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プレイバック・ルスツ技術選2024 男子予選

技術選

絶対王者に迫る4日間の攻防

歴史的な連覇を遂げた絶対王者。その牙城は、勝つごとに盤石になっていくようにも見える。しかし、ひるむことなく崩しにかかる、新鋭たちの猛攻はすさまじかった。 舞台は北海道ルスツ。北の大地で、どのようなせめぎ合いが繰り広げられたのか? 激しいトップ争いを展開した4人のプレーヤーにフォーカスし、激闘の4日間を追う。

スタートに立ったら、きっと緊張するんだろうな──。大会前の公式練習で滑りの感触を確かめながら、川上勇貴は、そんなことを考えていた。

去年、初めて出場した技術選で、いきなりの3位入賞。無名の高校生だった川上の技術選デビューは、あまりにも鮮烈だった。

あれから一年。川上は大学生になり、今年は学連枠から2度目の大会に挑む。「普段はあまり緊張しないタイプ」という川上も、今回はさすがに違った。

去年だけで終わりたくない──その思いは、ひときわ強い。「たった一度だけよくて、あとはダメ、というのでは、〝勢いだけ〟になってしまうので」

だから今年は、最低限でも去年と同じ、またはそれ以上の成績を目指す──そんな大目標を掲げ、この舞台にやってきたのだ。

今、技術選は新しい時代の真っただなかにあるといっていい。2019年の第56回大会で初優勝を果たした武田竜は、そこから一度もトップの座を譲ることなく、昨年はついに史上初の4連覇を成し遂げた。頂点に君臨し続ける不動のチャンピオンに、あまたのプレーヤーが挑む。そんな構図が続いているのである。

とはいえ、その挑戦者の顔ぶれは、時とともに変化している。特に目立ってきたのが、勢いのある若手の存在。盤石な牙城を、成長著しい新鋭が崩しにかかる。そんなトップシーンの一角に、川上は19歳にして名を連ねている。

いつもの滑りをすれば、必ず点数は出る──まわりはみんな、そう言ってくれた。とはいえ、始まってみなければわからない。正直、不安もあった。 迎えた大会初日、1種目目は「大回り 急斜面 整地(ナチュラル含む)」。奇しくも、自分の2つ前をチャンピオンが滑るという滑走順だった。

川上がスタートに立つと、下から武田の得点が聞こえてきた。274点──ここで、川上のスイッチが入る。

自分は、その上を行く! プレッシャーを押しのけ、気迫で滑った一本で、種目別トップの277点をマーク。川上は、会心の滑りで予選から好スタートを切った。

その大回りで、川上と並んで種目別トップをマークしたのが、前回、準優勝の奥村駿だった。

昨年の大会では武田竜との優勝争いでデッドヒートを繰り広げ、大きなインパクトを放った奥村。もともと彼には初出場のときから、「3年目で優勝を狙う」というプランがある。

そして今年はまさに、その3度目のシーズン。奥村は今回、そのプラン通り、優勝にしっかりと照準を合わせて、ルスツにやってきたのだ。

「今年は特に、大回り系が自分のなかでよくなってきている」──その大回りで初日から手応えをつかんだ奥村は、予選2日目、得意種目の「フリー 中急斜面 整地(ナチュラル含む)」で、一気にスパートをかける。

何しろこの種目の難しさは、その斜面設定にある。使用コートは、今大会のキーともいわれるダイナミックコース。中急斜面で距離も短く、大会で使うには〝やさしいバーン〟。それゆえに高度なパフォーマンスを出していくのが、かえって難しいのである。

ともすると、なんとなく滑って終わってしまう。そうならないよう、いかにスキーを走らせ、ターンを表現するのか。奥村は、その戦略が実にうまかった。

コース特有の片斜面を巧みに利用し、しっかりとスピードに乗せながら、最もインパクトのある場所で見せどころでつくる。その圧巻のパフォーマンスで、奥村は単独ラップとなる277点を叩き出した。

そのあとだった。予選の最終種目、「小回り 急斜面 整地(ナチュラル含む)」で、今度は気持ちが入り過ぎてしまう。 「フリーでトップを取ったことで、次の小回りも絶対に取れると思ってしまって……。気持ちが空回りしてしまいました」

今回の大会は、前大会と同様、ターンサイズの大まかな目安が示されている。小回りの目安は、横幅5~5・5m。それよりもリズムが早くなってしまい、思うように得点を伸ばせなかった。

それでも奥村は、4種目中の2種目でラップを取るという順調な滑り出し。「自分がいいと思う滑りを、ちゃんと評価してもらえている」──確かな手応えを得て、決勝へと進んだ。

一方の川上勇貴も、やや苦戦する種目もありながら、大回りと小回りの2種目でラップ。そこへ、勢いのある新鋭たちが、予選から続々と追随してきた。

甲信越予選で初優勝を果たした半田翼は、「小回り 急斜面 整地(ナチュラル含む)」で武田、川上と並ぶ種目別トップをマーク。北海道の注目選手、穴田玖舟や、実力をたくわえた尾﨑隼士も随所で光るものを見せ、上位にしっかりと食い込んできた。

そんな激しいせめぎ合いのなか、予選4種目すべてで安定的に高得点を重ねてきたのが、絶対王者の武田竜。予選2日間を終え、1位が武田竜、2位が奥村駿、3位が川上勇貴と、前回のトップ3が見事に顔をそろえ、決勝を迎えた。

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