年々熾烈さを増す技術選において、層の厚さと選手個々の優れたパフォーマンスで大会を盛り上げているOGASAKAチーム。
フレッシュな若手から円熟のベテランまで、あらゆるスタイルの選手がいることも魅力だが、もう一つの特徴が彼らが愛用するスキー「TC」だ。
テクニックの進化に合わせて変貌を遂げたというTCの挑戦に迫る。
進化を続ける全日本スキー技術選において、マテリアルと選手のフィッティングは極めて重要なテーマだ。いかに優れた能力を持つ選手であっても、使用するマテリアルが合っていなくてはポテンシャルを発揮できない。
「TC」は、生まれると同時に技術選で勝つことを命題とされたスキーである。登場以来、常に細かな進化を続け、完成度を高めてきた。それは、毎年のように加わる新たな着眼点やテクニックの進歩にスキーをアジャストすべく、開発陣の揺るぎない努力やテストスキーヤーからのフィードバックのたまものと言ってよいだろう。
その「TC」が従来以上のリファインを得て生まれ変わった。いや、その変貌ぶりはリファインというよりも実質的なフルモデルチェンジと言ってよい。
「今回のモデルチェンジでは、かつてないほど細かなところまで作り直しました。それこそ素材選定、モールド、サイドカーブやフレックスバランス、重量配分まで、すべてにおいてです。近年の技術選はスピード化も著しく求められるターンの切れやスキーの走りも従来とは比較にならないほどシャープなものになっています。そのため『TC』にもよりレーシーで力強い性能が必須となったのです。もっともオガサカにはレーシングモデルの『トライアン』があり、こちらがレースバーンでの速さに特化したモデルであるのに対し、『TC』はあらゆる雪質、不整地、また低速から高速まで、どんなシチュエーションでも性能を発揮できるモデルでなくてはなりません。そのためにTCの伝統である操作性は絶対にスポイルしないように作りました」
そう語ってくれたのはオガサカスキー製作所技術部の河合茂博さんだ。
「新しい『TC-S』には新たなトップ形状として、トップ部が広いハンマーヘッドを採用しました。これによって有効エッジ長が長くなり、ターン前半でのトップの捉えが格段に早くなり、早いタイミングでたわみを出すことができるようになりました」
今大会で男子総合15位となった唐沢航希は、「ハンマーヘッドになったことで、ターン前半のトップの捉え感は、驚くほど向上したと思います。トップが雪面をつかまえたと思ったら、その瞬間スキーのたわみが生まれている感じで、非常に鋭角的な鋭いターンが可能になりました」
ハンマーヘッドは、カービング性能に特化したスノーボードでも、使われるテクノロジーだ。このことからも「TC-S」の優れたカービング特性が想像できる。
また今回のモデルチェンジでは、大回り用の「TC-L」と小回り用の「TC-S」で、同じコンセプトのサイドカーブ、センター幅が採用されており、ユーザーが種目によって乗り換えた時にも、同じようなフィーリングをキープできるようになっているという。
河合さんは、「本来であれば、大回りも小回りもできる1台があればベスト。しかしそれは大会の種目設定を考えれば現実的ではありません。かといって、それぞれの種目に特化させすぎて、乗り換えるたびに感覚が違ってしまうというのは選手にとってストレスでしかありません。そこで、『TC-L』で大回りを演技したすぐあとに、小回り用の『TC-S』でリズム変化を滑っても、違和感がないような機種間の性格の「つながり」といったことも意識しています」
これは、技術選専用モデルとして歴史を紡いできたTCシリーズらしいこだわりと言えるだろう。
女子総合8位の神谷来美は、「新しい『TC-L』は、ハイスピードの中でもリズム変化などを表現しやすいスキーです。瞬間的に大きな負荷がかかってもスキーが安定しているので安心感がありますし、それでいてクイックな切り返しもできます。これは今までの大回り用スキーにはなかったフィーリング。しかも『TC-L』で滑った後に『TC-S』で小回りをしてもほぼ同じような感覚でスキーを操作できるんです!」
今大会、オガサカチームからは9人の選手がスーパーファイナルに進出した。その中には西村紗英、黒木玲名といったフレッシュな新鋭、また久々に底力を見せつけた赤松かおりや水口雄太らベテラン勢もいる。彼らの戦いからフィードバックされた多くのヒントが次の「TC」をさらなる高みに引き上げていくのだろう。
日本で生まれた技術選と日本で生まれたオガサカスキー。どちらも進化を止めることはないだろう。
今大会、オガサカチームからスーパーファイナルに進出したのは男女合わせて9名。当然オガサカチームとしては不完全燃焼と言える結果であったことだろう。しかし、毎年のようにノーマークの新人が上位で暴れる熾烈な技術選において、優れた用具と選手が出会えることは勝つための最低条件だ。その意味で今大会のオガサカチームは、次につながる大きな糧をえたと言っても差し支えないだろう。
170,500円(税別)
従来モデルよりもリバウンドを利用しやすくなり、高速域でのリズム変化にもスムーズに対応できる1台
LENGTH:177 / 180 / 183cmSIDECUT:107.0-67.0-90.0mmRADIUS:21.5 / 22.3 / 23.1mWEIGT½:1,071g/m
161,700円(税別)
縦に落下していくショートターンの中でも、スピードコントロールが容易で狙ったラインを描けるモデル
LENGTH:155 / 160 / 165 / 170cmSIDECUT:119.0-67.0-103.0mmRADIUS:11.3 / 12.1 / 12.9 / 13.7mWEIGT½:1,063g/m
126,500円(税別)
トップ部分をたわみやすくし、高速域での安定性や急斜面での対応力が向上したジュニア技術選大回りモデル
LENGTH:170 / 175cmSIDECUT:108.0-65.0-91.0mm(170cm) 105.7-65.0-88.7mm(175cm)RADIUS:18.0 / 21.0mWEIGT½:949g/m
122,100円(税別)
トップ部分のより早い捉えが可能で、硬いバーンでも安定し、軽快なジュニア技術選小回りモデル
93,500円(税別)
リズム変化にも対応しやすいジュニア技術選大回りモデル。小学校高学年から中学生対象
LENGTH:155 / 160 / 165cmSIDECUT:101.9-65.0-84.9mm(155cm) 103.8-65.0-86.8mm(160cm) 105.8-65.0-88.8mm(165cm)RADIUS:18.1mWEIGT½:958g/m
83,600円(税別)
リカバリーがしやすく基本動作の習得にも適したジュニア技術選小回りモデル。小学校高学年から中学生対象
LENGTH:135 / 140 / 145 / 150cmSIDECUT:114.0-64.0-97.0mmRADIUS:8.9 / 9.7 / 10.5 / 11.3mWEIGT½:821g/m
56,100円(税別)
ジュニア技術選を目指す、小学校低学年〜中学年対象のオールラウンドモデル
LENGTH:130 / 140 / 150 / 160cmSIDECUT:106.0-66.0-91.0mmRADIUS:10.4 / 12.3 / 14.3 / 16.5mWEIGT½:743g/m
写真:黒崎雅久、鈴木馨二(White Depot)、近藤ヒロシ / 文:近藤ヒロシ
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