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令和に活躍するスキー指導者、基本から学びたい上達志向のバイブルに

インタビュー

SAJ3教程制作のキーマンに聞く①

松沢 寿(SAJデモンストレーターチーム監督)

──全面改訂は実に10年ぶり。まず、新教程発刊までの道のりをあらためて振り返っていただけますか。

松沢 新教程発刊に向けて実質的にスタートを切ったのは、2022年の研修会の前から。自分や岡田利修コーチを含めて、今回の制作メンバーがタスクフォースという形で、研修課題やテーマの設定に取り組んだのが始まりです。具体的には、前教程をベースに「基本動作を見直す」という研修課題と、2023年からは「ターン始動のポジショニング」というテーマに沿って、研修会やデモ合宿を実施。そのなかで、実際に指導や研修の現場で何が必要で、どういうことをもっとシンプルに伝えなければならないのかを洗い出すことができたので、それらをベースに新しい指導の組み立てを考え、技術をブラッシュアップして、さらに安全で充実した指導が進められる内容を盛り込んだ一冊にしよう。委員長も含めて、こうした合意形成のもと、チーム全体で制作に臨みました。

──今回は一貫性を持たせることが大きなテーマだったと伺いました。

松沢 はい。前教程からの流れを汲んで、プルーク、シュテム、横滑りという指導の現場でなじみのあるバリエーションを用いて一貫性のある指導体系を心がけました。技術的には、外スキーから外スキーというオーソドックスな組み立てにあらためてスポットライトを当てて、基礎パラレルターン(本書では「ベーシックパラレルターン」と呼称するもの)から一歩踏み込んで、カービングによるターンコントロールまで一貫性のあるプログラムを提案しています。

ベテランと若手が融合したデモチーム

──新教程であらためてオーソドックスな基本にフォーカスした理由は?

松沢 例えば滑走プルークのように、重心を先に内側に入れて、内股関節を曲げて、内側にバランスを取ってから外スキーを使うという組み立ては、内倒につながりやすく、コントロールを失いやすいのではないか、という声が以前から検定部や研修委員会にありました。その部分への対策を考えたときに、やはりポジショニング、荷重動作、エッジングといった3つの基本動作、そして切りかえにおけるターン姿勢の入れかえの見直しが、指導の現場としても、スキーヤーのレベルアップという観点でもポイントになるだろうと考えたことがひとつ。もうひとつは、技術の習熟度が高まっていくなかでスキーヤーの目標設定や志向が変化したとき、そのどれにも対応できるベーシックな要素が、外脚から外脚に安定してポジションを入れかえられることと考えたことです。スキーの楽しみを広げていくうえで、ここは外せませんでした。

──基本動作を深く掘り下げる一方で、パラレルターンの習熟度を高めるところまで展開を広げたのは、どういう狙いがあったのでしょうか。

松沢 これまでの教程は、誤解を恐れずに言えば、ベーシックパラレルターンまでの展開が中心で、その先の選択肢は個々のスキーヤーに委ねられているところが大きかったと思います。でも、現在の指導者に対する需要を考えると、それでは足りない。修学旅行でスキー場を訪れるビギナーから、スキルアップを望む中上級者、プライズ検定合格を目指す人、インバウンドのスキーヤーまで、さまざまなニーズに応えられなければ指導者としての役割を十二分に果たせなくなってきました。こうした環境の変化に対応するためには、パラレルスタンスで安全に滑る技術の先まで理解しておく必要があることから、本書の中では「ダイナミックパラレルターン」という位置づけで、実践的なパラレルターンの習熟度を高めていく過程までを提案しています。

武田竜と勝浦由衣は3度のロケに参加

──シーズンインまで1カ月あまり。新教程が実際に現場で活用される日も近いですね。

松沢 教程ができたというのは、いわばスタートラインに立っただけのことで、これからが本当のスタート。新教程の具現者であるデモンストレーターたちがより一層理解を深め、現場に普及させていくのが次のミッションです。そして、デモコーチ、プロモートチーム、専門委員、ブロック技術委員など、それぞれが新教程を理解して、研修会などを通じて情報をしっかり共有していく。全員が一丸となって、普及に取り組んでいきたいです。

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