プレイバック・ルスツ技術選2024 上位入賞者クローズアップ②
技術選
男子総合6位:穴田玖舟 Kisyu ANADA
期待の新鋭、表舞台へ
これまでの自己最高位は昨年の18位。「今年もファイナルに残りたい」と挑んだ大会で、予選4種目を終えて4位と、好スタートを切った。
「初日から想像以上の高得点が出て、素直に喜んでいれば良かったのですが……。人間って、どうしても欲が出てしまうんですね(笑)」
もっと上を狙える──そんな思いが、決勝で空回り。本来の滑りが出せず、ミスが出てしまう。
「攻めるつもりが、自分から動こう、動こうとし過ぎてしまって。スキーの反応を待つことができませんでした」
それでも、最終日のスーパーファイナルではしっかりと修正。持ち前の躍動感ある滑りで再びジャンプアップし、初入賞を果たした。
その経歴は異色だ。過酷な競技として知られるテレマークレースの日本代表選手として、世界を転戦。さらにXCO MTB(クロスカントリー・マウンテンバイク)でも日本トップクラスの実績を持ち、世界を舞台に活躍している。
その高い身体能力をもってしても、技術選で上位にくるのは簡単ではなかった。大学一年生で初挑戦し、学連の予選で敗退。それも限りなく最下位に近い成績だったという。
「テレマークでもアルペンでもそこそこ滑れるのに、技術選では通用しませんでした。ビデオで見ても、滑りがガチャガチャで……。なんでこんなにうまく滑れないんだろうって」
なにくそ! と奮起して猛練習。翌年に学連の補欠、その2年後に全日本初出場と地道に成績を伸ばし、上位へと駆け上がってきた。特に今年は得意のコブに加え、整地種目でも躍進。
「これまでは身体だけ動いてしまっていたのが、今年はスキーの反応をキャッチして動き、軌道を描くことができるようになってきました。そこを評価していただけたのかなと思っています」
すでに2つの競技の最前線で活躍しながら、技術選にも本気でぶつかっていく。そのモチベーションは、どこからくるのか? 速さを競うアルペンと違って、技術選は「正解が見えない」。そこが、逆におもしろいのだという。
「縦にスピードがあるのもOK、回してくるのもOK。正解が見えない分、いろんな技術を評価してもらえる〝技術の祭典〟のようなところが楽しくて。その人が持っている技術を、存分に発揮できるのが魅力だと思っています」
その舞台で、自身が表現したいと語るのは、最大の持ち味である、動きの素早さだ。予選の「フリー 中急斜面 整地(ナチュラル含む)」では、GSのスキーを履いて見事なクイック! 会場を盛り上げた。
「ほかの選手に埋もれないよう、自分の良さを出したくて。スピードに乗った中でも、すばしっこくいこうと(笑)」
のびのびと躍動する新鋭。その活躍に、目が離せない。