スノースポーツに関わるすべての人に、安全に関する知識・技術を発信
インタビュー
SAJ3教程制作のキーマンに聞く②
上杉一哲、酒井 潤(教育本部安全対策部)
──前回の教程発刊が2016年。それから8年を経て全面改定に至った経緯をお聞かせください。
上杉 スノースポーツを取り巻く環境はこの8年で大きく変化しました。これらの変化に対する安全対策についても、当然、新しい技術や考え方を取り入れなければなりません。2025年度はSAJの創立100周年に当たることからも、新たな教程に取り組む最適のタイミングでした。
──具体的には、どのような変化があったのでしょう。
酒井 あらゆる面で変化しています。新教程の「スキー編」「スノーボード編」で取り上げられているように、ギアや技術面が進化しています。また、例を挙げると、近年の日本のスノーリゾートには、当たり前のようにインバウンドのゲストがいらっしゃいます。インバウンドの増加は以前からですが、アフターコロナになってその形態はまた違ってきています。また、地球規模の環境変化で、スノースポーツにとっての環境悪化が加速しています。安全対策の一環としてこれらのことを伝え、スノースポーツに関わるすべての人が考えることが待ったなしの状況になってきました。
上杉 スキーヤー(スノーボーダーを含む)の志向も多様化し、それに事故やけがの形態も変化しています。それにともなって、スキーパトロールによる要救助者や傷病者への対応もアップデートする必要があります。
アキヤボートのセッティングの様子
──それを受けて新しい教程で変えたこと、増補した点はどこでしょう。
上杉 データは、ウェブ上の各ホームページや動画サイトで最新の情報を入手してもらうことを念頭に、誌面には掲載しませんでした。もちろん安全対策に関する普遍的なデータは、図表やイラストで掲載しています。普遍的と言えば、新教程も前回の教程と似た見出しが少なくありません。これは安全対策の基本が事故防止にあるということは、1958年に安全対策部の前身である「障害対策委員会」が設置されたときと変わりないからです。先輩たちの経験が盛り込まれ、枝葉は変わっても幹の部分は受け継がれています。
酒井 それを踏まえて新しい教程は、スノースポーツに関わるすべての人に向けた安全に関する知識、技術の概要を伝えることを全体のコンセプトにしました。その上ではっきりと文字にしてうたっているわけではありませんが、二部構成のイメージにしました。1章から3章は一般のスノースポーツ愛好家や指導者、ジュニアやその保護者、バックカントリースキーヤーなど、まさにスノースポーツに関わるすべての人に向けた「安全編」に位置づけました。4章と5章は安全対策に関わっている公認スキーパトロールなどに向けた、より専門性のある「スキーパトロール編」です。
上杉 一冊にまとめましたが、読者がそれぞれの目的に合ったところを読んで参考になるようにしようという考え方です。
撮影をすべて終え、記念のショット
──教程の制作には多くの人数と時間がかかったようです。どんな人にどのように利用してほしいと考えていますか?
上杉 1章から3章は一般のスキーヤーにもぜひ読んでいただきたいですね。スノースポーツの安全対策と事故防止に対するご自身の知識と「気づき」を得てスノーライフに役立てていただけると思います。また、指導者には、安全管理と事故防止のカリキュラムを講習やレッスンに取り入れて、安全や事故防止への意識につなげていただきたいと思います。
酒井 パトロールの業務に就いている人やスキー場の運営管理関係者には、事故防止の考え方や技術を再確認していただきたいと思っています。また、公認スキーパトロールの受検を考えている方には、ご自身の学習の方向性をこの教程から見いだしていただければ幸いです。
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