を数える彼は、今大会で技術選プレーヤーとしてのキャリアに幕を下ろした。
「膝の不調で出場できなかった昨シーズンの時点で引退を考えていたのですが、最後に自分ができる滑りをすべて出し、その上でやめないと悔いが残ると思い、今大会を最後と決めました。ただ昨年休んでいたぶん、試合勘のようなものも鈍っていましたし、自分では、予選落ちもあり得るぞというくらいの状態でした。ひと言で言えば、我慢や耐えの4日間……。結果としてはスーパーファイナルにもなんとか進めて、男子総合28位。まさに滑り込めたという感想です(笑)。今大会は雪質の変化がとても激しく、そういった意味では状況アジャスト能力のあるベテラン勢にもチャンスはあったと思います。ただ、それでも若い選手たちの勢いに追いつくのはとてつもなく大変だった。だから今回の順位は自分にとっては奇跡だと思っています」

全種目を終え、ファイナルランのセレモニーに登場した徳竹は、技術選のピステをいとおしむように滑り、フィニッシュと同時に仲間たちに胴上げされた。
「胴上げなんて、人生でされたことなかったから感動しました。同時にこんな素晴らしい締めくくりができたのは、サポートメーカーや関係の方々、応援してくれるファンの皆さん、そして家族の協力のおかげという思いが込み上げてきて胸が熱くなりました。また自分の滑りをいつも助けてくれたオガサカTCにも、ありがとうと。このスキーがあったから、ここまでやってこられたのだと思います。スキーヤーにとって、マテリアルは相棒なんですよね」
