マテリアルが性能をフルに発揮し、スキーヤーが最高のパフォーマンスを見せる。
それには相性はもちろん、滑り手がマテリアルを心から信頼できていることが重要だ。その点「信じきれるマテリアルだからこそ、私の技術が表現できる」と話す青木美和は、アトミックと素敵な関係を築けていると言っていいだろう。
スキーヤーである以上、マテリアルの大切さはわかっているつもりでしたが、本当の意味でそのことの重みを知らされたのが今年の技術選でした。このスキーだからこそ私のテクニックも進化できるし、本番でしっかり自分を表現できるんだ、と。
私とアトミックスキーとの出会いは、技術選に出始めた頃になります。1年目は甲信越地区で予選落ち、23歳のときに全日本に進めたのですが、その予選が終わったときに「もしよかったらテストしませんか」と声をかけてもらいました。じつは高校生のときに1年だけ使っていたことがあり、そのときにGSのスキーはとても良いフィーリングだったのですが、SLはじゃじゃ馬のような印象で。どうだろう? と思いながらテストさせてもらったことを憶えています。
実際にテストをしてみたらとにかく反応が良くて、GSのスキーもすばらしかったけど小回り系のスキーの良さにびっくりしました。自分で操作しなくても、ストンと良いポイントに乗るだけでスキーが勝手に走ってくれるというか。この先に自分が進化していくには、やっぱりアトミックで戦いたいって思いでマテリアルチェンジしました。当時のアトミックチームはコンパクトだったけど、とても熱量の高いチームでした。合宿に参加させてもらっても内容はハイレベルで、むずかしいことを先輩と一緒にやっていくことで自分も成長できるっていう実感がありましたね。
アトミックと一緒に過ごしていると毎年のようにトピックがあるのですが、マテリアルとの進化という意味では、2021年の苗場大会でのロングのスキーが印象に残っています。最初はすごく難しいスキーに感じられたのですが、丹念に乗り方を調整していったらスキーをたわませるポイントがわかってきて、最終種目のスーパーファイナルで切れのある走りを表現することができ、最高得点を獲得することができました。自分の技術を進化させてくれるマテリアルってこういう感じなんだ、と自分の中でも大きな発見でした。
ショートターンについては、円くてきれいなターンを目指していたところから、稲妻のような軌道の「たわんでいる時間が短いターン」が求められてきました。その意味では今年のアトミックはセパレートタイプの「アイコン ビンディング」になって、たわみがすごく引き出しやすくなったので、ターン後半に抜け出す角度が調整しやすく思い通りの軌道を描けるようになったと思います。縦にいきたいと思ったら走らせられるし、急斜面で深く回したいときにはそれも自在にできて。ターン前半にずらすのではなく、弧の深さでスピードコントロールができるようになったようなイメージ。逆に言えば、そういう滑りもアトミックに教えてもらったという感覚があります。
アトミックはヨーロッパ生まれのスキーだから元々ハードバーンには強いのですが、軟らかい雪でもオートマチックに動いてくれるんです。もちろん難しい状況では乗る位置が大切になってくるので、乗りこなすことで滑り手の〝ポジショニングを育ててくれる〟スキーだと思います。マテリアルは毎年進化しています。同時に滑り手のテクニックも常に変化していますよね。マテリアルだけ進化してテクニックはそのままではうまく性能を引き出すことができません。やはりお互いが良い影響を与え合う、スキーヤーとマテリアルにはそういった関係性が必要なんだと思います。自分自身アトミックスキーのおかげで多くの気づきをもらい技術を進化させてこられましたし、スキーも私が怠けないように毎年すさまじい進化をしています。心から信じられるスキーとシーズンを過ごせる私は幸せですし、愛機を裏切らないように、これからもテクニックを磨いていかなくてはと思っています。
写真・文:近藤ヒロシ / 撮影協力:ヨーデル金谷
BOOK
skinet TV & Share Book一覧へ
Copyright©Geibunsha All Rights Reserved.