プレイバック・ルスツ技術選2024 上位入賞者クローズアップ①
技術選
男子総合4位:尾﨑隼士 Hayato OZAKI
はじめの一歩
昨年の第60回大会で記録した総合21位という自己最高位を、今年の技術選で大きく更新。総合4位へとジャンプアップした尾﨑隼士。この躍進の要因について、尾﨑自身はこう分析する。
「これまで僕の技術選の戦いは、毎回、コブが鬼門だったんです。ロングでもショートでも、総合滑降でも、整地系では良い得点が出ていたんですけれど、コブで順位を落としてしまっていた。予選、決勝、スーパーファイナルと、コブは最低でも3回はあるので、それが順位に大きく影響してしまっていました」
苦手なコブを克服するために尾﨑が選んだのは、環境を変えることだった。ナショナルデモンストレーターとなり、プロスキーヤーとして活動し始めた頃から所属していた白馬八方尾根スキースクールを離れ、かぐらスキースクールへ移ることを決めたのだ。かぐらスキースクールには、コブの名手として技術選で活躍した粟野利信がいる。そしてもうひとり、元モーグルナショナルチームの桑原竜司もかぐらスキー場を拠点のひとつとして活動していた。
「かぐらはシーズン中、ずっとコブがあるので、夏のピスラボから始まって、月山だったりとコブを滑り込んで、コブに対する技術だったり、克服するための知識をものすごくつけられる時間になりました」
桑原は夏場、かぐらのピスラボでレッスンをしている。そこで一緒に練習したり、夜に食事をしながら動画を見てもらい、尾﨑なりの疑問をぶつけ、「もっとこうしたほうがいいよ」というアドバイスをもらった。粟野とはシーズンを通しての付き合いになるので、コブに対するアドバイスはもちろん、トレーニングへの取り組み方など、より幅広いアドバイスをもらったという。そして、そのアドバイスは、ルスツの大会期間中も電話などを通して続いていた。
もうひとつ尾﨑が自信の躍進の要因として挙げたのは、大会期間中、コンスタントに良い得点をあげることができたことだ。
「これまで整地種目では、ときどき種目別で良いところに食い込んでも、コンスタントに一桁とか、それに近い得点を得ることができなかった。だけどこの大会では、コブも含めて、すごく得点をまとめることができた。大会ならではの緊張感を味わいながら、メンタルなコントロールもうまくできたこと。それが総合4位という結果につながったのではないかと思います」
尾﨑は、普段の練習から技術選の大会を想定して滑るトレーニングを実践している。そしてまた、ほかの多くのスポーツに取り組むなかで、人と競うときのメンタルのあり方を鍛えているという。たとえば昨年のオフに意識的に取り組んだのはゴルフだ。
「ゴルフでは練習場ではすごく良いけれど、コースに出るととたんに駄目ということがよくあります。それが一緒に回る人の影響なのか、自分の技術の問題なのか、あるいはコースの状況を正確に把握できていないのかなど、自分に対する分析能力を高めることができる。今年の技術選では、比較的、冷静に大会の流れを見ることはできていたのですが、それでもこれからさらに上をめざすとき、一番の課題になるのはメンタルだと思います。だから、スキーの技術的な部分を高めるのはもちろんのこと、メンタルな部分ももっと鍛えていきたいと思います」
昨年、尾﨑は技術選に取り組むにあたっての3年計画を立てたという。1年目の目標は、トップ10入り。2年目はトップ3に入り、3年目に総合優勝をめざすというものだ。1年目の今年、その目標は大きくクリアされた。だが、尾﨑自身も感じているように、トップ3、総合優勝と目標をクリアしていくには、これからクリアしなければならない課題もある。技術選の頂点を着実に射程に収めた尾﨑は、今、そのはじめの一歩を踏み出したところだ。