面で操ってスキーをたわませよう!
レッスン
スキーのたわみを効果的に引き出し、その性能を十分に活用して滑る。上級者にふさわしい滑りを実現するためのポイントは、「スキーを面で操る」こと。そのために必要な運動とトレーニング方法を解説します。
スキーを面で使うことで、フルカービングはもちろん、質の高いスピードコントロールも可能になる
現在のスキーの性能を十分に引き出して滑るためのポイントは、スキーの「たわみ」を引き出すことです。ターンマキシマムでスキーをしっかりとたわませることで、そのリバウンドを利用してダイレクトに次のターンをカービングで始めていくことも、微妙にスピードやターン弧をコントロールして滑ることも可能になります。
その第一歩として意識してもらいたいのが、「スキーを面で操る」ことです。こうした意識を持つことで、ターン全体をとおして、スキーの面に垂直な方向から重さ(力)を働かせることが可能になります。ターン中、つねにセンターポジションを保つことで、角づけされたスキーの面を垂直な方向から押すことが可能になり、スキーを十分にたわませることができるのです。
スキーを面で操るためのポイントは二つあります。一つ目は「ターン前半に内スキーで雪を削っていく」こと。そして二つ目は、身体の重心をターン内側に運ぶ「重心移動」です。
切りかえからターン前半にかけて、内スキーで雪を削り取っていくことで、ターンマキシマムに向けて、スキーをしっかりとたわませていくことができます。この動きに重心移動を加えることで、身体の傾きが深くなり、より大きくスキーをたわませることが可能になります。センターポジションは、この二つの運動を行なうことで、結果的に保たれるものと考えましょう。
ターン前半、内スキーで雪を削る動きを身につける!
内スキーで雪を削りながら滑る(低速)
内スキーで雪を削り取る運動を行なえるポジションをつかむためのエクササイズです。切りかえでニュートラルポジションをしっかり作り、重さの乗った内スキーを動かしていくことが大切です。このエクササイズでは内スキーの向きを変えたあと、谷側に向けて内スキーで雪を削り取っていきます。腰の下につねに両スキーが位置するポジションを保ちながら、内スキーの向きを変えて、ターンを連続していくようにしてください。
低い姿勢を意識して内スキーで雪を削りながら滑る(低速)
エクササイズ1の動きを、身体の重心の位置を少し下げた低いポジションで行ないます。重心位置を下げることによって、スキーによりしっかりと重さが乗るようになること、その結果、ターン前半でスキーが急に向きを変えず、ゆっくりと向きを変えるようになることを確認してください。太ももが寝た状態になるとポジションが悪くなってしまうため、脚部の3関節を深めに曲げても、太ももが寝ない状態をキープして行なうことを意識してください。
内スキーで雪を削りながら滑る(実践に近い滑り)
実践に近い小まわりのなかで、ターン前半、内スキーで雪を削り取っていきます。エクササイズ1~2とは異なり、内スキーを動かす方向は身体の横、ターン弧の外に向けてになります。その場でスキーの向きを変えるとうまくたわみを作れなくなってしまうので、ターン前半にある程度の時間をかけて内スキーで雪を削り取っていった結果、両スキーの角づけが深くなり、ターン前半からスキーのたわみが作られることを感じとってください。
スキーを外方向に動かす
ターン前半、内スキーで雪をしっかり削り取ることで両スキーのたわみを作るエクササイズです。切りかえから次のターンの前半部分にかけて、内スキーに身体の重さを乗せたまま身体の横、ターン弧に対して外側に向けて動かして、雪を削り取ることがポイントです。センターポジションを保ちながら、内スキーに乗った重さを逃がさないで行なうことで、ターン前半部分で落差や横のスペースをうまく使える技術の幅が身についていきます。
ターン前半でひねりの要素を意識
ターン前半で脚部をひねる動作を加え、スキーの向きを変えながら内スキーで雪を削り取って滑ります。エクササイズ4と比べると少しターン弧は小さくなり、コントロールする要素の入った滑りになります。円い弧をイメージして、身体の下でスキーの向きを変えながら雪を削り取ることを意識するとよいでしょう。この動きが、急斜面やザラメ雪など、難易度の高いシチュエーションでコントロールのきいた滑りをすることにつながります。
ターン前半の方向づけの量によるポジションの違い(浅い)
このエクササイズでは、ターン前半の方向づけを浅くして滑ります。内スキーで雪を削る動きは小さくなりますが、ターン前半、腰の下に両スキーを位置させるポジション、そして両スキーを角づけしていく動きを確認することができます。急斜面ではスピードが出すぎてしまうので、緩~中斜面を選んでトレーニングしてください。ターン弧の深浅によってマッチするポジションが変わることをつかむことが大切です。
ターン前半の方向づけの量によるポジションの違い(深い)
ターン前半の方向づけを深くして滑るエクササイズです。方向づけを深くするには、ターン前半に内スキーを動かす量や雪を削る量を多くすることが必要で、それにともなって両スキーの角づけや脚部の内傾角を深くする運動を身につけられます。また、ターン弧を深くする必要もあるので、マキシマムで面に対して垂直な方向からしっかりと荷重をして両スキーを押し込む実践的なエッジング動作を身につけることも可能になります。
重心移動を身につけて、スキーをしっかりたわませる!
切りかえでニュートラルを入れる
切りかえで斜面と垂直に立つニュートラルポジションを作ることを意識して滑ります。ニュートラルポジションで谷脚に重さが多くかかることを感じ取りながら、その谷脚(内スキー)を動かして雪を削っていくことで重心移動が身についていきます。S字のターンをイメージしながら、センターポジションをキープして行なうことで内股関節を緩めやすくなり、次のターンを正確に始めることが可能になります。
切りかえで山脚を持ち上げる
切りかえで山脚を持ち上げて滑ります。切りかえで山側に身体の重心が残っていると、うまく山脚を持ち上げることができないので、ニュートラルポジションをより正確に作ることが可能になります。山脚を持ち上げたニュートラルポジションから、重さの乗った内股関節を緩めて重心を谷側に運びながら、谷スキーで雪を削ることを意識して行なってください。
内傾軸を意識して滑る
ストックを持った手を腰(股関節)に当てて、身体の内傾軸を意識して滑ります。切りかえでは必ずニュートラルポジションを作るようにし、その体勢から内股関節を緩め、内脚をたたみ込むことで身体の傾きが深くなり、外スキーの雪面のとらえが生まれることをつかむことが目的です。最初は内倒してもいいので、重心をターン内側に運ぶことを意識して行なってください。
ワイドスタンスで内脚の動きを意識する
ワイドスタンスで内脚のたたみ込みを意識して滑ります。切りかえでしっかりとニュートラルポジションを作ることを意識し、その体勢から内脚をたたみ込むことで身体の重心をターン内側に運んでエッジングしていきます。「前に」という意識が強すぎると内脚をうまくたたみ込めないので、内脚をすっと柔らかくたたむことができるセンターポジションを身につけることができます。ここでは腰幅程度のスタンスで行なっていますが、より広いスタンスで行なうのも効果的なエクササイズになります。
水落亮太(みずおち・りょうた)
1979年1月15日生まれ。新潟県十日町市出身。大学までアルペンレースで活躍し、卒業後、技術選に参戦。切れが良く、重厚感のある滑りで活躍し続けている。今年3月に行なわれた第60回技術選では自己最高位となる総合5位を記録。全日本ナショナルデモンストレーターを7期連続で務め、その指導力・技術分析力にも定評がある